【ラジカル】 09 








 中間考査も終わって、勉強め落ち着いたし、虚も最近あんまり出てこねえし、そろそろ、Tシャツ取りに行くって口実使って石田んちに泊まりに行きたいけど……。



 今俺達は、俺ですら妄想した事が無いくらいの深い仲になってるらしい……って、一体どんなだよ。
 噂っていつ収まるんだ?

 女は意外とホモが好きって聞いたことあるけど……やりすぎじゃねえの? 今のところ、本当に最近仲良くなって、時々泊まりに行くって程度の友情以上の何かはなかったんだけど。

 どうやら、俺達、すでに両親には挨拶済みだとか……、ほぼ毎日ヤってるとか。


「石田君って意外とMで、縛られるのが好きなんだって」
「へえ。黒崎君なら、そう言うことしそう」

 って、何だよっ!
 聞こえてるぞっ!
 しねえよ、そんな事っ!
 そりゃ出来んならしたいけど、それでもし石田に嫌われたら生きていけねえから、縛るどころか、石田が寝てる時に、キスすんのが関の山だって!



「黒崎君って独占欲強そうだから、石田君が誰かと話してただけでお仕置きとか言ってエロい事しそうだよね」
「あー、しそう!」
 しねえよっ!
 独占欲強いのは正しいけど、話してるくらいは我慢するから!


「体格だって石田君、細いじゃん。やってる時なんかは為すがままっぽいよね」
「手を押さえられたら抵抗とか出来なさそうだよね」
 そんな事考えた事すらねえって!
 そりゃ体格は俺のがあるけど、あいつ、マジで強いから。生身でガチで喧嘩したら俺、情けねえとは思うけど、きっと負けるから。石田って見た目は細いから弱そうだけど、多分生身の人間相手じゃ敵う奴居ねえから! もしそんな事態になったら俺が殺されるかもしんないから!




 そりゃ、さ……そんな事言われたら、惚れてる身としちゃ、想像しちまうわけで……。
 石田の手とか縛って……とか、噂なんか気にすんなとか、俺が言っときながら俺が滅茶苦茶流されてる。トイレに駆け込む真似だけは何があっても絶対駄目だ! プライドとかの問題以前に……噂聞いて、もう、なんで現状がそれじゃねえのって思うくらいに……いや、でも。

 何だよ、それ。本当に。



 さすがに俺も石田もぐったりしてきた。
 俺だって石田見ると噂思い出して、派手に心拍数上げちまう……そんで、石田をちょっとマトモに見れなくなってきた。



 何なんだよ。
 恨むぞ、水色。

 恨みがましい視線を送ると、策士のくせに水色もここまで噂が拡大すんなんて思ってなかったようで、へらりと笑って視線そらしやがった。


 そんなんで、石田とろくに話もできなくなってきた。
 石田なんか、最近じゃ水色とかと話してても、俺にだけは目も合わせてくんねえから……俺は具体的に石田不足。

 ……かなり、辛い。

 今も、石田に話しかけようとして、その前に石田に見つかって睨まれたところで……。
















 放課後、帰ろうとしたら、石田が中庭に見えた。
 中庭の樹の影。

 何、やってんだ? あそこに何があるわけでもねえし、こんな時間、別に誰も来ない。
 何だろうって思った。今なら、放課後だし、あんまり人目ないし、今なら話しかけられるのかなって、思ってちょっと様子見たら、


 石田の他に誰か、居た。まあ、そうだろう。一人でこんな場所いるわけねえよな。

 石田と一緒にいたのはふわふわの髪の毛の女子。女子の顔は俯いてて見えなかったけど、雰囲気だけでも、可愛いって思えるような女の子らしい子だった。




 それで、石田が顔を真っ赤にさせて何か言ってるのは、見えた………。



 何がそこで起こってんのか、一瞬で、理解できた。



 ………俺の足が、震えた。


 声が聞こえるほどの距離じゃねえが、何言ってんのか、解った。

 石田って学年首位キープしてるわりに、目立つ事した事がねえから、あんま人気あるって感じじゃなかったけど、この噂の渦中にあって、だから目立って誰か目をつけたんだろうか? それとも今まで心に秘めてた奴が石田に特攻かけたんだろうか。
 その子の気持ちなんかわかんねえけどさ。
 噂をみんな楽しんでるだけで、別に本気にしてる奴なんかいねえって思うんだ。噂なんて結局そういうもんだろ? 話題提供する程度のもんだ。自分の身に降りかかってこねえから、楽しめる他人事なんだ。だから……

 自分で言うのもなんだけど、やっぱりそう簡単に男同士がカップルになるはずねえし、第一、石田と俺だ。趣味も合わねえし、相性も良くないし、タイプだって全然違う。
 石田、頭いいし、顔だって綺麗だし。俺には容赦無いけど、何だかんだ言って女には優しい所あるし。

 誰かが、石田を見つけて、自分のものにしようって告白してんだって、見りゃわかった。
 顔まで見えなかったけど……きっと、可愛い女の子なんだろうって、雰囲気だけでも、そう思った。


 俺とのこの噂を終息させたいなら、手っ取り早く石田は彼女の気持ちを受け入れれば終わるんだろう。


 でも




 嫌だ……取られるの。

 誰かに、優しく笑いかける石田とか、見たくねえ。



 だって俺の方が石田の事理解してやれる。絶対。石田が抱えてるもんとか背負ってるもんとか、俺のが理解してやれる、そんで石田が重いって思ってるもの一緒に持ってやれる、俺ならできる、きっと俺にしかできねえよ、そんな重いもん。
 だって、あいつの強いとこも弱いとこも良いとこも嫌なとこも全部俺の方がわかってやれる。


 俺が、誰よりも一番石田の事、理解してやれる。

 だから誰よりも俺が、一番、石田に優しくしてやれる。


 だから、一番石田に惚れてもらう権利があるんだ!


 だから………。











 俺は、走った。
 あとで考えたら、行ってどうすりかなんて考えて無かったけど、きっと邪魔してやるって思ってたんだと思う。

 邪魔して、俺だって好きだって言いたかった。彼女の前とかそんなの関係なく、今すぐに、石田に俺の気持ち知って欲しくなったんだ。
 噂とかそんな他人のことなんか一切関係なく、俺が、石田の事、好きだって言いたくなった。













20121217