水色は人好きのする笑顔を浮かべている……なんとなくちょっとだけ寒気を感じつつも、水色が何を考えてんのか言わねえってんなら俺がどう頑張っても何考えてるのか教えてもらえることはないんだろう。
「水色……」
「なに、一護」
「いや………」
なんて言やいいんだ? まさか、俺の事勘づいたのかこいつ? 敏い水色のことだ、もしかしたら今の反応でバレたのかも知んねえけど……。
「大丈夫だって、一護。悪いようにしないから」
「…………」
どうやら、俺の気持ちなんか、バレてたようだ。
でも、まあ。一応悪意が無いことだけは解るから……まあ石田の前で俺の気持ちをバラす事はないだろうって程度には、一応水色のことも信頼している。
「にしても、石田、お前痩せすぎだって。少しは太れよ。そんなんだから階段から落ちるんじゃねえの?」
「それはいつの事だよ」
「だって貧血だろ? ちゃんと肉食えよな」
水色のことはケイゴと石田の話に急に、俺の耳がでかくなった気がした。
……見た目細いって思ってたけど、やっぱ抱きついても細いのか、石田。
なんて、そんな情報仕入れてどうすんだ、俺は。
「あ、そうだ」
俺達をニコニコと邪悪な笑顔浮かべて観察してた水色が急に思い付いたように声を上げた。
「ねえ、ケイゴ。土曜日にケイゴが見たいって言ってた映画、マリエさんと見に行くつもりだったけど、マリエさんが行けなくなっちゃったんだけど、どうする? チケット勿体無いし、一人で見に行くの苦手だから、ケイゴ一緒に行ってくれると助かるけど」
「え? っと、土曜日は石田ん家で勉強?」
って俺に同意を求めるな! せっかくだから俺と石田の空間を邪魔すんな!
せっかくだから映画行ってこい!
「映画……ってアレだろ、情熱の〜って。うわ、見たい」
だいぶ揺らいでる……。
押してくれ、水色。
もっと押してケイゴを俺と石田の間から引き剥がしてくれ!
「映画はもう17時からとレイトしか無いから、17時ので見ようと思うんだけど……お昼から僕も行って良いかな、石田君。僕も教えて欲しいんだけど」
「僕は構わないけど、うち、狭いよ?」
「暑い時期じゃないし、大丈夫だよ。で、夕方まで勉強して、僕は夕方から映画行くけどケイゴは?」
「俺も行きたい!」
それがいいっ!
水色、感謝する!
横見たら、ケイゴがすごく上機嫌だったけど、それに俺の有頂天さは負けて無いだろう。これで、夕方まで我慢すれば、石田と俺の二人の時間が増える! って事だよな?
「へえ、映画どんな話なの?」
って、石田、そっちに興味ひかれるな! 俺が残ってるだろ? まだ、俺がいるから! 一緒に行きたいとか言うんじゃねえよ!?
頼むから映画よか俺をとってくれ!
「あ、石田君も行く? 最近始まったやつで、旦那と不倫相手との間で悩む幼妻の官能サスペンス。年齢制限ないけど、それでもすごいエロいんだって」
「……………そう。楽しんで来てね」
ちょっと、ひきつった笑顔になった石田は、今完全に映画から興味が逸れたようだ。
ナイス水色!
感謝を押さえきれず、俺はせめて、腹の中で水色に手を合わせて深々と頭を下げた。
これでっ! 明日は石田と二人っきりで!
少しは、進展できるだろうか。
そりゃ、こんなカタブツを俺が一朝一夕でどうにかできるなんざ思ってねえけど、それでも、もうちょい俺の好感度上げて、もうちょい仲良くなって……目指すのは恋人!
泊まるつもりだから、また石田が作ったメシ食えるかな……何か作ってくれるかな。何作ってくれるんだろう。石田が作った煮物が美味いんだ。いや、まだそんな何度も食ったわけじゃねえけど、他の食べたわけじゃねえから、解んねえけど。美味いって誉めると喜んでくれたし。俺が好きなもの言ったらそれ作ってくれたりすんのかな。
石田の私服って見たことがないわけじゃねえけど、やっぱり結構眩しい。外で会う時に着てるようなちょっと細身の体型を生かした服も好きだけど、寝る時のパジャマ姿とかも見れるんだ。俺はいつもTシャツとスウェットを着て寝るけど、石田はちゃんとパジャマを着て寝るから……そんな石田もレアだったりする。風呂上がって、いつも真っ白な肌が少しだけ赤くなって、に濡れた髪が張り付いてたりするんだろう。
しかも布団一つしかねえから、一緒に寝れるし……この前泊まりに行った時は、まだ俺は石田が好きだなんて気付いてなかったから、何となくそのまま寝たけど……今回は耐えられるか、俺の理性。
「黒崎、どうかした?」
「あ、いや……」
俺、今鼻の下、伸びてた?
今の顔、もしかして石田に見られた?
すげ気まずくなって、横を向いたら、水色のニコニコと裏側のなさそうな、邪悪な笑顔を見た………。
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20121119 |