さっき、イルカのショーを見てる時、俺は初めて石田の目がキラキラしているのを見た。
　いつもは鋭くて一護とはまた違った意味で怖い目付きしてるのに、なんか、キラキラしていた……ような、気がする。いや、やっぱり輝いてたかもしんない……目が。

　水族館に遊びに行くって決めた時は、石田も行こうぜって言ったら、どっちでも良いよって言ってた。せっかくだから楽しんでくれりゃいいなって思ってたんだけど。
　なんだか俺の我が侭に付き合わせちまって申し訳ないって思っちまいそうなくらい、石田は大して乗り気じゃないように見えたんだけど。

　なんだか、石田のくせに楽しそう。いや、石田のくせにっていうか、別に石田が楽しんじゃいけないって言ってる意味じゃなくて……でも何か意外。

　意外って言うか……まだ興奮気味で、水色とチャドとイルカについて語ってる。いや、チャドは話を聞いてるだけで、特に話してないけど、頷く姿は大いにイルカの素晴らしさを肯定してた。んで、石田が石田のクセに饒舌だった。話しかけりゃ普通に会話してくれるけど、基本的に石田は自分から話題ふっかけることってあんまりなくて、一護と口論してる時以外じゃ、チャドよか少しマシって程度に無口な方なのに。

　それが意外って言うか……でもこいつの趣味は裁縫だっけ。意外と可愛いもの好きだったりすんのか？
　前に石田んちに行ったことあるけど、ぬいぐるみとか布団の中に隠してあったりしたか？　そこまでは謎だけど、なんか、石田のイメージがクソ真面目なカタブツから、ちょっとだけ可愛いに変わったような気がする。

　いや、男に可愛いだなんて形容する日が来るとは思わなかったけど。でも、なんかそんな印象。
　水色の外見に関しては悔しいから絶対に使わないって決めてるけど……うん、水色は中学生でいい。

　水色とイルカについて可愛いとかの台詞連呼する石田は、どっちかと言えば女子のノリだから、意外……でも、そんな石田みてんのも楽しい。それに、そんな石田見せてくれんのも、嬉しい。石田と友達になれたんだって、なんとなくジーンときた。






「石田って、けっこう可愛いところもあんだな」

　って、隣に歩く一護に何気なく言った。
　別に他意はない。

　男のクセに、石田はいい奴だけど、高校生のノリが無い冷めたところがあるカタブツだって思ってたから、意外って意味で。




　だから別に、けなしたわけじゃねえ。

　悪気があったわけじゃねえっ！



　だから、そんなに睨まないでくれ、一護。
　やっぱり、お前怖いって、顔っ！


「いいいい一護？」

「あ？」

　あからさまに不機嫌な声すんなよ、怖いって！
　その『あ』にどんだけの機嫌悪さ入れんだよっ！

「俺、なんか言ったか？」

　俺が何か言ったか？　別にそんな悪いこと言ってねえよな？
　今の今まで別に、普通に話してたんだ。明日の生物の宿題の話してたんだ。まだやってないから、明日は写させねえからやっとけよって言われて、そこをなんとかっ！　て拝んで、いつものやりとりしてて、一護も笑ってたのに……！
　ちょっと会話途切れて、ふと前を歩く三人の会話聞いてみたら、何やら盛り上がってて、その感想程度だって！

　石田が可愛いって言ってから一護の機嫌が一気に氷点下って……何だ？




「……別に」

　別にって何が別になんだよ。怖えよっ！

「いや、だから俺は石田が、可愛いって言ったの見直したって意味で、バカにしたわけじゃねえし、俺だって石田が、意外と面倒見良くて、冷たい態度取る時は照れてるだけで、いい奴だって事ぐらい俺だって知ってるって」

　だから別に悪口言ったつもりじゃねえよ。

　そりゃ、俺だっていつも一緒にいる水色が腹黒くて、打算的で、笑顔には裏側がある奴なのは誰よりもよく知ってるけど、他の友達に悪口言われたらやっぱりショックだろうけどさ。
　まあ、天下の水色様に限って陰口叩かれる隙なんか作らねえだろうけど。水色が言われるんなら、俺はその10倍くらい言われてるはずだけど、仲いい奴の悪口言ったからか？　でも可愛いって別にそれほど酷い悪口じゃねえよな？　俺だって悪意なんて欠片も無かったわけだし！



「…………で？」

　で、じゃねえっ！
　その怖い顔と冷えた目付きなんとかしてくれ！　って言ってんの！

　別に悪口言ったつもりなんかねえから！


「だから、石田の事、昔はとっつきにくい奴だって思ってたけど、話してみたらすげえいい奴だって解ったし、今じゃちゃんと大好きだし、今日だって一緒に遊んで楽しいって思うし」


　何故だ。

　フォローすればするほど一番の機嫌が悪くなんのは何故だっ！







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20120815