【加圧型ラバーズ】 10








 駅に九時半に待ち合わせってことになってたけど……チャドは時間5分前に来る方。俺は遅刻ギリギリ滑り込みアウトで来る方。水色は……お姉さまの車に送ってもらって、時間通りに来るくせに、別れの挨拶とかしてて、ちょっと遅れる方……とか、朝から俺の精神衛生上、とても切ない。

 んで………石田は、時間よりも早く来る方なんだけど……俺が来た時にはまだ居なかった。
 珍しい、遅刻かよ。

「あれ? 一護も来てねえの?」
「珍しいよね、まだみたい。あと五分くらいしたら一護に電話してみるよ」
「そうだなー…」

 そう言えば、一護の電話は知ってるけど、石田って番号知らねえ……。
 前に教えてくれってお願いしたら、持ってないって断られたけど、このご時勢、携帯持ち歩かないとか、ありえないから、嘘を吐かれたんだろうか、それとも石田だから本当に持ってないんだろうか……その辺は解んねえけど、来なかったらどうやって連絡すりゃいいんだろう。

 一護も外見の割にクソ真面目な性格してるせいで、約束の時間に遅れることなんて滅多にない。今のところ十分遅れてるけど、もし遅れそうだったら事前に連絡入るし……どうしたんだろうって、思ったら……向こうから石田と一護が走ってくるのが見えた。

 何だよ。
 仲良く遅刻かよ。

 いや、遅刻って言ってもまあ十分程度なら、許容範囲だけどさ。

 でも良かった。石田来なかったら、連絡どうしようかと思ってたし……いや、もしかしたら本当は持ってて、一護ならケー番知ってるかもしんないけど。

「悪ぃ!」
「ごめん! 遅れた」
 二人そろって、走ってくるとか。
 いや、別にいいけどさ。



 別にいいけど……お前ら、家、逆方向じゃねえの? って、突っ込んでいいのか? それとも俺の予想通り、また一護は石田んちにお泊りで、石田んちから来たのか?



「石田君が遅れるの珍しいよね。どうかしたの?」
「……寝坊した」
「へえ。珍しいね」


 石田が、寝坊!
 石田って寝坊する生き物だったんだ!?

 知らなかった。
 いや、石田だって人間なんだから、寝るだろうけど。疲れて寝てたら置きにくい朝もあるだろうけど……そうか、石田も人間なんだなー。


「黒崎が起こしてくれるって言ったから、安心して寝てたのに」
「寝過ごしたもんは仕方ねえだろ!」

 二人でぼやき合ってるから、そうか。
 黒崎、また石田んちに泊まったんだ。

 いや、別にいいけど。仲良きことは美しい事らしいから。

「もしかして石田って朝苦手なの?」
「そうなんだよ、コイツ起こさないと昼間で寝てるぜ」

 へえ。
 意外……な、ような、そうでもないような。
 体温とか血圧とか低そうだもんな、石田。

「だから! そう言う事、いちいちバラすなよ! 僕が朝苦手なの知ってるくせに……もう寝ようって言ってんのに、黒崎がやめないから」
「るせえ、てめえだってノリノリだったじゃねえか!」

 ノリノリで遊ぶ石田……って一護と石田って夜遅くまで何して遊んでんだ?
 一護だって大した趣味持ってねえと思う。一護の趣味って言ったら、たぶん、服見るのは好きそうだ。あと、音楽かな? でも一護んちに遊びに行った時、一護の部屋にあったのは、ファッション系の雑誌が時々ある程度で、少しコアな音楽聞いてたりするけど、ライブに行ったりするほど熱烈な訳じゃない。
 だから石田と一護が何やってんのかって考えると……一緒に音楽聞いてたりする感じでもねえし。そもそも石田の家に遊びに行った時、オーディオ一切なかったぞ。

 じゃなけりゃ石田の趣味は裁縫だろ? まさか二人で針と糸持ってノリノリで何か作ってんのか?

 一瞬、針仕事をする一護を想像しかけて……俺の想像力に限界がある事を知った。



「夜遅くまで二人で何して遊んでんの?」

 だから、俺は素直に聞いてみた。

「…………」
「…………」

「?」


「えっ……と」


「あー……、昨日か…」





 何、この間……。

 昨日、何して遊んでたかって、訊いただけだよな、俺?


 二人とも、凍ってねえか?




 俺何かマズい事、言った?












「ケイゴも一護も石田君も切符買った?早くしないと急行来ちゃうよ」

 ……水色様っ!











20120805