俺は、石田との距離感がまだ何だか掴めない。
いや、普通に喋ってくれるようになったし、俺と話してて笑ってくれるようにもなったけど、なんかまだどっか腫れ物的な扱いになってる部分がある。
俺のポリシーとしては、友達って全員皆好きだし、特別って言えば水色はいつも一緒に居て特別だし、一護は変わってて特別だし、チャドも変な奴で特別だし、皆に態度変えるつもりなんかないけど、そんな事したくねえけど、やっぱり石田にはちょっと皆と同じようにはできない。まだ。
たぶん、石田にはバリアがあるんじゃねえんだろうか。
一護は石田が貼ってるバリアなんか一切気にしてないようだけど、俺は、やっぱり、なんかまだ一護や水色やチャドに接してるように、気軽に肩組んだり、タックルかましたりとかできない。したら、機嫌を損ねられそうな気がする……いや、一護にも良く怒られるけど、一護には気にしない。
なんか、例えば同じ珈琲カップでもいつも使ってる百均のとかじゃなくて、親にこれはお客様用に買った高いブランドのカップだから割らないようにって念を押されて洗ってる時の気分でどっか接してる。
石田ってなんかそんな感じ。
お坊ちゃんオーラが出てんのかな。
見た目、ひょろっこくて、貧血心配するほど白くて、倒れてもおかしくない外見してて、なんとなく『壊れ物につき扱い厳重注意』って思ってたけど、一人暮らしで、生活費ギリギリらし、この前一緒にスーパー行ったら、タイムセールでフルパワーのおばちゃん達の波に飲まれながらトイレットペーパーを勝ち取っていたサバイバル生活してて、意外と庶民派だった。
あと、体育の成績、俺より断絶いいし。体育が柔道だった時に、柔道部員と一護を軽く投げ飛ばしてたし。そんでも勧誘されないって、やっぱり石田だからだろうけど。
だから、見た目は近寄りがたかったりするけど、実はけっこう大丈夫だったりする……のかもしれない。
だから、いつも俺が一護とかにするみたいにタックルかましてもいいような気もしたから……。
「ぐっもーにんっ! 一護、石田っ!!」
前を歩く登校途中の石田と一護に揃ってタックルかけた。
足音消しながら走ってみたけど、直前で石田には振り返って、気づかれたけど構わず突撃した。
「わっ、ケイゴか! 朝っぱらから驚かすんじゃねえ!」
「おはよう、浅野君」
「鬱陶しいから離れろっ! 暑苦しい」
「石田〜っ! 一護が意地悪言うっ!」
って俺を払いのける一護が怖いから石田に後ろから抱きつくと、石田は困ったように笑ってた。
てか、細いな……。ちゃんと食ってんのか、コイツ。
「てめ、ケイゴっ! 離れろ!」
「石田助けて、一護が恐いっ」
「えっと……」
石田を盾にして石田の背後に回ると、一護がますます怖い顔をした。
「石田、俺を守ってくれ!」
「ケイゴっ! マジで怒るぞ」
マジで怒るって言ってる一護が……マジで恐い。
いや、驚かしたのは謝るけど、冗談で済む問題だよな? いつもは蹴られて終わりの所だよな?
なんか、めっちゃ怒ってませんか?
なんか、めっちゃ怒ってませんか?
いつも水色に俺が空気読めないって怒られてるけど、空気読めてる?
別に変な事やってないよな? いつも通りだよな? 何で一護怒ってんの? 俺は普通に石田とも俺なりの友情と交流と親交とを深めようとしてただけで、別に一護に怒られるような事してねえよな?
「石田っ! 助けて」
「ああ、うん……あのさ、あんまり時間、もうないよ? 浅野君、今日は日直じゃなかったかな?」
「げ、忘れてたっ! じゃ、先行くわ」
「とっとと行け!」
石田が俺が日直って事を思い出させてくれたから、俺は残念ながら二人と離れて走り出す。日直は朝一で日誌を職員室に取りに行かなきゃなんねえから、ちょっとギリギリかもしんねえ。
んで、走りながら思う。
石田は、けっこういつも早めに来んのに、つまり俺と同じくらいだったって事は、今日はなかなかギリギリ。
一護は十分前ぐらいには来てんのに、この時間。
今日はなんかあんのか?
そもそも何で一護と石田が一緒に歩いてんだ?
あいつら、家の方向、逆だよな?
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20120423 |