【Full Moon 】 12

こちらの話には性的な描写があります。18歳未満の方、苦手な方の閲覧はご遠慮ください。



















 羞恥で、身体中が熱くなる。
 僕は、なんて事をしてしまったのだろう。自分が今どういう状態にいるのかも朧気で、意識は未だに現実を掴まない。それでも、僕がどれほど恥ずかしいことをしてしまったのかは、解る。
 それに……あんなの、飲むなんて。

 だって……別に黒崎は、そんなのを飲みたいだなんて欲求があるはずないんだ。僕が黒崎の血を飲みたいのは僕がモンスターだから、であって、黒崎は今はただの人間で、僕のようなモンスターじゃないんだし……何で、僕のを、飲んだ?



「なあ、気持ち良かった?」

 黒崎の声は僕を責めているわけではなくて、解答を促すような優しい声音だった。
 いつも眉間にシワをよせている黒崎が、こんな優しい口調で話せるだなんて、意外だった。


 責められていない、そのことで、僕は少し安堵した。嫌悪されたら……僕が、黒崎の口で……でも、黒崎が、だって……


「……だから、出した」

 そんな事……言いたくないけど、黒崎の視線はとても優しくて穏やかなのに、何故か強制的だった。視線を逸らす事も、恥ずかしい発言を拒否して口を閉じる事さえ出来なかった。

 柔らかいブラウンの瞳は、僕の頭で考えた答えではなく、身体で感じた答えを絡めとり、引き出してしまう。



 嘘を、吐こうと思う隙もなく。そんな事を考える余裕なんか与えてもくれずに。



 気持ち、良かったんだと思う。
 だから、僕は、黒崎の口の中だって解っていて……。

 僕だって、自分でする事あるけど、それはただ罪悪感と羞恥を伴うただの処理であって……こんな……圧倒的な波の中に飲み込まれてしまったように、快感に逆らう事なんてできなかった。
 我慢、できなかったんだ。



「そっか。良かった」


 そう言いながら、黒崎は僕を覆うような体勢で僕の顔を覗き込んだ。
 とても、近い場所に、吐息すらかかりそうな距離に、黒崎が居る。
 今まで見たこと無いような黒崎の笑顔を見た。黒崎の血液みたいに、甘くて溶けてしまいそうな、そんな笑顔……僕は初めて見た。



「俺もお前に血吸われると、すげえ興奮する」


 黒崎に手をとられた。大きくて、筋張ってて、長い指。その手が僕の手を掴んで、下の方に導かれた。
 そして、僕は……黒崎のに、触った。

 事故でもなければ同性のそんな場所なんか一生触らないって、場所を僕は触った。

「……あ……」

 黒崎のを、僕の手で触れて……心臓が跳ねた。


 大きく……なってる。
 ズボンの上からでも、確かな手応えを感じた。黒崎のが、大きくなっていた。自分だってこうなるから、解る。

 確かに黒崎は、興奮していた。僕の手の平に、その興奮が伝えられてしまった……恥ずかしい。それなのに、何故か僕までその興奮が伝わってきて、再び熱が中心に集まっていくような気がしてしまった。




「俺の血舐めてる時の石田、めちゃくちゃエロい」


「あ……」


 黒崎が、僕の首筋を舐めた。ぞくりと、した。

 僕が黒崎の血を舐めるように、時々肌に歯を立てながら……僕が血を吸う時の歯ではないから、ヒトの歯だから、皮膚を抓まれるような、そんな感じ。わずかな痛みと……それ以上の甘い疼き。
 黒崎が僕の首筋に舌を這わした。


 飴にでもなってしまったような気分だ。皮膚が舐めて溶かされて、しまう。





「っ……黒崎…」


 また、意識が凝縮する。黒崎の舌に触れられてる部分が、僕の全部になってしまったような気がする、へんな、錯覚。不思議な感覚。



「これからは交換条件な」
「……交換条件」

「お前には血をやるから、お前を食わして」
「……僕、を?」

「そうじゃねえと、不公平だろ?」


 不公平?

 君が、そう感じているなら、きっと、そうなんだ。
 僕は貰うだけだった。黒崎の血を、貰う。それが僕にとって何よりも大事なんだ。
 黒崎が、何かを求めるのであれば、僕は何でもするよ。君の血を貰えるなら、僕は何をしたって構わない。何を君にあげたって構わない。

 黒崎が、なんでそんな事言うのかなんか解らなかった。だけど、
 僕なんかに発情するなんて、変だとは思った。だけど、


 柔らかいブラウンをした黒崎が僕を見る目が、とても……甘い。
 黒崎の血の、逆らい難い甘さと、似ている。

 僕はこの甘さにも逆らえなくて。




「……いいよ」


 黒崎優しい笑顔を見ていたせいか、僕も微笑んでいたかもしれない。



「僕を、あげる」










 キスは、黒崎の血と、黒崎が飲み込んだ僕の精液とが混ざりあった、変な味がして、互いに微妙な顔をしたのは覚えている。
 それがおかしくて、僕達は互いの額を擦り付けるようにして笑った。


 それからの事はあまりよく覚えていない。




 黒崎が僕の中を時間をかけて解してから、中に入ってきた時の息がつまる程の圧迫感と、僕の中を突き刺すように動く黒崎の肌に浮いた汗と、荒い呼吸は僕のだったか、黒崎だったか……。

 僕はどこかに飛ばされてしまいそうで、必死になって、黒崎の首にしがみついて、黒崎の喉に噛み付いていた。
 甘い血の味と、与えられた今まで味わったことのない感覚にどうにかなってしまいそうで……


 与えられているのが痛みなのか快感なのか解らない状態で、僕は黒崎の血を舐めた。甘くて、僕が溶けていく。意識が溶けていく。





「石田……大丈夫か?」

 黒崎が……僕の、中に在る。

「ん……ぁ……っう」

「石田、気持ちいい?」

「っ、んっ……黒、崎……ぁ、あぁ」


「俺……も限界」

「あっ……僕、も」





 強く、僕の中を黒崎が突いた時、意識が全部白に塗り込められて、










20111028