屋上は、放課後になると鍵がかかる。
だから、誰も来ない。遠くから聞こえる声も薄い……こんな場所、誰も来るはずがない。
どちらかと言えば部活は運動部が盛んな方で、あまり文化部は少ないから、校内に居る生徒は少ない。
だから、静か。
静かすぎて、耳が痛いくらい。
彼の霊圧が、空気を張り詰めさせている。僕ですら、少し息苦しいくらいなんだ、きっと誰も近づかない。近づけない、だろう。
陽射しの温い昼休みは、生徒で賑わう屋上も、放課後になれば鍵が掛かっているから、誰も来ることはない。皆知ってるから、もともと誰も近づかない。
それに、この霊圧じゃ、誰も近づけない。
屋上への扉の前の階段で。
僕は階段に座る彼を、深くくわえ込んだ。
口元に、突き付けられて、さすがに躊躇った。
……実際、一護のそれを見たのは初めてだった。二回も、中に入れられて、僕は意識が飛びそうになるほど、強く感じたのに、こうやって目の当たりにするのは初めてだ。膨張して屹立したそこは、触れると熱かった。
これが、中に在ると、……一護が中に在る時に、僕は僕をコーティングしてある僕を、棄てる事ができる。
僕らしい僕じゃない、ただの僕を見て貰える……。
僕の嫌いな僕自身……それを、見て貰える。その部分を晒してもいいんだ。一護には見せてしまった。見てもいいって……その、僕の嫌いな部分を一護には、嫌悪されたくない。肯定して貰いたいと、思う。僕は、そう思っている。
だから、僕は一護に僕を見てもらいたい。
それと同じように、僕も一護を見たいと思っている。僕は一護を知りたい。
大きくなった一護に、促されるまま、そっと、僕は唇を寄せる。
尖端に、キスをした。一度だけじゃなく、何度も、そこに僕はキスをした。
これが……僕を気持ち良くしてくれる……。痛みを伴うけれど、それ以上に、僕は解放される。あの瞬間だけは僕は僕として在る努力をする必要がなくなる。
口を開いて、そっと舌を這わせる。不思議な感触。つるりとしていて、熱い。当然、味なんかない。
「雨竜……」
一護が僕の名を呼び、身体が震えた。素直に、その声が、僕を喜ばせた。僕の名前を一護が呼んだ。一護が僕を認識してくれている。
口を、開いて、怒張したそれを、口腔内に迎え入れる。頬張って口の中にある大きな存在に、僕は舌を這わせた。
美味しいものでも食べているかのように、自然と唾液が溢れてくる。尖端から滲み出たぬるりとした体液は、不思議な味がする。ちっとも美味しいわけなんて無いのに。
変な味がした。これが、一護の味……
――感じているんだ……僕で。
僕がこうやって口の中で愛撫する事で、一護が反応している事が、僕を夢中にさせた。
舌を這わせる、深くくわえて、頭を動かす……どうすればいいか、解らなかった。どうすれば一護が僕で気持ち良いと感じてくれるのか、僕には解らなかった。
さらりと、僕の髪を掻き上げて、一護は僕の頭を撫でた。
優しく、されると勘違いしてしまいそうだった。
一護は僕が必要だって勘違いしてしまいそうだ。
必要と、されたい。彼に、僕を必要とされたい。
彼が、僕を見てくれるのが、僕は心地好い。
僕の頭を撫でていた手が、僕の頭を掴んで、そのまま上下に動かす……。
「ぅっ、ん……んーっ」
喉の方まで、飲み込んで、嘔吐感を堪えながら、それでも僕は必死で舌を這わせた。
滲んでくる、ぬるりとした体液が、気持ち良いと言ってくれているようで……それに興奮して、僕は夢中で彼に唾液を絡めた。
じゅるじゅると、濡れた音を立てている僕の口は、とても卑猥なモノになってしまったような気がした。それが、今の僕には興奮を増す要因かもしれない。
「雨竜……」
彼が、僕の名前を呼んだ。口の中に入ったまま、頭を捕まれて動かされていたままだったから、返事はできなかったけど。
「お前は俺だけ見てろ」
口の中で、一段と堅さと大きさが増した。口中に、一護が溢れている。
「ん……んっ」
「俺以外に笑いかけんなっ!」
口の、中で熱く弾けた。
喉の奥に吐き出され、噎せそうになって、慌てて頭を上げた………。
口の中に……溢れる、どろりとした一護の体液。
熱い。
吐き出したかった。
気持ち悪い。
どろどろとした感触が口の中を満たしている。生理的なものから、僕は吐き出してしまいたかった。
それを、何とか、飲み込んだ。
どろりとしていて、飲み下すことが困難ではあったが、吐き出す事も躊躇われたから……。
変な味がした。
喉に絡み付くような、変な……。
苦いような辛いような、変な味。
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20110703
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