21 僕は殴られる事を覚悟して、歯を食いしばってその衝撃に構えた。 けれど…… 僕が想像していた痛みは、やって来ず、そのかわり…… いきなり、シャツのボタンがはじけた。 「なっ!」 ポッターが僕のシャツを無理矢理開いたから、ボタンが……。 シャツを破かれたんだ。 お気に入りのシャツだったのに。 ボタンが多いから、一つでもなくなると使い物にならなくなるじゃないか。とか、思っていた事は僕に余裕があったのか、それともよっぽど混乱していたのかのどちらかだ。後者の方が正解だと思うが。 僕の外気に触れた肌に、ポッターの無遠慮な手が這い回った。その場所は、女の子だったら、膨らんでいる場所で……。 「ない!」 「あってたまるか!」 まだ、こいつはわかってないのか!? 僕がかつらを被っただけということが。 「おい、ポッター、離せ!」 僕が何とかポッターの腕を外そうとしても、びくともしない。 この状態は……もしかしなくても、まずい。 いや、男だとわかった今、ポッターが何かをするとは思えないけど。 けど、足の上にポッターが乗っていて、足も動かせないから……ポッターの手をどうにかするしかない。 けど………。 ポッターは僕の言葉に耳をかそうともせずに、ない、ないといい続けて、僕の胸を両手で触る。触るというよりも、揉んでいるんじゃないか? そんなところに脂肪なんてついていないんだから! 痛い。 「ポッター! やめろ」 本当にもうやめてくれ。 「ポッター」 「こっちは!?」 ポッターの目の色が変わった。 こっちって!? ポッターが、僕のズボンのベルトに手をかけていた。 「おい、こら、ちょっと待て!」 そこは! ざああぁーと、僕の血液が引いていく音が聞こえたような気がする。 目の前が暗くなってくる。 慌てて上体を起こそうとしたのだが、ポッターは僕に鋭い一瞥を投げて、僕を力任せにソファに押し戻した。 僕の身体がソファに沈む。衝撃で、息が詰まった。 「っ、やめてくれ!」 ベルトが、僕の制止をものともせずにベルトループから抜き取られて、ボタンが外されて、 ファスナーが下ろされる絶望的な音を聞いた………。 怖い。 どうしよう。 怖くて……、身体が動かない。 ズボンが、剥ぎ取られた。 一緒に靴が脱げた。 下着も一緒に、脱がされてしまって……。 確認したくもないが、僕は今、腰から下は何も見につけていない状態で………。 恥ずかしくて、顔から火が噴き出しそうになる。 物心付いた時から、誰にも見せたことなんてないのに。 クィディッチの練習があっても、あまり肌を見せたくないからみんなと一緒のシャワールームを使うのは遠慮していたというのに。いや、自信がないとかそういうことじゃなくて……なんとなくスキンシップは嫌いだし……あまり日に焼けない方で他のメンバーよりも白いし、背も小さいし、筋肉もついていないし……自信がないのは事実だけど。 なんで、こんなことに……。 しかもなんで、こいつなんかに……。 ポッターは、僕の足を掴んで、持ち上げて……。 左右に僕の足を押し広げて……そこに顔を近づけて。そんなこと……!! もう、本当にやめてくれ! 「ある!」 「当たり前だ!」 足を、閉じようとしたら、それ以上の力でポッターが僕の足を開いて、じっとそこを見ている! やめてくれ。 なんて格好させるんだ。恥ずかしい。 なんで、ポッターの前でこんな格好しなければならないんだ。 僕が、暴れて足をむちゃくちゃに動かしたけど、ポッターが押さえつけているからほとんど何にもならない。 「ポッター! もう、謝るから、やめてくれ」 「何、これ!?」 何って……お前にも付いているだろう! 「ねえ、何これ」 ポッターが、僕のそこを、鷲掴みにした。 「っつ……痛い!」 痛い、いたいって。 お前だって、そんな風に握られたら痛いだろ! 「ねえ……リズは?」 「痛い、放せ!」 本当に、痛くて、涙が出てくる。痛くて、力が入らない。 「ねえ」 ポッターが僕に顔を寄せた。 ポッターは、少し、笑っていた。 笑っているのに……なんでこんなに寒気がするんだろう。 目が全然笑っていない。 怖かった。 本気で、怖かった。 このまま握りつぶされてしまうのではないかと思うぐらいの力を入れられて。 「痛い!」 「ねえ、なんで女の子にこんなのがついてるの」 「僕は女の子じゃない!」 僕は男で、なおかつマルフォイ家の長男だ! お前だって知っているだろう。 こんなことされる言われはない。 なんで、同性に、しかもポッターなんかに服を脱がされて、よりにもよってポッターに向けて足を広げなくてはならないんだ。 「だから、目の前にいるだろ! 僕がリズだって、さっきから何度も言っているはずだ! もう本当に放してくれ!」 もう、僕の声は叫び声に近かった。 恥ずかしくて、痛くて……怖くて。 「………」 じっと僕の割った足の間を見ていたポッターが、僕に視線を投げた。 悲しみでもなくて、どちらかというと蔑みの視線だった。 ポッターが、いきなり、僕を離した。 掴んでいた僕の足を離して、立ち上がった。 開放された。 ようやく、開放された。 僕を掴んでいた手は離され、僕を押し付けていた体重もどかされ、僕は軽くなった。 けれど……。 「ポッ……」 呼び止めようとしたら……。 泣いて、いた。 ポッターが泣いていた。 涙が、頬を伝っていた。 「ポッター……」 泣かせたことに、僕はきっと慶ぶだろうと思っていたのだけれど。 少しだけ、罪悪感。 悪いことをしたかなって……。 でも…… ポッターが、僕の声が聞こえなかったように…… パタンと扉が閉じて、 僕が一人ソファに残された…… ちょっと待て。 この状態で、泣きたいのは僕の方じゃないか? あと半分 070305 → |