3 休みが取れるたびに、僕はドラコに会いに行く。 青い薔薇の咲く公園。 温室の前のベンチ。 僕は今の生活で彼に会えることが一番の楽しみになっていた。話していてとても楽しいし、一緒にいると心が弾むような気がする。 あんなに大嫌いだったのに、今は大好きだ。 彼に嫌われていたから嫌いだっただけなのかもしれない。 だから、僕は今僕をニコラスだと信じている君が大好きだ。 僕がハリーだと知ったら、きっとこんな風に笑ってなんてくれないだろう。 行くと必ず彼は僕の足音を聞き付けて眩しい笑顔で迎えてくれた。 ドラコも、僕が知っていた彼ではなかった。 あいつはこんな風には笑わなかった。 僕に笑顔なんか向けてくれなかった。 けれども今の彼は、優しい笑顔もできる。彼が何を考えているのか、あまりよくわからないけれど。 僕が話す事に付いて、真剣に聞いて、本当によく笑った。 いつも真っ白なシャツに身を包んで、清潔そうで。 陶器のようにキメの細かい肌は染み一つないようだった。 確実に彼は男だとわかるのだが、存在は中性的で女性らしい柔らかさも持っていた。 僕は、こんなに綺麗な人を見た事がない。 僕の思い出を探れば、嫌な事ばかり思い返され、やはり昔のドラコを好きになれないが、確かに今よりももっと幼さがある整った顔立ちをしていたような気がする。ただ、本当に嫌っていたために、彼の顔の美醜を考えたことがなかった。 ドラコは、目が見えないというのは本当らしく、僕が彼を穴の開くほど観察しても、何にもなかった。 「どうかしたのか?」 僕は、我に返る。 見惚れていた。 本当に綺麗だと思ったから。 「ドラコって本当に綺麗だよね」 「……そうなのか?」 そう言って首を傾けた。 綺麗だけれど、そうする姿は少し幼さが残り、とても可愛らしかった。さすがに可愛いとは成人男性には嬉しくないだろうから言わなかったけれど。 「悪いが、自分の美醜をこだわる為の鏡が僕には一番不要なんでな」 「でも、本当に綺麗なんだ」 「恥ずかしいから、やめてくれないか?」 僕が、彼の外見について評価を述べるのは、会う度の約束事となっている。 僕が彼に会うたびに、その美しさを称える。好きになった女の子にだって、これほど誉めた事はなかったのに。 でも、本当に、綺麗なんだ。 ドラコが、僕の事を嫌いだったし、僕も彼を憎しみに近い温度で嫌っていたから、だからあの頃は気がつかなかった。 「今度、ドラコが薔薇を世話している所を見たいな。目が見えないのなら、どうやるの?」 「触れば、わかるよ。それに植物に関しては得意なんだ。目は見えないが、魔法はなかなか優秀なんだぞ」 それは、知っている。 ホグワーツにいた時も、首席は常にハーマイオニーだったが、彼女に準じる席次をキープしていたし、学科によっては同位だった。ただ、彼女は魔力の扱い方はとても上手かったが、魔力自体はとても弱かった。それに引き換え彼は魔力に関しては、ホグワーツでは多分、魔力自体の強さを僕を抜きにして考えたら、純血の為せる業なのか、同じ学年では確かに一番だっただろう。 魔力に関して、僕の右に出るものは現在の魔法界には存在しない。 どの分野においても、彼は一番ではなかったから、それが彼から嫌われる原因の一つであったかもしれないけれど。 僕は勉強はからきしだったし、ハーマイオニーも魔力は弱かったから、総合したらあの時のホグワーツにいた生徒の中ではかなり上位に入るはずだ。 それは知っている。 だから多分、目が見えないくらいでは、多少不便なことも在るだろうが、日常生活にそれほど差し障りはないだろう。 薔薇の世話以外にも、薬を作っているらしいし、時々、本も読んでいた。触って文字を音に認識しているようだったが。 「それよりも君は、何の仕事をしているんだ?」 直球だった。 卒業と同時にチームに入ったから、下手に嘘を吐いて知らない仕事のことを言って色々質問されればすぐにばれてしまうだろう。 「クィディッチの選手なんだよ」 それ以外の仕事について、何も知らないから。嘘でも、少しは通じる嘘にしておこうと思った。 しぶしぶ答えた途端、ドラコの顔つきが変わった。 今までは優しい穏やかな笑みを称えていたが、いきなり目も実は見えているんじゃないかと思うほどに輝いて、僕の腕を掴んだ。 「かっこ良いな! 僕も大ファンなんだぞ。ニコラスはどこのチームにいるんだ?」 前線でシーカーとして活躍しているなんてとても言えない。だからと言って、僕は下積みなんかはほとんどなかったから、補欠選手達の苦労も知らない。 ただ、その苦労話はよく聞く。 「アイスオックス、知ってる?」 僕は嘘がばれる事を恐れて僕のいるチーム、ホワイトクロウではなく、本当のニコラスのいるチームの名前を言った。 幾つもあるチームの中では、悪いが最弱の部類に入っている。普通知っているチームを五つ上げろと言われたらまずそこは入ってこない。 「もちろん知っている」 だけどドラコは満面の笑顔で返して来てくれた。 「大ファンって言っただろう。アイスオックスは力技で押して来ている時なんかパワフルでかっこ良いと思うぞ。チームの連携があまり良くない時もあるが」 ドラコはいつに無く饒舌だった。 質問はよくするけどあんまり自分の話はしないから。 ドラコは、毎日何にも無いからって言うけど。 「ドラコはどこか好きなチームはあるの?」 「僕はホワイトクロウだな、断然! チームの連携もとれているし、スピードが違うだろ。クィディッチの見所はスピードだと思うんだ」 僕のチームだ! 確かにうちのチームは強い。スピードに長けている選手ばかりを集めているから。 ドラコだったら戦略と戦術に長けている、僕達のチームが一番苦手なチームが好きなんじゃないかと思ったのに。あそこはスリザリン出身の選手も何人かいるし、意外だった。 ホワイトクロウには僕もいるのに……。 「本当にホワイトクロウはかっこ良いよな。ただ戦略においてはそれほどだけど」 僕は、また違うドラコを目の前にした。 家が潰れ、視力も失い、ただ密かに穏やかに暮らしているだけと思っていた。 確かに今まで見た彼は声を荒げることもなく、始終ふわふわとした柔らかい笑顔を浮かべていた。 けれども。 夢中になって話している姿は普通に僕のファンの少年達と同じようだった。 「ホワイトクロウは、シーカーが強いからな。負けるはずないんだ!」 ………? 何を言っているんだ? 彼は僕のチームを褒めてそして、そのシーカーが好きだと言った。 僕を好きだと言った? 「……ドラコ?」 「ああ、すまない。ライバルチームだったな」 「………いや、そのシーカーって……」 「ハリー・ポッターさ」 彼は少しだけ頬を染めた。 「僕は彼の大ファンなんだよ」 チーム名……すごく適当に付けたんだけど……システムどうなってるんでしょうか……実は原作それ程真剣に読んでないです、ごめんなさい。ドラコのとこだけ真剣です。ぶっちゃけはりぽたファンじゃなくて、ドラコファンです。すみませんすみませんすみません。 0610 |