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 身体を綺麗に拭いてからベッドに寝かせていたドラコが、気がついたらブルーの瞳を見せていた。
 彼が起きるまでと思い、ずっと眠っている彼の横顔を見ていたのだが、気がついたら彼の目は開かれていて、僕はその瞬間を見逃した。


 いつものように、何も写さない瞳がぼんやりと開いていて。
 吸い込まれてしまいそうなアイスグレーがただ、そこにあった。


「ドラコ……」

 静かに声を掛けると、ドラコはこちらを向いた。

 僕は、なんて言えば良いのだろうか。



 酷いことをしたと思った。
 彼が悪いわけではないのに。

 でも、彼は抵抗しなかった。

 ドラコが何を言っても、何をしても結局同じ結果になったのだろうけれど、それでも僕は何と言って彼に許しを乞えば言いのか。

 彼は、僕に厭だと言わなかったけれど。

 許してくれないかもしれない。そのくらい、酷いことをした。


「……ごめん」

 嫌いに、ならないで。
 本当に好きなんだ。

 僕を見てくれなくていいから。
 僕をそばに置いて。


「ごめんね」

 謝る以外のことはできなくて。

 布団が動いて、ドラコの手がのぞいた。
 ドラコの伸ばしてきた手が、僕を求めているような気がしたから……。

 ドラコの手を両手で握り締めて祈るように額に近付けた。
 どうか、許してください。


 ぼんやりとしたドラコの表情。

 何を考えているの?

「嫌いになった?」
「………ニコラス?」

 僕はここにいるよ。
 君のそばにいる。

 僕は何度もドラコの指先と爪に触れるだけのキスをした。

「今、何時だ?」

 そう言って身体を起こそうとしたら、負荷がかかったのか、苦しそうに顔を歪めてまたベッドに沈み込んだ。

「無理しないで」
「………すまない」

 それがどんな痛みなのか僕にはわからなかったけど、辛そうだった。

「何で、ドラコが謝るの?」
「……それもそうだな」

 そう言って、ドラコは笑った。

 いつもの優しい笑顔。

 僕が君を大好きになった笑顔。

「許してくれる?」

 ドラコの空気はいつもと変わらずに穏やかだったから、許してしまうドラコは僕のことを一途に想っているわけじゃないことが解って、悲しい気もしたけれど、許されると思うと緊張していた背骨に血液が流れる。

「そうだな……今度遠征試合に行った時にでも美味しいワインを買って来てくれないか?」

 そう言ってドラコは、笑った。

 僕は嬉しくて。



 抱き締めた。

 君が大好きなんだ。

 本当に好きなんだ。




「好きだよ、ドラコ。大好き」
「……ニコラスの気持ちは嬉しいけど、でも僕の気持ちは変わらない」


 僕に抱かれた後、僕に抱き締められたまま、彼はいつもと同じようにはっきりと言った。



「僕は、ハリーが好きなんだ」



 嬉しくて、それでもどこか切なくて。


 君の目の呪いを今すぐ解いたら、君は僕を見てなんて言うだろう。

 僕と知ったら君はどうするんだろう。






























みじかくてすみませぬ。0611