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 性的な描写が含まれます。
 苦手な方と、16歳未満の方は以下は読まないで下さい































 ドラコは、頷いたんだ。


 ドラコは、僕が好きだ!



 僕の事を想ってくれていた!


 僕は何かの制御機能がイカれてしまった。
 世界が、見えなくなる。
 ドラコ以外の何も、見えなくなる。

 目の前に見えているすべての物が消え失せて、ドラコしか見えなくなったのが解った。きっと僕がちゃんと意識を持っていたのはそこまでだったのではないだろうか。
 僕は今ドラコよりも盲目だ。ドラコしか見えていない。君の気持ちさえ見えていない。




 僕は君の好きなハリーじゃないのに。









 僕は、無理やりドラコの顔を上に向かせてがつがつとキスをした。

 気がついたら、していた。

 唇に触れたら柔らかいんだろうなんて、そんな事を……そんなことばかり想像していたけれど、感触を楽しむ余裕とかはなかった。

 貪るように、僕は肉食獣のようにドラコの口を食べた。
 優しく、最高の優しさで君を包んであげようと思っていたのに。
 君が笑顔でいてくれればそれで充分だと、そう思っていたのに。僕が少しでも君の笑顔の要因になれば良いと。


 ドラコは、苦しそうに息を漏らしたけれど、僕は止まらない。
 僕は、ドラコを襲うための機械になってしまったように、その時何を考えていたのかわからない。ただ唯一の目的がドラコだった。それ以外はインプットされていない。


 手はドラコの体をシャツの上からまさぐって、ボタンを外していた。
 ドラコはキスに苦しそうにしていたから、あまり気付いていないようだったけれど。はだけた胸元から直に素肌を触る。

 しっとりと滑らかな手触り。
 吸い付くような感覚で、キスをしたまま僕は身体を触った。
 僕達の唇の間から、ドラコの声が漏れる。
 鼻に付いたような高い声。
 僕を感じて。

 胸の突起に触れると、指先で押し潰すように揉むと、指の腹を押し返すような感覚があった。

「……んっ」

 唇の間から、くぐもった声が上がる。

 食べてみたいと、口を離したら、潤んだドラコの瞳が見えた。
 僕を見ていない。
 僕を通り越した誰かを見ていると思うと、どうして良いのかわからなくなる。見えないのは知ってるけど、僕のことを見て欲しかったから。僕のことを想って欲しかったから。

 僕は、ハリーだよ。


 唇が僕のかドラコのかわからない唾液でぬらぬらと光っている。飲み込め切れなかった唾液が、口の端から顎を伝っているのが見えた。

「……ニコラス、どうしたんだ、一体」

 息を切らした声で、ドラコは困惑気な表情をした。




 頭が、沸騰したかと思った。



 ……ニコラスって誰だよ!

 僕は君の好きなハリーなんだよ。
 僕はニコラスじゃなくてハリーなんだよ。
 僕はここにいるよ。



 抵抗してよ。

 僕のこと、想ってるんでしょ?

 僕以外には触らせないでよ。
 僕のこと好きだったら、僕以外誰にもこんなこと許さないでよ。

 でも、きっと僕はドラコが抵抗してもドラコを無理矢理犯してしまうだろう。

 止まらないよ。

 僕のことを好きだと言ってくれた君が嬉しくて。

 ずっと僕のことを好きでいてくれたのが嬉しくて。

 でもそれは今ここにいる僕のことじゃなくて。

 僕を見てくれていなくて。
 ドラコは好きな人がいるから、僕に気持ちをくれることはないんだ。


 僕は何て思えばいいんだ?

「ドラコ……僕は……」

 その後に続く言葉が言えなかった。
 僕は何が言いたかったんだろう。

 君が好きだ、と?
 君が欲しい、と?



 赤く潤んだ瞳。

 優しくしたい。
 何よりも誰よりも優しくしたい。
 君が幸せになるように。

 君が僕によって少しでも笑ってくれれば良い。

 そう思ったのは嘘じゃないはずなのに。今でもドラコには笑っていて欲しいけど。

「……ニコラス?」

 その名前は呼ばないで。
 それは僕じゃないんだ。

 いつ、彼のシャツを脱がせてしまったのか覚えていない。
 深く口付けて彼の口腔内に僕の舌を捩じ込んだ。
 彼の身体に僕を残したい。
 椅子の上でただ為すがままになっているドラコの下肢を服の上から揉むと、しっかりとした手応えが返って来る。
 僕の手で感じていると思うと、もっと触れたくなる。

 眉間に寄せられた眉は苦しさを示していて、きつく閉じられた目からは涙が一筋零れた。口から漏れるのは断続的な嬌声と熱くて荒い息。

 背骨を通って何か熱いモノが駆け上がって、後頭部で快感が弾けた。

 夢中になって、ドラコの身体中にキスを落とした。キスなんて優しいモノじゃなくて、噛み付くように、白い滑らかな肌に痕を残した。

 優しくしたい。
 笑っていてくれればいい。
 君が僕のそばで、笑っていて。


 そんな風に思っていたのはただの欺瞞じゃないか。
 こんなに好きなのに。
 全部自分の物にしてしまわないと気が済まないくらい君が好きなのに。


 身体中を触って、ドラコのズボンボタンを性急な手つきで外すと、彼の中心部が熱を持っていた。
 僕はそれを握ると上下に強く扱いた。
 
「あっ、……ああっ」

 強く擦ると先端から透明な先走りの液が漏れて来る。

 椅子の上で、白い肌に赤い痕を残して、真っ赤に充血した唇は薄く開き唾液で濡れ、スボンから充血した熱い性器を出した格好で、くたりと脱力している姿態はひどく妖艶だった。

 僕によって君が快感を覚えてくれるのが嬉しくて、もっと気持ちよくなって、欲しくて。

「……ニコラスっ、も…だめ」

 もう、喋らないで。
 その名前を呼ばないで。

 僕は君の一番好きな人じゃないよ。
 いいの?
 好きでもない人に犯される君を淫乱だと軽蔑し、僕で気持ちよくなっている君が嬉しくて。
 僕が手を動かす度にドラコの口から上がる高い声をもっと聞きたくて。

 強く、手を動かすと、ドラコの声が一際高くなって。

「っん、ゃ………あぁっ!」

 白い体液が勢いよく放たれて、僕の手を濡らした。

 僕の手で、ドラコがイった。

 絶頂に達したばかりで、ぐったりとしたドラコを無理矢理立たせてズボンと下着を強引にはぎ取り、後ろを向かせて椅子に手を付かせた。

 力の入らない膝ががくがくと震えている。

 ここにきても、ドラコは抵抗しなかった。
 何をされるのか、解らないはずがないのに。

 ドラコの腰を引き寄せて、ドラコの出した体液で濡れた指を後ろの穴に差し込んだ。
「っ痛、」

 ドラコの中はキツかったけれど、ドラコの出した液体で濡れている指はすんなりと入って行って、入口を広げる。
 指を増やして、バラバラに動かすと、ドラコの腰が嫌がって揺れた。
 

「……痛い」

 それくらいじゃ何の抑止にもならない。

 痛くて、上げている声も可愛いとさえ感じてしまう。

 ごめんね。

 今は君のことしか考えられない。君の気持ちを考えられない。僕が君を想う気持ちが溢れてしまった。君が欲しくてたまらない。

 君のせいだ。


 無責任な責任転嫁。


 指がようやく三本ドラコの中に沈むと、僕は指を引き抜く。

「ぁ………」

 ほぐした場所が指を抜くとひくひくと動いた。滑っていて、とてもいやらしい、そこに。

 僕は僕のを、捩じり込んだ。

「っあ―――!」

 その声はもはや悲鳴だった。

 ドラコの中は蕩けそうなほど温かくて、熱くて、潰れてしまいそうなほど狭くて、きつくて。


 僕は夢中になって、腰を動かした。


 奥まで突き入れる度に、君が高い声を上げる。





         僕は…………







 達した瞬間、真っ白になった。



















0611