性的な描写が含まれます。苦手な方、18歳未満のお客様は以下はご覧頂けません。


















「いっぱい出したね」




 その声に自分を自覚した。初めに気が付いたのは、自分の息遣いだった。荒い息遣いは自分に良く聞こえたから、彼にも聞こえてしまっている。身体中を使って僕は呼吸をしていた。とても情けない姿を僕は晒しているのに……。

 吐き出した直後の強い倦怠感で、僕は指すら動かせない。動かないのに、空気に触れるだけで、反応しそうな程に、皮膚が鋭敏になっているのを感じた。


「ひっ……」

 ぬるりと、腹を撫で上げられた。僕が出したもので濡れて、普段服で隠れている、誰も触るはずのないその場所は、達した前よりもよりその感覚を伝えてきた。触れられたのは皮膚なのに、そのもっと奥の芯の方にじりじりとした火を付けられるような、そんな感覚が僕の身体の中を駆けた。

「触る、な」

 今触られたら……。

「っ……あ」

 それでも、彼は僕の身体に僕が出した体液を腹の上に広げた。ぬるりとした、温い感触が堪らない。

 熱い、収まらない。触らないでくれ、もう、辛い。


「気持ち良かった?」

 僕の身体に手のひらで触れながら、彼は僕の耳に口を寄せる。

 声が、じんと脳に響いた。頭の中に染みるような声に僕の意識が包まれて閉じ込められてしまうような気がする。

 ちゅ、と音を立てて、キスをされた。至近距離で僕の瞳を見つめて………。

 その緑に吸い込まれてしまいそう………な。


 あ……また。



 溶ける………。




 身体の力が抜けて、なすがままに。



「気持ち良かった、ドラコ?」


 僕は、頷いていた。何も考えていなかった。僕はただ彼に従っていた。訊かれた事は、答える。
 今、僕は気持ちが良かった。だから頷いた。その事に、疑念を挟む余地などない。


「そう。いい子だね」


 柔らかな笑顔に相応しい優しいキスが、僕の頬に触れて。


 何度も。何度も。

 解かされていく。意識と、身体が、柔らかく。




「じゃあ、ここは?」

「やっ……!」

 熱に、現実感を失っていた僕は、後ろに伝う指の感触に引き戻された。


 いつの間にか、僕は下着すら付けていなくて……。


 さっきまで、ポッターは僕の上にいたのに。何だかよく覚えていない。

 僕は身体を転がされて、うつ伏せになった。自分の着ていたローブが僕の身体の下でしわを作っていた。

 彼が僕の腰を引き寄せるから、腰だけをつき出すような、みっともない格好になってしまっても、僕は羞恥でどうにかなってしまいそうなのに、それでも動けなくて。自分の身体すら思い通りにならなくて。

 涙が溢れる。この涙は何故溢れているのか解らない。悔しいからなのか、恥ずかしいからなのか、嬉しいからなのか。ただ、僕はとにかく声を出して泣いた。

 こんな……。

 ポッターの指が、後ろの………。



 恐い………!



「あ………っ!」


 身体の中に異物感。

 彼の指が僕の中に侵入してきた。入り口を広げるように、中に押し入って、そこで動いていた。何をされるかなんて、解っていたはずだ。僕はそれを望んでいたはずだ。ポッターはその通りに動いているだけだ。それなのに


「狭いなあ………こんな所に本当に入るかな」

 後ろから僕の腰を持ち上げるように、腰だけをつき出した格好を取らされて。


 その場所に視線を感じた。熱くなるのがわかったから。


 圧迫感が、気持ち悪い。
 僕の身体の中で指が動いている。

「ひっ……」

 質量が、増して喉の奥でひきつった声が出た。

「今、二本入ってるの、わかる?」


 痛い。

 苦しくて、恐い……。



 こうしたかった。

 僕はこうやって、彼と一つになりたかった。

 怖い!









 僕は逃げ出した。

 前に、進んで、その恐怖から逃れようと。


「どこ行くの?」


 腰を掴んで引き戻される。


「やだっ!」

 嫌だ。こんなに怖いのは。


 何が起こるか、僕が、どうなってしまうかわからない恐怖から僕は逃げたかった。

 それでも彼は押さえつけて僕に降伏を求める。



「逃げられないよ。逃げないでよ」

 逃げたかった。

 手を伸ばして、少しでも前に、身体に力が入らない、腰を彼に拘束されていて、それでも僕は逃げ出したくて、残っている腕の力で、前に逃れようとして。


「無理だよ。僕から逃げるなんて」

 腰を引き寄せられて、つき出した皮膚を嘗められる。

「やだ! いやだ!」


 怖い!
 僕が……壊れてしまう!


 それでも、彼から逃げ出そうとする僕に向けた舌打ちが聞こえた。






「っ………あああ!」



 痛みが。



 内臓が割り開かれて、入り口がぴりぴりとした。僕が潰れてしまう。



「きっつぅ……」



 ポッターが、僕の中に入ってきた。


 僕の身体が、ポッターで埋まった他に僕の臓器はなくなって、僕が全部彼になってしまったように、痛みと激しい圧迫感と。



 恐怖。

 刺し抜かれて、動けない。痛みで。



「ねえ、わかる? 僕達は一つになっているんだよ?」



 ………一つに………。

 僕達が、



 彼の声に、僕は必死で頷いていた。


 ああ、僕達は一つになっているんだ。



 僕とお前の境界がなくなり、彼が僕の中でいっぱいになって、僕が彼で埋まる。僕がいなくなる。

 理性が溶ける。


 僕がいなくなる。


 僕の主導権を彼に譲渡したのは強制的にだった。その恐怖にわけがわからなくなる。痛みと苦しさで僕は叫んでいた。




 ………そして歓喜が。


 痛くて。内臓を圧迫されて、苦しくて、顔中がきっとぐしゃぐしゃになっていたはずだ。涙と唾液が僕の顔を流れていた。それでも、僕は嬉しかった。痛くて、辛くて、苦しくて、自分の叫び声すらも聞こえないのに、それでも僕は嬉しかった。


「………好きだよ」


 僕は無茶苦茶に叫んでいたから。あまりよくは覚えていない。

 何度も、何度も、ポッターのその言葉がそれでも僕を支配していた。





「好きだよ、ドラコ」


 僕は…………。




 求められたキスに応えた。

 前から抱き締められて、突き上げられて、僕も彼を抱き締めていた。



「好きだ、ドラコっ!」





 熱い……………!















101026