7 戻ると、大変な事になっていた……。 本当に大変な事になっていた 一週間ぶりに帰宅する。遠征とかでちょこちょこ家を空ける僕としては、それほど久しぶりって言う実感はないけど、でもやっぱり自分の家は一番落ち着く。 荷物を置いたらまず紅茶を飲もう。荷物を整理する前に、やっぱり熱いシャワーを浴びようか。 僕とマルフォイが一緒に居たりしたら、格好のネタにされてしまうから、一緒には帰れなかった。当然だ。一応僕だって、クィディッチで有名人だし、マルフォイなんて王子様だから。仲が良かったりしたら、なんか色々言われそう。 、それでも僕達の中ではもっと大きな、人生最大とも言えるべき事件があった。誰も知らない秘密なんだ。 シャワーを浴びた後遅いブランチを食べてからマルフォイは一人で戻った。 お互い忙しい身分だし、簡単に会えるような仲じゃないし、直通で手紙を送る方法だけ教えてもらって、寂しいけどホテルの部屋で別れた。 でも、僕の気持ちは本当に長い年月をかけてようやくマルフォイに届いたんだ。マルフォイも、ずっと僕の事が好きだったんだって。 嬉しくってさ。 僕達は、両想いになれたんだ。 その気持ちを、その喜びをはやく、一人で噛み締めたくて。 玄関を開く前に、ポストを確認すると、なにやらたくさんの手紙が届いていた。たくさん……親友達を含めて、チームの先輩や後輩。他のチームの仲の良い友人とか……。ハーマイオニーなんかは、何通も……。もう音信不通になったかと思っていた学生の頃に少し仲良かった友人からも……?? 何だろう。 事態が飲み込めないまま、それほど気にせず、とりあえず、家に入る。早く荷物を起きたかったから。 早く、ソファに座って暖かい紅茶でも飲みながら、この幸せを実感したいんだ。 家に入って、手紙や新聞を投げるようにテーブル、に置いて。 一緒に投げた新聞の一面、大見出しに………凍りついた。 僕とマルフォイが、手を繋いでいる写真………? なんだ、これ? 慌てて、僕がマグルにいる日の新聞をバラバラと分けて、全誌面に目を通す。 ほとんどが、僕とマルフォイについての記事。マグルのあの公園で、キスまでしている写真すらある。 大したニュースがない魔法使いの世界では、クィディッチ界で活躍中の僕と、青年実業家の王子様のマルフォイとの恋愛騒動で持ちきり、らしい……。 マルフォイが戻って来た昨日のマルフォイの写真は、僕が彼の首筋に着けた痕まではっきりと……。 何だ、これは………。 僕は慌てて、僕宛の手紙の封を切ろうとした途端、弾けた。 『ちょっと、ハリー! 一体どういう事なのよ!?』 ハーマイオニーからの吼えメールが鼓膜を破る勢いで吼えた。 いや、僕だって、どういう事か知りたいよ。手を伸ばす前に、吼えメールが次々に弾けて僕に説教をする……。 『ハリーっ! 一体何があったんだ!?』 『ハリー、新聞見たよ。どうしたんだ?』 『マルフォイと会ったのか?』 『ガセネタだと思うけど、何があった?』 『ハリーっ! お前何やってんだっ!?』 「どういう……」 いや、こっちが訊きたい。 とにかく、新聞を確認する。 けど……マグルで待ち合わせ? って見出し。僕がマグルでマルフォイと再会した時の写真。食事中の写真。一緒にお酒を飲んで笑ってる時の写真。公園で手を繋いでる時の写真。一緒にホテルに戻った時の写真。マルフォイが一人でホテルから出てくる時の写真。 これって……。 僕が呆然としていると、誰かが玄関をノックする音が聞こえた。 友人が心配してわざわざ来てくれたのだろうかとも思ったけど、さすがに平日だし。それはない。 僕の家はチームのキャプテンにしか教えてないし、チームの本拠地まで暖炉を繋いであるし、滅多に出歩かないし、出歩く場合は変装しているし、出歩いても人家すらほとんどない田舎に住んでいるのに………。 まさか、もう雑誌記者に嗅ぎ付けられてしまったんだろうか。 玄関はちゃんとロックしてあるけど……。 玄関まで行くと、再びノックの音が聞こえた。そして、声。 「僕だ、ポッター。入れてくれ」 聞こえた声は、僕の恋人の………。 「マルフォイっ!」 慌てて、玄関を開けると、僕の恋人が……。 しかも明るい髪の色は、僕のような黒い色に染めて、前に会った時も写真でも、上等なローブか、オーダーメイドのスーツしか着ないようなマルフォイが、僕が前に着ていた、デニムにチェックのシャツ……とか、似合わない格好で………。 「マルフォイ………」 「会いたかった、ポッター」 そう言って、マルフォイが僕の首に抱きつくから……僕もつられてマルフォイの細い身体を抱きしめて、しまったり……してる場合じゃなくて! 慌てて扉を閉めた。 いや、僕だって会いたかったけどさ。 とりあえず、マルフォイとしばらくキスをして、しばらく抱き合って………二日離れてただけなのに、なんか目頭が熱くなるぐらいに、会えるのが嬉しくなるだなんて思わなかった感動は、一入だったけど。。 「マルフォイ、その格好……その…」 「見つからないようにここまで来るのは大変だったぞ」 「その髪の毛……」 「ああ」 マルフォイは、口の中で呪文を唱えると、すぐに彼の元の輝きを放つような明るい色に戻っていたけど……変装してたって事は、やっぱりお忍び。 「えと……見つかって、ないよね」 僕よりも一日早く戻ってきて居たんだ。僕よりも事情に詳しいはずだ、一日分は。今がどんな事態なのか、ちゃんと解ってるはずだ。 会いたいけど、会いたかったけど、どうせだったらずっと一緒にいたいけど。 今、ちょっと世間がそんな状況じゃないのは、新聞が物語っている。 「ああ。それは大丈夫だ。暖炉を何回も経由したし、山一つは箒で飛んだし、それにこの格好じゃ、僕だって解らないだろう?」 「………なら、良いけどさ」 いや、良くない。 そうじゃない! 問題は、なんでこんな事になっているのか、だ。 「さすがに、一晩箒に乗っていたから疲れた。水を貰えないか?」 「一晩も?」 「それだけお前に会いたかったって事だ」 マルフォイは、悪戯っぽく目を細めた。その顔がまた僕の見たことのないマルフォイの笑顔で、また抱きしめたくなってしまった。 「嬉しいよ、マルフォイ」 嬉しいよ。嬉しいけどさ。 とりあえず、マルフォイを、部屋に通して、ミネラルウォーターをグラスで出した。彼が飲み干すまで、その様子を見る。 ずっと、本当に好きだった相手。手に入れたかった。二度と会うことはないと思っていた。諦めたかったのに、諦め切れなかった。その彼が、僕と気持ちが通じて、僕の家にいる。 何か、込み上げて来るものがあるけど……。 テーブルの上にある新聞と、吼えずに弾けなかった、まだ未読の手紙が、僕をその感動に浸らせてくれない。 / → 090806 05.06は微エロシーンなので、さすがにTOPにLINK張りたくないので、ポタページ収納時にアップします。 それに伴い、収納時にちょろっとこの辺も変えます。 次で終わり〜。 |