マルフォイは僕に、キスを送りながら、ぎこちない手付きで触れてくる。

 ふんわりとした柔らかい髪が、肌を擽り、マルフォイが、僕の首筋に舌を這わせてくるそんな仕草は、まるで、猫のようだ。
 なついた猫が、甘えてきているようで……可愛い……仕草に、僕の股間は熱くなる。

 一生懸命で、くすぐったい。僕のために、一生懸命になってくれるのが、それにこんなに興奮するなんて思わなかった。


 こんなに可愛い……だから、やっぱり、僕が君を気持ち良くしてあげたいんだ。そっちの方が似合うよ。

 彼の脇腹をするりと撫で上げる。

「ひぁっ……」
「感じやすいんだね、可愛い」
「っ……今のはびっくりしただけだ!」

 でもさ、やっぱり、君と繋がりたい気持ちは、本当に強いんだけど………だから、一つになりたいって思う気持ちには偽りなんかないけど。



 だけど、やっぱり。ね。




 彼の身体を抱き寄せてから、反転させる。
 僕が上になると、簡単に押さえ込めちゃうんだから。やっぱりさ。

「ちょっ、ポッター!」
「今度は僕の番だよ」

 両手を繋いで、ベッドに押さえつけたまま、首筋を嘗める。
 さっき、君が僕にしてくれていたように、同じように、舌を這わせる。


「ふ……ぁっ」

 鼻にかかったような、高い声が、赤い唇から漏れてくる。


「ほら」
「………」
「僕はくすぐったいだけだし」

 唇を噛んで、声を抑えている表情すらも、愛しい。もっと気持ち良くなって、僕で気持ち良くなって、もっとその声が聞きたい。


 繋がりたい。

 後ろ……を指でなぞると、マルフォイの身体が跳ねた。唾液で濡らした指を、中に沈める。熱くて、指が解けそうになる。

「ん……あ…やだ」
「ごめん、ちょっと我慢して」

 入り口を広げるようにして、ゆっくりと解してから、マルフォイの中を探る。少しでも感じて欲しくて、中を触る。女の子と違って濡れるわけじゃないけど、それでも。
 マルフォイの中に入りたくて。
 中で指を動かすと、甘い声が吐き出されて、さっき出したのに、立ち上がって来ていて、先端からとろりと透明な体液を出していた。


「ポッターっ……もう……」
「なに?」
「もう、指、嫌だ」


 そんな可愛い事言われちゃったらさ……我慢なんて、無理だった。

 たっぷり解したと思うけど、それでもこんな小さなところに入るのかやっぱり不思議だったけど、マルフォイの入り口に僕の先っぽ押し当てる。


「いい?」
「………きて」

 マルフォイは、少し目を細めて、やっぱりきつそうな顔をしていたけど、それでも僕に笑顔を向けたんだ。冷たい表情ばかり僕にずっと見せていた君が、僕に見せてくれたその顔だけで、僕は我慢できなくなってしまって……。
 少しずつ、僕はマルフォイの中に入っていく。温かくて……熱いぐらいで…溶けてしまいそう。頭の芯まで全部溶けてしまいそう。


 それからは、もう夢中で、優しくしたいって気持ちと、マルフォイが愛しいって言う気持ちと、そんなのでいっぱいになって、溢れて。


















 朝、起きると、隣に……僕の腕の中でマルフォイがまだ寝ていた。カーテンの隙間から漏れた光がマルフォイの髪をキラキラとさせていた。

 時計を見ると、もうお昼近かった。




 昨日はだいぶ、疲れさせちゃったから……。
 だいぶ無理をさせてしまったかもしれないけれど、僕だって同性同士のセックスなんか初めてだったし……なにより相手が長年思い続けていたマルフォイだし。それにしては、我慢したって思うけど……やっぱり、無理させたから。




 痛いって、言われたけど……。
 我慢できなくて……。



 続けて二回ほど、マルフォイの中で出した。意識が飛ぶほどの快感で。


 痛いって、泣いていたマルフォイも、反り返って、ずっと透明な液を溢していた。僕が彼の中に吐き出した時に、根本を擦り上げると、一緒にイったし……。

 ちゃんと、気持ち良くなってくれたはず……。


 その後、意識を失うように寝てしまったけど。


 白い肌に僕が残した赤い痕が散る。


「………ん」
「マルフォイ……起きた?」

「……今、何時だ?」

「十時」


「………そうか」


「仕事、大丈夫?」


「……無理だ、な」

「え、ごめん。僕も今起きた所で……」

 僕は休暇中だけど、マルフォイは仕事本当に忙しそうだから。マグルに来たのも、彼の事だから仕事の一環だろうし。


「かまわない………それに、どうせ今日は仕事にはならないさ」

「ごめん」

「いや。謝るのはこっちの方だ」

 だるそうにマルフォイは身体を起こした。
 だいぶ……積年の念願の想いを行為に変えてぶつけてしまったから、マルフォイはちょっとつらそうに顔をしかめた。

「……ポッター、その……悪かった」
「何でだよ。昨日、だいぶ辛い思いをさせちゃったし……」

「まあ、まさか僕が下になるとは思わなかったけど」


 ちょっと顔をしかめていたけど ごめん、そこは譲れないんだ。
 今までで誰よりも気持ち良かった。君が僕で気持ち良くなってくれているって感動が快感を助長させていた。


「マルフォイは……その僕とで、良かった?」

 一応これは訊いておかなくてはって思っていた。そりゃさ、やっぱり男同士でセックスなんてもう二度とお断りだとか言われないように細心の注意を払ってはみたものの、理性なんて途中からなくなっちゃうし。

「………当たり前だ」

 ふんと、逸らしたマルフォイの顔は、真っ赤に染まっていた。


「また、次があるって思っていい?」

「……ポッター」

「ねえ。君が好きなんだ」

「………」







「僕の恋人になって欲しい」


 真剣に。
 僕が学生の頃に言いたくても言えなかった台詞。

 言えたって絶対に受け入れてもらえなかっただろう台詞。ずっと、心の中だけにしまっておいた言葉。


 君と恋人になりたいんだ。


「ポッター……」


 するりと、マルフォイの腕が僕の首に巻き付いた。

 まだ服を着ていないから、素肌が触れ合う。
 しっとりとしていて。

 女の子みたいに柔らかい身体じゃないのに、その肌は僕に吸い付いて来るように感じた。


「ポッター……、僕もずっとそう思って居たんだ」


 そして、僕達は長いキスで誓いを立てた。












 あれからランチの時間にブランチを食べに行って、そのままマルフォイは帰った。
 マルフォイに直接届く手紙の送り先を教えて貰った。
 夢のような余韻を残しながら、僕は残りの休暇を消費して…………












091011