06














 僕達の関係はどうなってしまったのだろう………。

 マルフォイがおかしい。
 なんか変な魔法薬でも頭からかぶったんじゃないのか。

 あのプライドの高い、と言うよりもむしろプライドだけでできているようなマルフォイが、頭の固い純血主義とは一切相容れないグリフィンドールと馴れ合うはずなんか無いし、あまつさえ僕が好きだなんて逆立ちしたって有り得ないはずなんだ。
 ずっとそういう関係をあいつが僕に強要していたんだ。マルフォイが僕に敵意を向けていたんじゃないか。だから僕も君を嫌いなんだよ。って、ずっとそういう関係だったじゃないか。


 ロンだってハーマイオニーだってさんざん心に深い傷を負わされただろっ! マルフォイにあんなに怒っていたじゃないか。むかつくことを言われたら、ずっと僕達が慰めたりしていたじゃないか。僕も慰められて、そして友情の結束力は高くなったんだ! マルフォイに対しての感謝はそのくらいだよ。

 なのになんでそんな………。




 今僕の隣りでハーマイオニーとマルフォイが、一冊の本を中心に置いてなんだか意味不明な議題で討論会をしている。
 学年で主席争いをしている二人の知識レベルは同じくらいなんだから、あの二人について行ける奴はこの学年にはあんまりいないだろうから、ハーマイオニーも一向にわからないばかりでなく理解しようともしない知識不足の僕達と違って、マルフォイとなら高次元の話題ができて楽しいのかもしれないけど、聞いてるこっちはさっぱりわからない。疎外感。

 ロンは、再提出を申し渡されたレポートと睨めっこしている。時々悲痛な唸り声を上げて、時々頭を捻っていたりする。僕はなんとか免れたから、ロンを優しく温かく見守っていてあげている、そんな僕。
 ロンは僕と気持ちを共有してくれるはずだ! なんてったって親友なんだからな!
 やっぱり女にはわからないんだ。熱い友情は男同士で築かれるものなんだ!



「マルフォイ、ここちょっと訊いていいかい?」
「ああ。どこだ、ウィーズリー?」
「あらロン、そこは私が前に教えたじゃない?」
「ハーマイオニーはわかりにくいんだよ。難しい単語ばっか並べるからさ」




 …………裏切り者めっ!

 僕はロンを睨み付けたけど、ロンはきょとんとしていた。わかれよっ、親友だろっ! 僕の視線の内容ぐらい理解してよ!
 ハーマイオニーが憤慨してロンに何か言っている。馬鹿だなあ、あんな言い方したら怒るに決まってるんだから。しかもハーマイオニーのお説教は怖いし長いんだ!


「じゃあ、僕はもう行くから」
「あ、ポッター、僕も」

 何でだよ!

 ていうか……ついて来る気じゃないのか、もしかして。
 僕はマルフォイと同じ所に行く用なんかさっぱり無いんだから! 君がいるからここを離れたいだけで、別に行きたい場所なんかは無いんだよ。
 ついて来るなよ……。

「いつも一緒にいたスリザリンの人達はどうしたの?」

 マルフォイは最近一人でいることが多い。一人というか暇さえあれば僕達の所に来る。というか、僕に話しかけてくる。

「ポッターと一緒にいた方が楽しいから」

 出た。最近のマルフォイの攻撃技。この笑顔を向けられたら太刀打ちできるのはきっと僕ぐらいだ。

「………友達じゃなかったの?」
「ああ。僕がマルフォイだから寄って来た連中に愛想を振り撒く必要はないからな」

 マルフォイとして相変わらずの所も顕在するけど……。

 ただ……それにしたってマルフォイは気付いていないようだけど………スリザリンの人達の視線が痛いのですけど。
 ここ最近マルフォイは取り巻き達を遠ざけている。取り巻きさん達は何を言われたのか知らないけど、マルフォイの近くにはいないようにしているけど、マルフォイが見える場所にはいつも彼が連れていたスリザリン方々がこちらをすごい形相で観察している。


 ……というか、僕を!


 僕はなんにもしてない!
 僕はなんにも悪くない!
 あいつが勝手なことほざいていて僕に付きまとって来ているだけな事わからないのか? わかってくれ!

 僕が黙り込んだまま歩くとそのままマルフォイもついて来る。

「僕、部屋に戻るんだけど……」
「ああ。そこまで一緒に行く」
「………」

 ついて来るなよ、っての裏の意味を理解してくれ!

「僕に何か用?」
「仲良くなりたいって言ったろ」

 にこにこと。

 何で初めっからこうじゃなかったのかな。最初に出会った時からマルフォイがこんな風に、笑顔を浮かべて友好的に握手を求めてきたりしたら僕はきっと振り払うことなんてしなかったはずだ。

「どうやって、今更」

 今更なんだよ、本当に。
 仲良くなりたいって思うはずがないし、なれるとも思わない。

「手でもつないで歩けば満足?」

 僕は立ち止まって向き直って、マルフォイに手を差し出してマルフォイが得意とするニヒルな笑顔を作った。
 僕の嫌いな笑顔。
 あの顔をされるだけで腹が立つ。
 自分だけが優位に立っているって自信過剰な笑顔が本当に鼻につくんだ。


「……………」



 反応を伺えば、心なしか赤くなっている。
 怒らせたかな。
 怒ってくれればいいんだけど……。
 怒って、もうどっか行ってくれ。


「手を……繋いでもいいか?」




「…………………………」















071115