34(H)


















 ロンをつれて家に帰る。

 僕の家に誰かを連れてきたのは初めてだ。
 ここが僕の家なんだ。
 家、という言葉に少なからず僕は喜びを覚える。ずっと、欲しかったものだから。その器だけだとしても、僕はずっと欲しかった。それを、僕は自慢できるんだ。けっこう、立派なんだよ。
 僕の家を見たロンも素直に驚いてくれて、そして嬉しそうな顔をしてくれた。






 扉を開くと、いい匂いが漂ってくる。
 昼御飯を食べてから時間がだいぶたったから……あの後、僕がロンの娘へのプレゼントを一緒に選んで、食後に飲もうと思うワインなんかを見に行って、そんなことをやっていたから、そろそろお腹も空いてきた頃だ。

 最近は、ニコラスの顔を見ると想いが溢れだしそうで、なるべく一緒にいないようにしていたから、僕の想いを重荷に感じてほしくないから、なるべく遅くに帰ってなるべく彼と顔をあわせないようにしていたけれど……。
 ニコラスの作った料理は最高なんだよ。


 初めて僕は誰かを家に連れてくる、そのことも嬉しかったし、ニコラスを誰かに自慢できることも嬉しかった。

 ニコラスは連れてきたわけではなく、ここにいたわけだし……でもきっとニコラスに会っていれば僕はすぐに彼を家に連れてきただろう。
 もし彼が本当に家出をして、困っていたとしたならば、僕がここに連れてきたというニコラスの話も嘘ではないと感じている。きっとそれが事実なのだと、そう感じているけれど。
 彼は本当の事を話してくれないから……だから、僕は彼の事を何一つ知らないんだ。
 ただ、僕が好きな人というだけ。

 でも、それだけでいいんだ。
 きっと、他に何があっても、一番大切なことだから。




 僕はロンに早く僕の好きな人を見せたかった。
 見せびらかしたかった。

 ロンはなんて言うだろう。

 きっとまた呆れるのだろうか。




「ニコラス、ただいま」
「おかえり、ハリー」

 ニコラスがテーブルの上に読んでいた本を置いて、ソファーから立ち上がって僕達に向き直る。




 ニコラスが笑っていた。とても品の良い笑顔。緊張しているんだ、きっと。ニコラスが、知らない人だから。
 人見知りをする彼は、あまり馴染みのない人と会う時にこの笑顔になるようだ。何回か一緒に外を歩いてわかった。

 誰もが思わず見惚れてしまうような綺麗な整った笑顔。僕にはあまり向けられたことはない。でもそれは優越感に浸ることができるんだ。
 僕が特別に向けられない表情だから。僕には作り物じゃない笑顔をくれるってことだろう?





 だけど、いつもの顔と違う。



 作られたとは思えないくらい自然に笑うのに……。




 その笑顔が凍りついている、それがわかった。


 瞬きすらしないまま、僕の友人を食い入るように見つめていた。



 ニコラスは美人で、きっと驚くよ。


 ロンに、そう、言ってあった。


 だけど。


 だけど、今のロンの表情は、僕が想像していた驚きの顔とは様子が違った。





 何を?

 何か、変。驚いているときの表情だけれど。




 僕は違和感を覚えながら、それでもこの錆び付いた空気を壊したくて、口を開いた。



「紹介するよ、これが僕のホグワーツにいた頃からの親友の………」





「………ウィーズリー」



 ニコラスが、ロンの名前を………?

 彼は笑顔を変えることもできないようで、その声は震えていた。




















070731
ごめんなさい、ごめんなさい、短くて……限界もう寝なきゃ!