0(prologue) 神様ありがとう。 なんでだろう。触れているだけで気持ちがいい。 抱き合って、肌を寄せて、温もりを感じて。 それだけで、気持ちがいい。 不思議だ。 好きなんだ。 隣りにいてくれると嬉しい。 そばにいてくれないと息もできない。 抱き締める。抱き合う。 そのまま重力がなくなる。 心の奥深くから込み上げる。 全身から、想いが溢れるんだ。 あなたが好きです。 目が覚めた。 カーテンの隙間から差し込む光の強さからまだそれほど差し迫った時間ではないと考えられる。 布団から出ている肌に触れる室温は透明度か高く刺すように凍みる。今日は寒くなるかもしれない。 僕は布団に潜り込むと、中は僕の体温と彼の体温とで暖められたふわりとした温もりが僕を包んだ。 また、すぐにまどろみに溶け込める温度。 隣りに彼がいる……。 僕は指先で彼の輪郭をなぞる。 「………ん」 微かな声を漏らして、身動いだ彼はそのまま僕の身体に寄り添うように、体温をぴたりと合わせてきた。 昨晩は何度も身体を繋げて、そのまま眠ってしまったから……触れると直に体温が伝わる。それが嬉しい。 こんな風に、僕に甘えてくれるのが嬉しい。 寝ている時も、無意識でも僕を求めてくれていることだから。 僕はその気持ちを伝えようと、それでも彼を起こさないようにそっと、抱き締める。 好きだ。好きなんだ。 この瞬間が永遠であればいいのに。 ふと気付くと彼の綺麗な色をした双眸が僕を見ていた。 起こしたのだろうか? そう、思ったのだが……。 また瞼を閉じてしまったから………。 僕も………もう少しだけ………。 「なんだ、これは?」 「僕が出て行ったら開けて見てよ」 「開いたら蛇が出てくるとかか?」 「ドラコじゃないんだから、そんなことしないよ。それに驚かすなら見てた方が楽しいじゃん」 「じゃあ、一体なんだ?」 「……笑わない?」 「笑えるものか?」 「笑わないでね。これだよ」 「………指輪?」 「うん、おそろい」 「………………」 「なんか女々しいとは思ったんだけど、なんかドラコと一緒のものを身に付けたかったし」 「……………」 「こういうの嫌だったら持っててくれるだけで良いんだ」 「…………」 「けっこう、選んだんだよ。ドラコは繊細なデザインが似合いそうだけど、僕は似合わないし……だからシンプルな物になったけど……ドラコ?」 「………開けていいか?」 「うん」 「………少し大きい」 「ああ、やっぱりか。僕より小さいサイズにしたんだけど」 「あ、中指にちょうどだ」 「……………まあ、中指でもいいや」 「ハリー」 「なあに、ドラコ?」 「ありがとう」 「ドラコっ、ちょっと、泣かないでよ」 「泣いてないっ! ハリーは馬鹿だと思って呆れただけだ」 「じゃあ返してよ」 「嫌だね。もう貰ったんだ」 「じゃあつけなくていいよ」 「………しまった、外れない」 「え?」 「中指にはちょっときつかったからもう外れない」 「………ドラコ」 「なんだ、ハリー」 「大好き」 誤字:もう少し ⇒ 申す腰 070513 ⇒ |