この話は性的な描写が含まれます。
16歳未満、苦手な方はご覧にならないようにお願いいたします。


































暗黙1





















 物音が聞こえた。
















 今日、授業が終わってからすぐにクィディッチの練習があって、僕は部屋に戻らないでそのまま行ってしまい、更衣室のロッカーに宿題を忘れてしまった。


 明日提出なので、僕は夜就寝時間の迫る時間に練習場の脇にある更衣室に取りに行く。


 更衣室の扉を開けようとした時だ。


 中から声が聞こえた。






 何を言っているのかはあまり聞き取れなかったけれど、一つの少し高い怒鳴り声と、ぶつかる音。声は聞いた事があった。僕はこの声を知っている。





 そして、派手な音がした。


 ……就寝時間も近いこんな時間に何だろう。


 僕は、扉から離れて、そっと窓を覗いて見た。


 更衣室はロッカーが並んでいるだけで、その奥にはシャワールームがあるだけだからここから覗けるはずだ。

 なんだか厄介な事でも起きているのだろうか。


 少し中に入って宿題を取りに行ける状態なのだろうか。
 取り込み中だったりしたら、厄介ごとなどに巻き込まれたくない。それでも、僕はこのロッカールームに用があるのだし……。


 僕は更衣室の窓から、そっと覗いてみた。もし、本当に厄介なことだったら僕は早々に退散し、就寝時間が過ぎてからまたフィルチに見つからないようにこっそり来るしかない。それはそれで面倒なのでごめん被りたい。



 背が高い、男子生徒が二人。上級生だろうか。後ろ姿だったから、誰だか、どの寮の人なのかはわからない。ローブのフードまで被っていて……。




 他は……誰かが床に転がっている。
 その上級生と比べるとひどく華奢な肢体がが、ごろりと転がっている。




 殴れたのだろうか。だから、動けないのだろうか。

 仰向けに横たわり、腕で顔を覆っているけれど。

 明るい金髪が見えた。


 見た事がある。そう思った。


 僕は、知っている。声も、知っていた。

 彼をよく、知っている。
 僕の中ではどうにも大きな存在だ。







 何か、しないと。
 何とかしないと……。





 何をすればいいのだろう。



 何もする必要はないのではないだろうか。必要性の有無よりも、もしかしたら何かしてはいけないのではないだろうか。



 彼のシャツはボタンが弾けてはだけていて、そこからどきりとするほどに白い肌が覗いていた。
 白い肌に付いた赤い跡は、ひどく目立っていた。

 一体……。

 何とかしようと思ってはいたのだが、僕の体は動かなかった。
 何かをしないと、と……身体が鉛になったように動かない。


 助けてやろうなんて思えなかったから。そんなことを僕が思ってはいけない相手だったから。助けるだなんて、僕が一番彼にしてはいけない厚意だ。






 きっとこのまま死んでしまっても僕は構わない。そう思うべき相手だったから。


 だから……。


 このまま、見ないふりをして立ち去るべきか。それともこの場を止めに入って、彼を見下そうか。
 どちらが僕が取るべき行動なのだろう。
 僕は彼のために彼が一番傷が付く場面を選ぶ必要がある。


 宿題のことは諦めて帰ろうか。だが、今月に入ってすでに一度忘れているから、目をつけられているかもしれない。忘れる訳にはいかないのだ。

 僕が空気のようなふりをして中に入ってしまっても良いものだろうか。
 だが、これから起こる何かを僕が見ずに終るのは勿体のない気がした。
 彼の弱みを知ることができるチャンスがあれば、僕はそれを知らなければならない。そんな千載一遇のチャンスを不意になどしたら失望されてしまう気がした。



 とりわけ見たいものでもないが、だからと言って、立ち去ってしまえるほど気にならないわけでもない。


 ただ、少しだけ、僕以外が彼を打ちのめす様が、嬉しいはずなのに、気に入らなかった。
 彼に対して彼が嫌悪することは僕がするべきなのだ。


 彼とはよく喧嘩をする。殴り合いになることも、昔はそれほど珍しくはなかった。けれど。
 これは………。





 殴れているとはまた違うようだ。

 触られている。


 もう少しだけ、様子を見ようと思ったのだが。


 身体中を触られている。
 気に入らなくて彼を打ちのめしたいのであれば、触る必要などない。

 彼の腹に顔を近付けて……何をしているのだろう。

 彼の身体が、動く。
 ただ、自分の意志で動いている様には見えない。何の抵抗にもなっていない。

 一人が、彼の顔に手を伸ばして……キスをしていた。

 それはわかった。


 彼が、首を振る。
 それを押さえ付けて。
 キスをしていた。


 これは、何だ?






 一人は、彼のズボンのベルトを外し下着ごと一緒に脱がせていて……。

 白く細く、長い足。

 それを割り開いて、その間に顔を埋めた。

 ………。


 彼の足の間にある頭が、上下する。
 性器を口に含んでいる様だ。
 彼の腰が動く。さっきまでぐったりと沈み込むように倒れていたというのに。
 足が動く。
 足の指までぴんと伸びていて。手が、太股を撫でていた。

 抵抗、しないのか?




 僕は固まってしまった。

 何だ、これは。

 強姦?

 もし、そうだとすると、これは……。


 くぐもった声がここまで届いた。
 彼の目が大きく見開かれている。アイスグレーの瞳がそのままこぼれる様に、涙が一筋頬を伝った。
 その瞳を、一人が口付けている。

 それは、ほとんど恭しい態度だった。

 何だ、これは。


 僕がこれを見ていて良いのだろうか。

 窓の外にいるから、ほとんど何も聞こえないが、それでも彼の声は聞こえた。
 断続的に、無意味な声が続く。

 これは、僕が知らない。

 知るはずが無い。僕達はお互いに不可侵であるべきなのだ。だから、知るはずが無いのだが、それでも。





 気分が悪い。


 怒りが……どうしようもない物が、腹のそこの方にたまっているのを僕は無理矢理押し込める。









 彼の声が響く。

 耳を塞ぎたくなる様な。
 塞いでも入り込んできてしまう様な声が、響く。

 揺れていた腰が持ち上がり、足が伸びて、彼の口が開き、声は聞こえてこなかった。

 そして、床に沈む。


 彼が絶頂に達したのだとわかった。


 二人と比べると、よほど彼の身体が華奢なことがわかる。

 二人ともローブを着ていたが、素肌を晒した彼の倍近くの質量があるように思えた。
 彼の足の間から、ゆっくりと顔を上げた上級生の喉が上下に動く。彼が出したものを嚥下したのだろう。


 そのまま、彼の足を広げて持ち上げる。

 今まで顔を埋めていた所よりもさらに奥。


 そこに顔を埋めて……。

 その時、彼が初めて抵抗らしい抵抗を見せた。

 上体を起こそうとして、でももう一人に押さえ込まれる。必死に押し退けようとしているが、体格に差がありすぎて、何の役にも立っていないようだ。足も押え込まれている。

 後ろにいた上級生が、指を無理矢理突き立てたのだろうか、彼の背がのけ反って、悲鳴が聞こえた。

 悲鳴は、聞いたことが無いくらい悲痛なものだった。
 それから、彼は暴れ出した。
 無茶苦茶に動く身体を押え込むように、のしかかるようにもう一人が彼の身体を押さえ付けて、飲み込んでしまうようなキスをしていた。

 彼の抵抗が弱まってきたころ、下の方にいた上級生が身体を起こして、自分のファスナーを下ろした。

 これから何をするのか理解できた。


 ズボンの中から出て来たものは、すでに大きく反り返っていて、彼の足を抱えて、それを足の間にあてがっていた。


 腰が進んだ。



 悲鳴が聞こえた。




 キスをされて、そうやって押さえ込まれて、それでも彼の声は聞こえて来た。

 足がゆれる。

 揺れて……。

 足を割り開かれ、上級生の腰が打ち付けられる。その度に彼の声が聞こえる。

 動きが早くなり、それが激しいものとなって、そして止まった。
 上級生が彼の身体に被さるようにしてしばらく動かなかったから、彼の中に果てたのだろう。


 これで、終りかとおもっていたのだが。



 ずっと彼の唇に執着していた方と、場所を交替していた。

 彼の腿に血の筋が見えた。


 それでも、もう一人も彼の中に無理矢理侵入をして……。


 再び動き出した。


 また、彼の口から動きに合わせて声が漏れていたけれど。

 悲鳴ではなかった。


 もっと鼻に掛かった、甘ったるい声を。



 僕は………。



 ここで何をしているのだろう。



 彼の痴態を見て、これは役に立つのか?

 これを見たことで、僕は許されるのだろうか。


 僕の彼の中での立ち位置は、譲らずに済むのだろうか。

 彼は手を投げ出して、床の上で、もう動く力も無いのか、指が、動く。





 僕は……どうすればよいのだろうか。
 ここでただ見ているなんて……僕は彼に嫌われなくてはならない。失望されない為にも。












 彼の顔が、ふと。




 窓に視線が向けられた。





 僕のいる方。





 彼の顔が、驚愕に歪んだ。




























あの色使い、あっち系だよな
うん幻覚系


↑喫茶店で携帯で書いている最中に、近くに座っている人たちがしていた会話。
途中にいきなり入っていたから何のことだと思ったけど、思い出してよかった。
0704