18




















 彼を繋げたまま。

 まだドクドクと彼の中に流れ出ている。もっと……もっとだ。
 もっとたくさん彼が僕で満たされれば良い。僕で溢れればいい。
 君の全部が僕になればいいのに。



 僕は彼を繋がっているまま抱き締めた。

「……ハリー」


 僕はまだ少しも満足できていなくて、彼の中で確かな質量を失っていないから。
 彼は、少しだけ苦笑して僕の顔に手を添えた。

 だって、気持ちが良いんだ。

 君の中は本当に気持ちが良くて。



「ずっと、こうやっていられればいいのに」



 彼が僕の首に腕を回した。髪の毛の中に指を入れて直接僕の頭を撫でてくれている。







「お前は死んではならない」
「僕は死なないよ、生きて君を守るんだ」


 僕は死なない。


 君が、僕がいなくなることで苦しむのであれば、僕は何時までも生きている。
 君が死んでから、僕が死んであげる。
 でも、君がいない世界で僕が生きているつもりもないよ。生きられるとも思わないけれど。





「それは、矛盾しているよ」

 彼は、喉を震わせて笑った。

 そんなことは彼に言われなくても分かっている。
 それでも僕は決めたんだ。



「だって君が勝った時にもしまだ僕が生きていても、きっと僕は殺される」



 彼の胸に刻まれたマークが有る限り、僕が闇に勝った世界では受け入れられるはずがないことくらいは僕も分かっている。
 もし許されたとしても、その世界で君が生きたいと思えるとも思わない。

 彼は世界には興味はないけれど自分の立場を自覚している。
 何に対しても興味を持っていないのに、プライドだけはあるから。自分の立場に誇りを持って生きている。僕が復讐で固まって成り立っているように、彼も自己を成り立たせる要因がその誇りだから。それがなくなったらきっと生きてはいないだろう。


「ハリー……、僕は」


 彼は腕に力を入れて僕を強く抱き締めてくれた。



 泣かないで。
 その想いを伝えるために僕も君を抱き締める。

 君にはどんな形でもいいから笑っていて欲しいんだよ。君の望みは僕が全部叶えて上げるんだから。その権利を奪う権利は君にだってない。

「ハリー……っ!」

 彼の嗚咽を聞きながら、僕は彼をしっかりと抱き締める。
 ここにいて。
 僕の腕の中にいて。
 ずっと、君はここにいてくれれば、僕は絶対に君を不幸にさせないよ。


 無理な事は、わかっているんだ。
 でも、君に触れてさえいれば、僕の不安は少しだけ落ち着く。
 こうやっていれば……ずっと、こうしていられれば良いのに。










「………死にたくない」







「ドラコ…」




「死にたくないんだ。ずっとおまえとこうしていたい。死ぬ事が怖いんじゃなくて、死んでしまった僕をおまえが忘れることが怖くて……」




 大丈夫、君の事を忘れない。何があっても僕は君のそばにいるよ。君が死ぬ事なんてない。
 もし君が死んでしまっても僕は君を忘れない。忘れても何度でも思い出す。





「僕を忘れる事ができなくて君が絶望してしまうのも怖い」





 ああ、そうだね。
 君が死んでしまっても忘れる事なんかはできなくて、僕はきっと絶望してしまうだろう。
 君がいない世界は君のように僕にとってもなんの興味もわいてこないよ。もし君が僕以外に殺されたりしたら僕は世界を壊してしまうかもしれない。



 大丈夫。




 だから。




 もっと僕を必要として。

 君は僕の胸で声を上げて泣きならがら、僕にしがみついた。























 僕が君を守ってあげる。
 君の願いを僕が全部叶えてあげる。
























「愛しているよ」

































070506