一護が、僕の腰を掴んで……動き出す。
僕の内臓を抉るようにして彼の熱で僕の中を掻き回される。痛みは背骨を伝わり頭の芯の方まで伝わってしまったように、僕の思考が破壊される。
内壁が擦れる。熱い。擦れて痛い。熱くて、僕が内側からぐずぐずと溶けてしまいそうだ。
「はっ……あ」
身体の中にぎゅうぎゅうに彼が詰まって苦しくて、息が出来ない。苦しい。一護で僕の中が一杯になる。
「あ……ア…っ」
うねりの中に放り出されたみたいだ。どこに流されてしまうのか解らないように、僕がどうなってしまうのかわからない。僕はここに居るのに、どこに僕が在るのか解らない。
「ふ……は、ぁあ…ッ」
無我夢中で僕の口は酸素を取り込む。身体は勝手に生態を制御しようとしているけれど、上手く呼吸が出来ない。僕の自立神経すら乱される。
僕の全ての神経が、一護と繋がっている場所に収束している。そこだけが僕の全部になっている。
今、一護と繋がっていることだけが全部になっているどこか欠落した僕はそれでも完結している。
世界が狭くなる。
ここしかなくなる。
集約された世界には、僕と一護しかいない。
熱くて。
苦しい。
助けて欲しくて、僕は手を伸ばす。
と、その手を、一護が握った。
僕の手を、彼の手が包み込んだ。
「雨竜」
指先を口に含まれて、温く濡れた感触に身を震わせた。
「俺の事、忘れんなよ?」
「……な、に?」
一護の言葉。
忘れるなって……何を言っているんだ?
忘れるだなんて、できるはずない。こんな事をされて……僕に、こんな快感を刻み付けた彼を、忘れるだなんて、そんな方法があるなら教えて欲しい。忘れられるなら、今すぐにでも全て忘れてしまいたい。
「お前だけは、俺の存在を覚えていろ」
命令の口調でも高圧的な態度で、それでもどこか、彼らしくないとは思った。
尊大で傲慢な一護と、少し違うだなんて……そんな事を思ったのは、僕の思い過ごしだろうか。
「……あぁっ!」
深く抉られて、身体が跳ねる。
脳髄が破裂するような感覚に、僕は叫んだ。ここがどこかだなんて、もう僕にはどうでもいい。早くこの熱から逃れたい。だから、もっと……もっと僕を壊して。
「呼べよ。俺を」
「……あ、ふ……あ」
身体の中に感じる質量が、固さを増した。きっと沸点に近いような温度が僕の中に在る。
「呼べって」
「、……ちご……」
全身で、僕は彼を感じた。僕の中に、一護が居る。
「もっとだ」
「……いち、ご」
腰を打ち付ける速度が、早くなる。僕の中に一護が刻み付けられる。
「もっと、俺を呼べ!」
「一護……っ!」
弾けた。
ように、僕の中に、熱が放出された。身体の中に熱い飛沫を感じた。
その熱に誘導されて、昂った僕も吐き出した………。
腹に、自分が吐き出した温い滑りが飛び散る。
全身が、痙攣する度に、先端から溢れて来る精液は、情けないほどに僕を濡らした。
……動け、ない。
疲れてしまって、ぐったりと机の上に投げ出した身体を自覚しているのに………。
また……こんな、場所で。急に、僕は僕を意識した。
中にまだ彼が在る。繋がっている場所はまだ痛みも感じるのに……急激に世界が僕の中に飛び込んできた。見たくない。視界から入る景色を認識する事ですら、疲労を感じて、僕は目を閉じた。
「……雨竜」
そっと、彼が、僕の頬に手を添えた。
まだ、繋がっているから、一護が動くだけで、刺激を受ける。冷め始めているけれど、達したばかりの身体は、少しの刺激で震えた。
「雨竜……俺を見て」
見ろ、じゃ、なかった。
「………?」
そっと、目を開くと、一護が、いた。
黒崎じゃない。
あいつじゃない。
もっと、痛い。
黒い、人間ではない、瞳が僕を見ている。これは一護だ。
でも、何よりも一護だ。目を閉じても僕にならわかる。
黒崎は、押し付けがましい包容力で、温もりすら感じてしまうような、そんな自分勝手な厚意のある霊圧なんだ。
一護は……痛い。
霊圧に触れるだけで、ぴりぴりと痛い。鋭利で針のように皮膚が痛い。攻撃的な霊圧をしている。
今、僕の頬に触れているのは、一護……。
なのに………。
「一護?」
「雨竜……お前は、お前だけは俺を忘れないで」
そう言って、僕の髪を撫でた一護は、
とても寂しい目をしていた。
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20110420