白亜の闇 16








 とん、と一護が僕の肩を押した。
 大した力ではなかったけれど、限界まで登り詰めていた僕の身体は、重心すら失っていて、それだけで机の上に倒された。


 背中に当たる机は、ひんやりと冷たい。


 彼は僕の片足の膝裏に手を入れて持ち上げた……足を大きく広げられている。もともと抵抗する気力は全て折られてしまっているから……見られている。


 こんな情けない格好をして、僕は、恥ずかしい場所を見られている……。



 視線に質量を感じた。
 だって、熱く、なったんだ。


 後ろの………。


「やっ……!」

 入り口を、指先が触れた。


 さっきまで、僕が口に含んでいた、一護の、指。

 ぬるりと、した。入り口を指先が押しているのを感じた。



「ひっ……!」

 その指が、僕の身体の中に、沈んだ。


「……ぁ……んっ」


 指が、中に入ったり出たり、抜き差しされている。ぬるぬるしている。さっき、僕が舐めていたから……。

 入り口を、広げるように、中を探られて……内壁を、指先が擦る。



「なあ、雨竜」

 一護は、とても優しい声を出した。



「この前は、痛かった?」

 声だけなら、まるで優しい人格をしていると勘違い出来るほど、一護は優しい声を出した。




 その声に誘われるように僕は記憶を辿る。思い出したくもないのに、僕はその声に誘導されて、この前の事を目蓋の裏に再生する。この前は………。

 痛かった。痛くて、苦しかった。怖かった。


 覚えてる。
 ちゃんと、覚えている。

 大きな波が翻弄して、津浪のように僕の意識を全て浚って行った。全ての感覚器官は収束されて蹂躙された。


 苦しくて。呼吸もうまく出来なくて。


 僕は、全部飲み込まれた。
 その感覚を覚えている。忘れられるはずがない。忘れたくても忘れられない。怖くて、独りで居ると思い出して震えが止まらない。怖くて、身体中が熱くなる。




「今度は気持ち良くしてやるからな」

「あっ……ん」



 二本の指が、侵入してきた。中でばらばらに動くから、無意識に一護の指を締め付けた。

 足りない。


 もっと、強い刺激が欲しい。

 こんなんじゃ、ちっとも足りないんだ。


 さっき、寸前で止められた熱はまだ燻っている。



 中を探る一護の指は、的確に僕の弱い部分を捉えていたけど……それでも、射精出来るほどの刺激にはならなかった。


「ああ、でも……雨竜は」


「あ……」

 ふと、指が、抜かれた。




「痛い方が好きなんだっけ?」


 次の瞬間。

 一護ので、突き入れられた。


「ひあっ……!」




 圧迫感。


 指よりも、より大きな質量と、熱量が、僕を一気に貫いた。


 刺激は、背筋を登り、脳で破裂した。



 身体中が、強張って……。

 僕は、吐き出した。


 熱い精液が、僕の腹にかかる。

 全身が、びくびくと痙攣した。

 意識が、弾けて……急降下した。垂直自由落下して、地面に叩きつけられたような……全身で衝撃を受けた。



「すげ。お前、入れただけでイっちまったんだぜ?」


 一護の声が、遠い所で聞こえた。


 全身が、動かない。

 重力が僕を縛り付けて、指先すら、思うままに動かせない。



「……あ…」

 ずくり、と、僕の中にいた一護が動いた。


 中が、熱い。


 熱くて………。

 熱が、また広がる。


 達した直後だったから……全身がぴりぴりする。空気の接触ですら、僕の皮膚を刺激している。










20110420