とん、と一護が僕の肩を押した。
大した力ではなかったけれど、限界まで登り詰めていた僕の身体は、重心すら失っていて、それだけで机の上に倒された。
背中に当たる机は、ひんやりと冷たい。
彼は僕の片足の膝裏に手を入れて持ち上げた……足を大きく広げられている。もともと抵抗する気力は全て折られてしまっているから……見られている。
こんな情けない格好をして、僕は、恥ずかしい場所を見られている……。
視線に質量を感じた。
だって、熱く、なったんだ。
後ろの………。
「やっ……!」
入り口を、指先が触れた。
さっきまで、僕が口に含んでいた、一護の、指。
ぬるりと、した。入り口を指先が押しているのを感じた。
「ひっ……!」
その指が、僕の身体の中に、沈んだ。
「……ぁ……んっ」
指が、中に入ったり出たり、抜き差しされている。ぬるぬるしている。さっき、僕が舐めていたから……。
入り口を、広げるように、中を探られて……内壁を、指先が擦る。
「なあ、雨竜」
一護は、とても優しい声を出した。
「この前は、痛かった?」
声だけなら、まるで優しい人格をしていると勘違い出来るほど、一護は優しい声を出した。
その声に誘われるように僕は記憶を辿る。思い出したくもないのに、僕はその声に誘導されて、この前の事を目蓋の裏に再生する。この前は………。
痛かった。痛くて、苦しかった。怖かった。
覚えてる。
ちゃんと、覚えている。
大きな波が翻弄して、津浪のように僕の意識を全て浚って行った。全ての感覚器官は収束されて蹂躙された。
苦しくて。呼吸もうまく出来なくて。
僕は、全部飲み込まれた。
その感覚を覚えている。忘れられるはずがない。忘れたくても忘れられない。怖くて、独りで居ると思い出して震えが止まらない。怖くて、身体中が熱くなる。
「今度は気持ち良くしてやるからな」
「あっ……ん」
二本の指が、侵入してきた。中でばらばらに動くから、無意識に一護の指を締め付けた。
足りない。
もっと、強い刺激が欲しい。
こんなんじゃ、ちっとも足りないんだ。
さっき、寸前で止められた熱はまだ燻っている。
中を探る一護の指は、的確に僕の弱い部分を捉えていたけど……それでも、射精出来るほどの刺激にはならなかった。
「ああ、でも……雨竜は」
「あ……」
ふと、指が、抜かれた。
「痛い方が好きなんだっけ?」
次の瞬間。
一護ので、突き入れられた。
「ひあっ……!」
圧迫感。
指よりも、より大きな質量と、熱量が、僕を一気に貫いた。
刺激は、背筋を登り、脳で破裂した。
身体中が、強張って……。
僕は、吐き出した。
熱い精液が、僕の腹にかかる。
全身が、びくびくと痙攣した。
意識が、弾けて……急降下した。垂直自由落下して、地面に叩きつけられたような……全身で衝撃を受けた。
「すげ。お前、入れただけでイっちまったんだぜ?」
一護の声が、遠い所で聞こえた。
全身が、動かない。
重力が僕を縛り付けて、指先すら、思うままに動かせない。
「……あ…」
ずくり、と、僕の中にいた一護が動いた。
中が、熱い。
熱くて………。
熱が、また広がる。
達した直後だったから……全身がぴりぴりする。空気の接触ですら、僕の皮膚を刺激している。
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20110420