初めて会った時に、女神様かと思った  19 




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 うっとりとなるような深い口付けを受けて意識ばかりでなく身体までが融けてしまった俺を、土方は軽く転がした。

 何をするのだろうかと思わないわけではなかったが、ようやく唇を離されて体内に薄くなった酸素を、経口摂取していたら、突然、うつ伏せのまま俺の腰を高い位置に持ち上げられ、そのまま、着物を捲られ……下着を脱がされて……なんて格好をさせるんだ、こいつは!

「っ! 土方」

 尻を突き出すような自分の格好に羞恥を感じて、なんとか土方から逃げ出そうとしたが、腰をがっしり掴まれていて、さらには前を握られていて、身動きが取れない。
 自覚はあるのに、身体は俺の意思を反映せず、抵抗すらできないなんて。


「ひっ、あ……」

 尻にぬるりとした感触が這った……舐められている……? 俺の想像が、正しければ、この感覚は、土方の、舌だ。
 そんな、場所……口にするような場所じゃない!

「土方っ! 何を」
「いいから黙って俺を感じてろ」
 黙れ、だと? 誰にものを言っているんだと、怒りを感じないわけではないが。

「土方っ……あぁっ!」

 唾液で湿った穴に、指がぐりぐりと入って来る。


「いっ……あ、ぅ……い、た」

 尻の穴に、唾液つけながら、土方が中に指を侵入させていった。
 少しずつ、指が中に入ってくる。俺の中に、土方が、入っている……。
 土方がわざととしか思えないような音を立てて、舐めている。ぴちゃぴちゃという音の卑猥さが耳を犯す。意識は酩酊していうのに、感覚は鋭敏になっている。
 体の中を指が這う感触は、言い表しようがない。先日の男に続き二度目だとは言え、先日の男は、その存在自体が、感触としての嫌悪を上回っていたから、どんな感じだったかはあまり覚えていないが……思い出したくもないが……、今土方の指が俺の内部に侵入しようとしているのは……。

 不快、とも違う。気持ち悪い、と思う以上の羞恥だった。そんな場所を、と。
「……っ……ん」
 土方の指が、中に侵入し、俺の内側を撫でる。

「んっ、あぁ! や……土方っ……あっ、あぁん」
 ふいに土方の指が掠めた、身体の中に……脳に届くような刺激があった。

「ん、ここか?」
「あっ…や、あぁっ…やっ…土方っ」
 土方が執拗にそこばかりを攻めて来る。指の腹で何度もその場所ばかりを刺激されて、身体中から力が抜けて行く。

 何だ、この感覚は……。
 前も握られてしごかれている……俺は、逃げ出す気力すら起こらなくなってしまう。

「やっ…あ、あぁっ…ん」
 これは、俺の声か? なんでこんなはしたない声を上げているんだ?
 そもそも俺は、男と、ましてや真選組などと恋愛関係になるつもりなどないと言いに来たのではなかったか?

 そんな危ない橋を渡るのは御免被る。自分が今の時世で何をしているか解っている。相手が敵だと解っているはずだ。そう、この男に伝えに来たはずではなかったのだろうか……。

 なんでこんな事に……どこからだ? 俺はどこから間違えた?
 もし、いままでのこの無駄にしかならない俺達だという間柄での出来事が、土方の奸計であったのであれば、俺は完膚無きまでに完敗だ。隙を見つけて、と言うのであれば、今以上に丸腰のタイミングなどない。
 就寝時すらも殺気にだけは気付く俺が、こんなに無防備な状態をこの男にさらしているんだ、手錠をかけられたとて抵抗すらできない。今なら刀などなくとも、握力さえあれば俺を殺せる。

 俺が今、どんな、危険な状態であるか解っている。

 この男は嘘など吐けるような男ではない。違う。本心だ、解っている。さっきの鼓動がわざとであるはずがない。解っているからこそ……。

 纏まらない。意思がどうにも定まらず揺らぐ。解決案や打開策も無い。



 ただ、俺はこの熱に強欲になっている。土方の体温に安堵を覚える。それだけは今の確証ある確信。

 もっと……触れて欲しい、などと……。 

 俺は……俺は、桂小太郎だ。




「そこまでだ! 土方、やめろ」

 違う。
 俺達は、欺く間柄ではあるが、互いに陥れる事はあったとしても、肌を重ね快感を共有し合う仲などでは決して、ない。

 だから……もう。やめよう、と……

「桂……?」
「もう、やめてくれ」
 そうでなければ、俺達のアイデンティティ云々が崩壊してしまうような気がする。いや、二人であっている時点でそんなモノなどなくなってしまっていたのかもしれないが。

 土方の、顔は見れなかった。傷付けたくはないと思った。そんな事ができない事は理解していても、この男を傷つける覚悟が俺には足りていなかった。
 でも……。

 いい加減にしないと、これ以上は傷口を広げるだけだ。傷口を広げて化膿して、壊死してしまう前に、どうにかするべきなんだ。




「やめろって言ったって、てめえだってこんなに感じてんじゃねえか」
 土方は、突然俺のを強く握った。

「ひっ、あっ!」

 ぐり、と、また中を刺激されて……俺は………。

「や、あ………っ!」



 意識が上昇し、脳のもっと奥の頭上で世界が弾け散るような瞬間を迎え…………達した。








20121215