ヅラの手を引っ張ってきて、森の中のでかい樹に押し付けた。
さっきまで居た外は、風が身を斬るように冷たいと思った。今は風が吹いているのも感じない。身体が熱かったせいもあるだろうが、それ以上に頭ん中が真っ赤だった。
乱暴にヅラを樹に押し付けて、逃げらんねえように、両方の手首握って、握った手首を樹に押し付けた。
視線すら、俺から逃げらんねえように、ヅラの顔を数センチの距離でにらみつける。正面切って、俺を全部ぶつけたくなった。
両手首押さえつけて逃げらんないようにして、全部、俺を、今俺が何を思って、どう感じてるのか、自分自身でもごちゃごちゃで、言葉でなんて表現できなかった。
だから、俺をそのままぶつけた。無理矢理ヅラの口を食うようにキスした。そうすることでしか、今の俺を伝えられなかった。他に妥当な手段なんて見当も付かなかった。
「んッ……銀時っ! やめ……っ」
顔を背けながら拒絶を示すヅラに、何より怒りが沸いた。ヅラの細い手首に、俺の手から逃げようと力が入ったから、俺はそれ以上の力でヅラの手首を握った。このまま折れてもいいってくらい、握った。
「黙れよ」
ヅラの口を追いかけて、塞ぐ。首を振って逃げた唇を追って、また重ねた。
「っ……銀時、待て」
「嫌だね」
また、口を塞ぐ。身体をヅラに押し付けて、反撃の余地も与えさせない。呼吸が苦しくなったヅラが口を開いたから、その隙に舌をねじ込んだ。口の中で逃げる舌を追いかけて、引きずり出して噛み付いた。
お前を、誰の物にもさせるつもりなんかない。
俺のもんにだって、きっとなんないんだろう。結局俺の望みはこれで叶ってるんじゃねえか? 俺を好きだっていって、結局どうせそんな範疇に収まれるわきゃねえだろ? どうせてめえはてめえなんだ。
ただ単純に感情は俺に向けられているのかもしれないけれど、ヅラは俺のものになる事なんて無いんだろう。
だって、結局、お前はお前だろ? 誰よりもお前はヅラだろ? 悔しいけど、それは俺が一番良く解ってやってる。
んで、お前は俺が好きなんだろ? 好きだって言いながら、てめえはどうせ誰のもんにもなるつもりなんかねえんだろ?
矛盾しているようで、こいつにとっては何も不思議じゃねえだろう。
俺が好きなんだってな? 俺が好きだって言うなら、こうされたかったんだろ? ワケわかんねえ。ヅラが。何より、俺が。
両手首を湿った冷たい樹に押し付けて、深くキスして、息継ぎの余裕なんか与えてやんなかった。呼吸なんてさせてやんねえ。酸素よりも俺で身体中充満しちまえ。そんなことを思った。そのくらいのキスをした。
苦しがってくぐもったうめき声が、今の俺には心地よかった。息切れしそうになって、荒い呼吸を隠すつもりもなく、俺はただヅラの口を食った。柔らかい唇が唾液でぬるりとして、初めて合わせた口の中の粘膜の滑らかさに感動して、絡める舌の動きに興奮した。抵抗してた細い手首が暴れるのを押さえつけて……。
逃がさねえって思った。
唇に噛みついて、舌を引きずり出して絡めて、唾液を混ぜて、苦しそうな息も全部俺が食いたくなった。
「ふッ……んぁ」
粘膜で触れ合って、俺達がこうやって触れ合って、結局、何が変わる?
どうせお前は綺麗なままなんだろ?
俺が滅茶苦茶に汚したって、このまま俺がヅラを犯しても、何人もの死体の山の上に立ったってどうせてめえは……。
それがどうにも憎らしくて、俺はますますヅラの口を食うようにキスした。
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20110518
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