目を開いた。そのまままた落としてしまいたくなる眼蓋を、それでも頑張って持ち上げる。
そのままぼんやりと部屋を見渡すと、部屋の中は薄暗い……もしかして、まだ寝ててもいい時間なのだろうか。休みの日は、できれば寝ていたいけれど……
布団の温もりは手放しがたかったけれど、そろそろ起きようか。
何時だろうかかと枕元の時計を見……十時。
「……十時」
十時……か。
いくら休日だからって、目覚ましをセットしなかったとはいえ、それにしてもよく寝てしまった。
十時……今日は洗濯をして、借りていた本を図書館に返しに行って、日用品、洗剤とかの買い出しをしようかと思っていたのに……。
せっかくの休みだ、他にも色々とやりたい事はある。平日は学校があるから帰ってくると暗くなってしまっているので、休みの日でいいやって思って後回しにしていたベランダの掃除もしようって思っていたのに……他にも、ヒマワリソーイングに足りなくなった色の糸を買いに行きたいし……。
「何だよ、起きたのか?」
急に声をかけられても、僕は驚かなかった。
ぼんやりと声のした方を見ると、僕の横に寝ていたはずの黒崎が台所からペットボトルのお茶を持ってきた。
ああ、そうか、昨日遅かったから、だからこんな時間まで寝てしまったのか。
黒崎が、昨日も泊まった。だから、よくある事だから僕はもう驚かないけど、いつの間に起きたんだろう。こんな時間になる前に教えてくれてもいいのに。
「おはよう。起きていたんだね」
「ああ。まだ寝てていいぞ」
「いや、もう起きるから」
「いいって。寝てろって」
「何でだよ」
さすがに、十時だし。起きるよ。やりたいこともある。
「どうせ雨降ってるし、やることねえだろ?」
「……雨」
「ん、けっこう降ってる。天気予報だと、今日夕方までずっと雨」
そう言えば、部屋は薄暗かった。叩きつけるような激しい雨ではないようだが、普段よりも音が篭るような気がする。十時にもなっているのに、カーテンはまだ引かれていて、その隙間から覗いた外は、昼だと思えないくらい暗い。
「………雨、か」
雨だったら、どうしよう。やりたい事、いろいろあったのに。
洗濯は……雨が降ってるなら部屋干しにしようか……でも、この季節じゃ、なかなか乾かなくて、すぐに生乾きの匂いがしてしまい、結局洗い直すことになりそうだ。溜まってない訳じゃないけど、洗濯機に一杯になってしまったほどでもないし。
図書館にも行きたかった。本は読み終わったけど、返却期限、まだだったよな……でも、読む本がなくなってしまう。
洗剤もあと一週間は余裕でもつし……安売りのチラシを見たから、買いに行っておきたかったけど。
あ、お米はもう無いや。パンでもいいけど……。
「まだ寝てろって」
「なんでだよ」
「俺も寝るからさ」
「だから、何でだよ」
布団を捲り上げて、僕の隣に潜り込んでくる黒崎を仕方なく僕の布団の中に受け入れる。
狭いシングルベッドは、高校生男子が二人も寝れるほど広くはない。だから、必然的にくっついてしまうから、僕は嫌いではない……夏場以外って限定だけど。
「だから、雨だろ?」
どうしようかな。
予定が崩れてしまった。
図書館にも買い物にも行けないわけじゃないけれど……明日でいいか。今日が一日雨なら、この感想した時期の空の貯水量はきっとそんなにないはずだ。きっと明日は晴れる。
「雨……憂鬱だね」
困ったな。
今日はどうしよう。外に出たくない。面倒。濡れたくない。そうすると、やろうと思っていたことができない。
「そっか?」
「嫌じゃないの? 何もできない」
予定は全部来週にくりあげだ。洗濯物も、明日でいい。そう決めてしまったら、もう今日は何もやることがない。
「雨だから、何もできねえから、お前とこうしてごろごろしることできるだろ? 俺はは雨好きだぜ?」
「……」
そんなことを言われたら、今日は本当に何もする気が起きなくなってしまうじゃないか。
了
20130309
1500
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