「どうすりゃいい? どうすりゃ認めてくれる?」
そうでもしてくんなきゃ今、放せない。
俺の我が儘だ。無茶な要求通そうとしてる自覚だってあんだ。
好きだって、俺とお前と同じ気持ちになることができないならせめて、俺が好きだってそれを認めてくれ。それだけでいい……だ、なんて。
「黒崎……」
「好きになって欲しいんだ。お前が俺の物であってほしい。誰にも渡したくない。俺のじゃなけりゃ、嫌なんだ」
綺麗事言ったって、収まらない。気持ち知ってもらっただけじゃ、どうせ駄目だ。
お前に好きになってもらわなけりゃ、嫌なんだ。
俺、すげえ我が儘言ってる。無理だって言われてんのに、おさえらんねえ。駄々こねてるだけじゃねえか、俺。
みっともねえ。
だけど嘘じゃない。みっともなくても、情けなくても、石田にすがりついて、泣き喚いてもいい、それでもお前の心が欲しかった。
だから、無理なら……俺の気持ちすら重荷になるなら……苦しい。苦しくて、痛くて、潰されそうになる。
「黒崎……やめてくれ」
石田が泣きそうな声になってる。困らせてんだ、俺がお前の事困らせてんだ。友達だって思ってたやつに、こんなことされて、こんな事言われて、それは重大な裏切りなんだろう。
でも、俺は留め方なんてわかんねえ。
ストッパー、どっか行った。
石田のこと抱きしめて、俺の腕の中に閉じ込めて、そうやって……
笑ってて欲しいだなんて偽善的な事思いながら、俺で困ってるのが、嬉しかった。お前が俺の事考えてんのが嬉しかった。
今、お前は俺のこと見てる。
石田は今俺のことしか考えてない。俺だけで、いっぱいになってる。俺が困らせてるから……
「悪い。だけど、無理。お前の事諦めんの無理」
「……どうして?」
そんな事、こっちが訊きてえ。でもお前なんだよ。石田じゃなきゃ駄目なんだ。
「お前が、時々辛そうな顔するから……笑わせてやりたい。でも、それは俺じゃなきゃ駄目なんだ。俺がお前を護りたい」
だから………
「黒崎……変なことを言わないでくれ」
「それ、無理」
「だって、違うんだ。僕が、君を護りたいんだ」
「……石田?」
今?
なんてった?
「……あ、だから」
石田が今、何て言ったのか、もう一度聞きたくて、覗き込んだ石田の顔は……真っ赤になってた……。
赤くなって……だから、もしかして、今の聞き間違い、じゃない?
どっかから俺がなんか変な妄想で幻聴聞いちまったわけじゃねえ、よな?
今、お前が俺を護りたいって、言ったよな?
俺のことが嫌いじゃなけりゃ、そんな事思わないよな?
「石田……」
石田は、こんな至近距離で見てんのに、それでも視線を下げることで俺の視線から逃れようとしたから、俺は石田の頬に手を添えた。
「石田? お前が俺の事、どう思ってんのか教えてくれ」
石田の目を真っ直ぐに見た。逸らすなんて赦さねえって気合いで、石田の目を真っ直ぐに見た。痛みが伴うくらい、強く石田のことを見た。
逸らすのも、誤魔化すのも赦さねえ。
「僕は……」
「石田……頼む。教えてくれ」
もし……お前の気持ちを手に入れる可能性が1%でもあんなら、諦めねえ。たとえ一ミリも無くたって、それでも百%無理じゃなけりゃ、諦めるつもりなんか最初から無かったんだ。勝てない勝負だって勝ってきた。諦めの悪さは、誰よりも強い自信あんだ。
「僕は……君が大好きだよ。黒崎が好き」
………石田が……。
俺を好きだって言った。
耳まで赤くして、ちゃんと俺の目を見て、石田が俺を好きだって……。
嘘、じゃ、ねえよな。
「石田……だったら」
俺が、好きなんだろ?
石田は、俺のこと好きって……?
何でそんなに悲しそうな顔すんの? 笑わせてやりてえって、そう思ってるのに、俺はなんで石田のこんな顔見てんの? 一緒に俺も泣きそうなんだけど……
「だけど、僕は嫌い。だから……僕じゃ駄目だ」
あ?
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20130125
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