足に氷が触れたのかと思って、すんなり眠りに落ちる寸前だった俺は飛び起きた。
冷たかったのは、当然氷なんかじゃなく……隣で寝てる、石田の足。
石田のうちで、石田の狭いシングルベッドで俺に背中を向けて寝てたはずの石田が、なんか俺の肩に顔を擦り付けるようにして、すり寄ってきてる。
そんで、石田の冷たい足も、俺の足に絡んでくる。
何だ?
コレは一体何のハプニングだ?
こいつ寝付きが悪いし、俺は寝つきが悪い方じゃない。寝起きは悪い方だから、寝顔を見た事がないわけじゃないけど、いつも俺が寝る前に石田が寝る事なんかないから、いつもみたいにまだ起きてんのかと思ったけど……でも微かだけど、寝息。
……寝てるし。
いつも石田から近づいてくることなんかないのに………。
キスだって俺からばっかで石田からしてもらったこと、ない。
だから、布団に入ってもこんな風にすり寄ってくるなんて……今まで、なかった、はずだ。石田から俺になんかしてきたなんて、数える程しかないから、俺ばっか好きで悔しい気持ちもあったってのに……。
まあ、土下座する勢いで拝み込んで、断りきれない状況作って、恋人になってくれただけでもやっぱり嬉しい。必死で頑張った成果が上がって、だから今こうやって一緒に寝ることができるようになった。だから、俺ばっか石田が好きなのは仕方ない。別にそれでもいい。
石田が俺のもんに収まっててくれるだけでも満足だけど。
やっぱり、好きになってもらいたいってのもあったから……。好きになってくれてるって知ってるけど、もっと好きになって欲しいって、欲張ってるから。
なんか……嬉しい。
こうやって石田が抱きついてきてくれて嬉しい。
だって、寝てるって事は無意識だろ? 無意識で俺に抱きついてきたって、石田ってやっぱ俺の事好きなのか……とか、実感。
そんな幸福に一人で興奮しそうになったけど……
俺のシャツ握る石田の手が、滅茶苦茶冷たかった。
何で寝てんのに冷たいんだよお前っ!?
そんな冷え症、いい加減にして体質改善しろって思うけど、俺と違って栄養バランスにも気を使って飯作って、ガキの頃から修行してたコイツに今更何を勧めていいんだか。平均的な俺たちの年齢だと、身体は化け物みたいなレベルだと思う。
それで何でコイツは冷え症なんだ? 冷え症なんか運動不足とかが原因じゃねえの?
まったく……。
どうせ、こんな風にすりよってくんの、寒いからってだけかよ。
俺が冷たかったら寄って来ないんだろどうせ。
ムカつきつつも……でも嬉しい……のが悔しい。
くっついてくれたの、嬉しい。
俺の隣で寝てくれてるの、安心してるからだろ?
ったく。
手も足も冷えてんじゃねえかよ。
石田抱き寄せて、腕の中に閉じ込めて。
俺の体温欲しいなら、やるよ。
俺でいいなら、暖まれ。
他の温度なんか知らなくても良いから、俺の温度はちゃんと覚えておいてくれよ。
せめて俺といる時くらいは、暖かくなって、いい夢見てくれって、願った。
実際寒い日が続いて、俺も毎日石田のうちに泊まれるわけじゃないから、毎日こうやって一緒に寝れるわけじゃねえし、毎日抱き締められるわけじゃない。
起きてる時なんか、お前から近づいてくることなんかないし。
寝てる時だけでもいいや。
俺の体温だけが目的でもいいって。
いい夢見ろよ。そん中に俺が出てくりゃいいな……。
好きだとも言ってくんないし、キスもしてくれたことないけど、かなり淡白で、屁理屈ばっかの石頭で、風が吹けば折れそうなくらい細い色気もねえ奴だってくらい、俺だって解ってるけどさ。俺だって何で石田だって思う事も良くあるけど。
こうやって甘えてくる石田が、可愛くて仕方ない俺はかなり末期。
→石田ver
20120315 |