以下の文章には性的な表現が含まれます。18歳未満の方、苦手な方の閲覧はご遠慮ください。
「黒崎……何笑ってんだよ」
「いや、なんか。お前の事、初めて抱くみたいだって思って」
何度もやったけど、でもなんか……石田って確かにこういう奴だし、石田だったら、こういう反応するんだと思う。だから、何か……初めてじゃねえのにはじめてな感じがした。
それに、俺も男なんで、やっぱりされるよりもしたい方だから。
血を飲んで積極的な石田も良いけど……こうやって俺が主導権持たせてもらうのも、なかなか……というか、むしろ。
「何だよ、それ?」
「うん。お前の事、やっぱり好きだなって思った」
「………」
好きだって、想いが届いてない時はあんなに重たい一言だったのに、石田が受け取ってくれるってわかったら、何の抵抗もなく口から出てきた。いや、やっぱちょっとは恥ずかしいような気がするけど、それでも伝えたい気持ちと天秤にかけたら言いたい方が、はるかにでかい。
それに……こうやって、見る間に赤くなる石田が愛しくてさ。
気持ちを態度で表現するなら、抱き締めて、キスして、何度もキスして、それでやっぱりもっと深いところで繋がりたい。
二人で、同じ体温共有したい。
「いい?」
「…………うん」
石田の事優しくして、すげえ大事にして、俺が居るってそれを全身で解らせてやりたくなった。俺はそれをどうしても石田に伝えたい。
お前には俺がそばに居るからって、身体にも刻み付けてやりたくなった。面と向かって言ってやってもいいけど、きっと言葉なんかよりももっと確実だと思う。
時間かけて中を解してから、中に入って、繋がって。
苦しそうだけど、俺が心配になって訊くと、それでも大丈夫だって、そう言って石田が笑ってくれた。
「石田……大丈夫か?」
ちょっと、辛そうにしてたから、顔にかかる髪を払い、石田の顔をのぞいた。
「うん……大丈夫。気持ちいい」
好きだって、思う。
「好きだ」
「うん」
「本当に好きだからな!」
「解ってるよ」
「お前は?」
言いたくないのか、石田の手が背中に回って。
まあ、コイツらしいやって。
腰を押し付けるように動かして、自分の欲求で壊しそうだから、優しく、時々焦らしたりしながら、石田の反応見て。
俺の下で、耳まで真っ赤にして、シーツ握って、鼻にかかったような湿度の高い吐息の混じる声を、頑張って押さえながら……。
「石田……」
「……黒崎」
こっち見た濡れた黒い瞳に吸い込まれちまうかと思った。
なんか、くすぐったくて、目が覚めた。
いや、まだ半分以上寝てるけど、なんとなく意識が浮上してくる。
まだ寝てたいけど、そろそろ起きた方がいいかなって、どっち付かずな微睡みで、そんなんがけっこう気持ちいい。
目蓋とか。
頬とか。くすぐったい。
ふわりと柔らかくて、くすぐったくて……
この感触って、なんか……キスされてないか?
俺にキスしてんのって、隣に寝てるはずの石田、だよな? 他に誰も居ないし。居ても困るけど。
だから、今俺にキスしてんのって、石田……だよな?
目開くと、やめられそうだから、そのままにしといたけど、石田はずっと俺の顔にキスしてる。
頬にも、鼻先にも、額にも、唇にも優しく降らすようなキスを何度もしてくれる。
「黒崎……好きだよ」
静かな声……。
聞き取れなくて空耳に似た声だったけど……ちゃんと、今、石田が俺の事好きだって言った。
聞き間違えたかと思ったけど、もう一度長いキスが唇に降ったから……。
……やっぱり顔が、緩んだ……のは、仕方ないと思う。
そんなんやられて我慢できねえって。
好きだってさ。ちゃんと、今石田の口が言った、確かに言った!
「黒崎、起きて……」
頬がにやけちまったから、仕方ねえ。
起きてたのバレたなら仕方ねえ。
だから腕回して抱き締めた。逃げようとする身体を引き寄せて、俺の腕の中に閉じ込めた。
「黒崎っ!」
「いや、寝てるから、俺」
実際、寝てたし、うんまだ寝てる。
「今の、まさか……」
「いや、寝てるから。続けてていいぜ」
「………起きてんだろ!」
「いや、寝てるって」
だからさ、聞こえてねえから、言うなら今だぞ。
って……意味で。
抱き締めた。
これもただの寝相だから気にすんなよ。
しばらく石田は俺の腕から逃れようとして暴れてたけど、俺が離さないってのが解ったのか、小さく溜息を吐いた。
「じゃあ、ちゃんと寝ていてくれよ?」
「おう」
「黒崎……僕は………」
そっと、俺の頭の中に、注ぎ込むように石田の声が入ってくる……
了
20120119
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