石田は布団の端持ち上げて、顔を赤くしながら、それでもちゃんと布団の中の俺の事、見てて……。
すげえ、可愛いとか……思ったり。いや、石田だけど。石田のクセに……こいつこんなに可愛かったか?
「でも、お前、嫌なんだろ?」
一応、俺達お付き合いしましょう的な流れになって、互いに気持ちを確認してみたわけだし。確かに満月で石田のテンションが盛り上がってたのかも知れなくて、普段の石田はやっぱり石田なのかもしれないけど。
そりゃそれ以前から何度もセックスしたりしてたけど……満月に限り。
お泊まりなんだし、中間試験も終わってるし、特に勉強会って雰囲気じゃないし……だからそういう流れになんの、当然だとか俺は男だからそう思うわけで……。あ、石田も男だけど。
やっぱりいくら俺でも、拒否されたら凹むんだけど。
「だから、嫌だって、そういうわけじゃなくて……」
石田が、歯切れが悪く何かを言おうとして、その言葉を飲み込んだり、やっぱり言おうとして顔を赤くしたりしてる。
「嫌なわけじゃなくて?」
「だって、いつも……なんか、僕があまり正気じゃないっていうか」
それは、解ってるけどさ。
「で、嫌なわけじゃなくて?」
赤くなった石田は、口の中で何だか言い訳を呟いていたけど、聞こえねえから。
ああ……でも、嫌じゃなかったんだ。
意地悪だってわかってるけど、顔を近づけて聞いてみると、石田の顔はますます赤くなる。
そうだ。
そういや、コイツは石田だって忘れてた。知ってるけど、ちょっと忘れてた。
どっちの石田だって変わらねえって思ってるけど。満月の時の石田も、今の石田も石田だけど……いつも、満月の時の方が石田らしくない石田なんだって、忘れてた。
「ああ、もう、君はっ!」
なんか、びっくりするくらい、真っ赤。
石田がこんなになってんの初めて見るくらい。いつも涼しげな表情が滅多に崩れないから。こんなに赤い石田って……。
「だからっ!今は意識がはっきりしてるから恥ずかしいんだよ!」
「ぶっ」
めくられた布団をまた被されて、その上に押し付けられた。モロに顔に布団が押し付けられる。
いや、ちょっと苦しいって! 息させてくれ!
俺だって平均よりはかなり力強い方だと思うけど、お前だってその辺の男子高校生レベルじゃないんだから、加減しろって! マジで窒息させる気かよ。
苦しいから、石田の手首掴んで、引き寄せてから、反転する。
体格じゃ、俺のが上だし。力だって負けねえし。こんな細い身体、簡単に扱えるって思う。実際、石田が本気出して抵抗されたりしたら、気合入れて殺されるかもしれないけど。
「っ、何だよ」
「形勢逆転」
布団が俺達の間にあんのが邪魔だけど、体重かけて石田とじこめて。苦しかったらしくてしばらく暴れてたけど、少ししたらすぐに大人しくなった。
顔、見たいけど、フテ腐れた顔で横向かれてるから、視線合わせらんないけど。
けど……なんか、耳たぶ赤い。
……ああ、こういう奴だ。
そうだ。
石田ってこういう奴だ。
「こっち向けよ」
「嫌だ」
「何だよ」
「卑怯だ」
「ああ?」
「君の目見ると、別に血なんか飲んでなくても……だから…」
って、語尾を濁す石田は顔を赤くしたまま限界まで俺から顔を逸らした。逸らすどころか、体格じゃ敵わねえの解ってんだろうし、この体勢じゃ、俺が圧倒的有利なの明らかなんだけど、それでも必死で俺から逃げようとしてた。
いや、そんな必死になるような事か?
でも、逃がしてやんないけど。
「俺の目がなんだって?」
「………言わない」
ああ、何だろうな。面倒臭い奴。
男のくせに可愛いとか、卑怯なのそっちだろうが。こんなにだらしなく緩みきった顔なんて見せたくないけど、俺は石田の顔がもっと見たい。
「顔、隠すなよ」
「………」
石田が、ぎゅって、目を閉じた。
「お前の全部、見せろよ」
全部、吸血鬼だって部分は見せてもらったから、今度はさ。
素の石田。俺に見せて。
「……黒崎」
いつも、そっちから腕絡めてくるくせに。
俺の首にしがみついてくるくせに。
卑怯だろうが。
そんなん。
もう何回もやってんのに、なんか初めて石田に触るみたいにドキドキさせんじゃねえって!
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20120105
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