【Full Moon 2】 02

 以下の文章には性的な表現が含まれます。18歳未満の方、苦手な方の閲覧はご遠慮ください。


















「黒崎……」

 そう、甘い声で石田が俺の名前を呼んで、俺の血を吸う。凛とした突き刺さるようないつもの声音じゃなくて、やたらと甘ったるい声。石田のクセにそんな声出せるだなんて、俺は知らなかった。


 ぷつ、と肌に棘が刺さるような感触は、多少の痛みを伴うが、次の日にはカサブタになってる程度の小さな傷口。
 そして生ぬるい感触。
 石田の舌が俺の傷口を舐める。

 石田が……普段からは想像できねえような甘くてとろけるような顔で、俺の血を嘗めてる。うっとりと恍惚した表情には微笑みすら浮かんでいる。

 細い華奢な身体を俺の身体にに押し付けるようにくっついて、体温が服越しに伝わってくる。
 俺の身体に腕を回して、俺の首筋に舌を這わせて……。


 俺は、血がついてシャツが汚れると染み抜きできねえからって、そんな理由で先に脱いである。そんな所で現実持ち出すなって思うけど、実際汚れて使えなくなるのも困るから、俺だけ服を脱いである。から、石田の感触がモロに伝わる。

 細くて、折れそうな、身体。

 石田は夢中になってるから、気付いて無いようだから、そっと、石田の身体に腕を回した。背骨や肩甲骨を手の平で確かめてる事にも気付いて無いようだから、抱き締めて石田の髪に顔を埋めた。
 髪がさらりとくすぐったい。
 石田んちに来てからシャワー浴びてないのに、今日体育あったのに、なんで石鹸の匂いすんだ? 体臭が石鹸って、何だろうな。




 ……何、やってんだろ、俺。


 我慢なんて限界突破寸前。今、ギリギリで踏み留まってる。


 惚れてる奴が俺の事抱き締めて、俺の首舐めてんのに、どうやって我慢すりゃいいんだ?

 骨張って、筋張った身体は見た目通り柔らかさの欠片も無いのに。巻き付いた腕はしなやかで、やっぱり生きてるから体温あって……今は熱出してるくらい、熱い。


 吸血鬼だなんて、どんなもんか解らない。なったこともねえし、石田が吸血鬼だからって俺もなりたいとかは思わねえ。吸血鬼なんて宇宙人と同じレベルであんまり詳しくねえから、映画とかのセオリーだと血を吸われると吸血鬼が感染するような気がしてたけど、そう言うわけでもないらしい。

 血を飲む前の石田は、すげえ辛そうで、放って置いたら死にそうで、少しぐらいって同情したのも事実だけど……



 今は、俺と石田が一つの秘密を共有してる。そのチャンスには、きっちり乗った。


 それが今、石田と俺を結んでる一番強い絆だから。
 こんな事でもなけりゃ、石田に触ることも出来なかったかもしんねえ。

 吸血鬼だって秘密を俺に打ち明けてくれたのが嬉しかった……想定外すぎたけど。それでも石田と何か秘密を共有できたのが、俺達の共通の何かがあるのは、嬉しかった。


 俺なら、いいからさ。
 お前が胃の中全部俺の血にしたっていいから。400mlでも1lでもそれ以上でも献血してやるよ。


 だからそんなエロい顔、そんなエロい態度、するなよ? 俺以外にそんな顔すんじゃねえよ。



 俺のだけにしとけよ。

 本当はそうじゃなくて、俺だけ見てて。
 石田は、俺だけ見てて。








「なあ……交換条件」
 限界。

「わかってるよ」


 俺の身体に腕を回した石田が、うるさそうに言う。

 あ、まだ満足してなかった? お食事中邪魔して悪かったな。でもこっちもそろそろ限界だから……俺の血を、飲みながらでいいからさ。


 密着した身体から、下の方、ストイックな身体つきの石田が、大きくなってんのがわかる。
 そこが、他の部分より熱くなってる。石田も……こうなるんだって、そりゃ男なんだから当たり前だけど、それでもこうやって石田も感じる事あるんだって、毎回思う。いつもからは本当想像できないから。



 俺の足使って刺激してやると、石田は俺にしがみついて、腰を揺らした。

「やぁっ……ぁ、ん」

 鼻にかかった甘い声は、きっと自分でも聞いたことなんてなかったんだろう。俺にしか聞かせるなよ?

「もうでかくなってる……」
「っうるさい、よ」


 やっぱりそこで感じるんだ。石田だって男で人間なんだって時々なんか再認識する。

 こいつにそんな欲求あるなんて見た目からじゃわかんねえ。見た目だけだったらトイレにすら行きそうもなくて、股間に俺と同じもんぶら下げてるとは思えないくらいなのに。
 俺が邪魔してんのをうるさそうにしながらも、腕を俺の首に回して、石田は俺の首に顔を埋めて、俺の血を舐めてる。

 時々、熱い吐息がかかる。


 俺だって惚れてる相手にこんな事されて……やっぱりそろそろ限界。










20111205