04 罰ゲーム 後










 しばらく、して、ようやく石田が俺を解放した。離した顔を見ると、もう、石田の顔は上気して目がとろんとしてる……。

 いつもなら、この状態になったら、OKってことだと理解させてもらってるけど……もう食っていいのかな? まだ、あと二回あるけど……もうオアズケしてなくていいか? 空腹の状態で目の前に餌を盛られて、マテって言われてヨダレだらだらにしてる犬の心境を理解している現状は、なかなか過酷だ。



「じゃあ、二回目、終わり。あと二回分だよ」

「おい、まだやるつもりかよ、罰ゲーム」

 そろそろ、もういいんじゃねえの?



「当たり前だろ? 罰ゲームなんだから」

 そうは言っても、石田だってもうそろそろ何じゃねえの? 当たり前って、何がだよ。罰ゲームの続きまた今度でもいいって。


 そう思ったけど、がんばって俺がするようなキスを仕掛けてくる石田をもう一度見たいから、我慢する。

 四回目まで……あと二回、の理性が持つかどうかだ。

 あと、二回俺が耐えればいいってことだから……そう、思ってまた目を閉じようとしたけど。




「って、おい」


 石田は、俺のシャツのボタンを外し始めて、俺の首筋に唇を寄せた。


「って、石田、キスって」

「唇にって条件は付けていない」

「だからって……って、石田」

「うるさいな、今から三個目の罰ゲームだから、じっとしてろよ」

「………はい」


 石田の機嫌を損ねないように、俺は石田に従う。俺が何も手を出さないのを確認すると、石田はようやく続きを始めた。

 石田の唇が俺の肌に這う。



 首筋を通って、鎖骨を舐めながら……、ボタンを外しながら下に降りていく。唾液で濡れた皮膚が、空気に触れてひんやりした。

 これを抱きしめらんないってのは、確かに在る意味けっこうな罰ゲームだと思う。俺の忍耐に対する罰ゲームって事か? だから罰ゲームってことか?



 ゆっくり俺の肌を舐めながら石田の頭が動き、胸を舌先で舐められたのは……くすぐったいって!




「石田っ! 石田! そこいいから! くすぐったいから!」



「……そうなの?」


 顔を上げた石田は、唇を赤くして、唾液で濡らしてた。

 発情して赤い顔してるくせに、首を傾げるな可愛いから!



「黒崎はくすぐったいの?」

 あ、そこ、気になるんだ? つまり石田は気持ちいいってことだよな?

 石田は胸いじられんの、けっこう好きみたいだけど……きゅって摘むと、身体を強ばらせて眉根を寄せる。それが痛みだけじゃないことぐらい、反応見ててわかってるけど、わざと聞いてみる。



「石田は?」

「…………」


 石田は、真っ赤になって俯いた。
 石田は胸が気持ちいいんだろうな。だから自分が感じるところ、俺にやってくれたってことだろ?

 そういえば、確かに一番最初の頃、胸舐めた時、石田は身体を捩らせて笑ってた気がする……胸で気持ちよくなってくれたって……俺が石田の身体を胸で感じる身体にしたってことだろ……? 自分で何だけど……よくやった俺、と自分を誉めてやりたい。


「もしかしたら気持ち良くなるかもしれないから、もう一度やってみて」

「………いいけど」

 あ、いいんだ?


 石田が再び俺の胸に顔を埋めて、俺の胸に舌を這わせる。
 さっきから、俺がいつもするみたいに石田がやってる……ってことは、石田が気持ちいいことを俺に仕返しでやってるってことだから……くすぐったいの我慢すれば、どうやって舐めれば石田が気持ちいいのかこれで解るはず!

 って思ったけど……。

「っ!! 無理っ! 悪ぃ! も、むりっ!」


 無理だ……気持いいよりなにより、くすぐったいっていうか……擽り殺されそうな気がする。俺が身体を捩って笑ってると、不満そうな顔の石田が顔を上げた。



「……今のナシだからね」

 ナシでいいけど……石田は目を潤ませつつも、睨んでくる。睨まれてるのか、何なんだか……。そんな目で見られたら、抱きしめたくなんだろうが!



「じゃあ、三回目の続きするから、黒崎、動くなよ?」

「………はい」


 石田は再び俺の胸に唇を落とす。

 胸、よりも上、首の下あたり……シャツ着てボタン開けたら見えるくらいの場所に吸い付いてる。

 ちゅ、と音を立てて石田の唇が離れた。


「……石田?」

 石田は、今キスしてた場所を見て、少し唾液で濡れた場所を、指先でそっと触って……首を傾げた。




「おかしいな……」

「キスマーク付けんなら、もっと強く吸わないと駄目だぜ?」

「っ! うるさいな、解ってるよ」


 いや、解ってねえだろ?


「まだ、三回目だからね」

「いいけど……」

 とりあえず、さっきより俺の皮膚を強く吸って、なんとか俺の肌はうっすら赤くなった……。

 シャツのボタン開けたら見える場所にわざと付けてくれたんだろうが……時々俺が石田の首筋とかに痕残して、こっぴどく叱られるから、それに対しての仕返しの意味も在るんだろうが……きっと、これ、明日には消える……。
 せっかくだったらもっとしっかりつけてくれてもいいのに。


 でも、痕付けたことに御満悦な石田に……俺の方が満足だって。ぎりぎりだったけど、不合格で良かったとか幸せになってみたりする。








「じゃ、最後だよ」

 ようやく……いや、うれしかったけど。もう、俺の準備はいつでも大丈夫なくらいには興奮してるけど……あと一回、頑張ってくれ、俺の理性。






 で、次は何してくれるんだろうって思ったら……。


 俺のズボンのベルトを外し始めた。


「って……石田!」

 いや、確かに、さっきもキスの場所は指定してないって……だけどっ!

 ズボンのファスナーを下ろして、下着の間から、俺のを取り出した……石田が、俺の触ってる……って、感動している場合でいいのか?

 石田は俺のをじっと、見つめた。その距離わずか十センチ……とか。



「何で、もうこんなになってるんだ?」

 いや、見てわかるだろうけど……俺の準備は整っていて、いつでも大丈夫だから……。

「仕方ねえだろ?」

 仕方ねえだろうがっ! お前がんなに可愛いことするから、俺の方は今すぐにでも準備オッケーになってんだって。それ知っててわざとの罰ゲームだろ!?
 お許しが出たら、すぐにでも飛びかかる体勢なんだよ、こっちは。




 石田は、俺のを握りしめて、じっと見つめてる……。


 実際、握らせたことあるけど、石田がだいぶ気持ち良くなってきて、半分ぐらい意識飛ばし始めてからだったから……こんなに素面な状態で俺のを触ってくれるとか……嬉しい。





 石田が意を決したように、頷いてから……。


 俺のに、唇を落とした。



「石田っ!」


 いや、期待してたけど。俺の見てる時から、そこにキスしてくれんだろうって、思ってたけど……。

 まさか、フェラしてもらえるだなんて……!

 先端部分にそっと口付けてから、ゆっくり口の奥まで俺のをくわえてくれた。


 ぬるりとした暖かさに、包まれる……。


 今までやってもらったことねえし、やらせようって思ったこともない。そりゃ、夢には見たことあるけど、そんな事してもらわなくても、石田が気持ちよくなれば俺のは準備できるから……そりゃ、いつかは一度くらいはやって欲しいって思ってたけど……まさか、今その願いが叶うとは……。



 口の中に俺のを入れて、必死になって石田が俺のを舐めている……。



「……んっ…ん」

 やべえ……。

 もっと唾液出して、舌も使って、手も使った方が……ってのはどうでもいい。上手とかそんなんじゃなくて、とにかく石田が俺のを、ってところが、クる。


 石田が俺のしゃぶって、ちょっと苦しそうにしてる……のを見てるだけで……すぐ、イけそう……

 触るなって言われたけど……そっと、石田の頭に触れる。それは、何も言われなかった。
 顔にかかる髪の毛を払う。邪魔だろうし……俺が、石田の顔見たい。俺のなめてる石田の顔、ちゃんと見たい。


 くちゃくちゃと、石田の口から卑猥な音がする。

 このまま床だけど、石田を押し倒して、今すぐ石田と繋がりたい。でもそんな事をしたら石田の機嫌を損ねるのは必至だろう……けど、

 もう、そんなこといいから、早くヤりてえ……石田の脚広げさせて、何度やっても狭くてきつい入口に俺の捩じり込んで、熱い石田の中でイきてえ……。







「ん……ん」


 石田の苦しそうな声が漏れ出す度に、理性が激しく本能と戦ってるのが解る。



 石田が、俺の……このままじゃ、俺、すぐにイく……






 残り僅かな理性がぎりぎりで、全部踏み留まってる……けど……そろそろ、狼になっていいでしょうか?










「はい。終わり」



 石田が、口を放した。


「ちょっっ! 待てよ!」



 俺、あと少しでイきそうだったんだけど……今、終わりかよ?



 わざとか? 俺の状態解っててわざとか?



「だから、罰ゲームだって」

「聞いてねえよ!」

「言っただろ?」


 ちょ、俺これどうすんの……この状態で終わりって、ただのイジメだろ?



「黒崎なんて情けない顔をしてるんだ」



 石田が俺の眉間に指をついて笑った。ああ、きっと酷い顔してんだろうなってのは解ったけど……ひどいことしてんの石田だろっ!?

 これ、俺は襲い返すべきだろうか……いい? もう我慢出来る忍耐力なんて、一欠けらも残ってねえぞ! どうなっても知らねえぞ!










「黒崎、もう罰ゲーム終わったんだよ?」



 ああ、そう言う事?


 一か月予定合わなくて、二人きりの時間なんて無くて、今日も今日で勉強なんかで時間潰さなけりゃなんなくて……。

 一緒に居られりゃ、本当はそれだけでも満足なはずなんだけどさ。

 つまり、俺だけじゃなかったって……そう、思っていいんだよな? 石田だから、解りにくいけど……。






「ね、黒崎」


 まだ涎で濡れて充血した唇で微笑まれて、俺の理性は決壊した。







「……手加減しねえからな」


「望むところだよ」










 待て、から良し、になった俺は、目の前の石田に飛びついた。
















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