01 舐め合い










「くろ、さきっ」

 頭上で石田が呼んでるけど、ちょっと今無理だから、口の中の石田のを強く吸い上げた。

「あっ……あぁっ、黒崎っ」

 切なそうな声を上げながら、石田は内股をひきつらせた。
 見てたらそこもおいしそうだったから、俺は真っ白な内股に口づけを落とす。






 今、石田の部屋で、ベッドに腰掛けた石田のを口でしてる。四六時中やりたい俺と、嫌いじゃなさそうだけど、自分からはしたがらない石田。いつものことだけど。

 ワンルームの部屋でベッドの上に座って本を読んでたから、俺はその隣で床に座ってベッドを背もたれにして音楽聴いてて、しばらくはそのままだったけど……二人きりで居ても特に会話はない。石田とは共通の話題も少ないし、俺も石田もそんなに会話を楽しむ方じゃない。でも、石田とは一緒にいるのが本当に落ち着く。っていうか、嬉しい。近くにいるのが好きで。

 いつの間にか、こういう関係になってた。石田も俺に同じ感情向けてくれてんのが、嬉しくておかしくなりそうだった。俺が石田を好きで、石田が妥協だったとしても俺のものだって、そう実感できるだけで、同じ空間に居て少しでも居心地いいって思ってくれるだけで、本当に幸せだった。

 本当だったら、石田がそばにいてくれるだけで、嬉しいはずなんだけど。


 けど、俺はやりたい盛りだし、石田はあんまりそういう感じじゃない。だから、俺からってのはいつのも事で気にしたことはない。それが石田だって思うから、俺から仕掛けるのは、いつも通り。

 そこに石田が居るのに、邪魔しないようにして持ってきた音楽聴いてるのにもすぐに飽きてきて、本を読んでる石田の膝にじゃれ付いるように見せかけて、石田の膝の間に入り込んで、石田の細い腰に抱きついてみた。
 石田は気にした感じでもなく、俺の頭に本を置いて、時々俺の頭を撫でながら、相変わらずな態度で本を読み続けてたから、ちょっといたずら心が沸いてきて、甘えてるように装って、腹に額をこすりつけてみた。

 二人っきりになると、こうやって甘えたりすんのいつもの事だから、石田も気にした様子もなく本のページをめくる。

 石田の意識はまだ本の上だ。
 んで、服の上から太股撫でたり、まだやらかい石田のに、服の上から籠もった息をかけてみたりしてるうちに、石田のも少し堅くなってきてたから、ファスナーを下ろして、下着の割れ目から石田のを取り出して、口に含んでみた。


「ちょっと、黒崎! 何やってんだよ」

 そこで、ようやく石田の意識が俺に向いた。本を読んでて、そっちに全部の意識がとられてたようで、今まで気づかないってお前、そりゃねえぞ?

 って、思ったけど、口は放さないで、石田のを口の中で育てる。食べた時はまだ半勃ちだったけど、すぐに大きくなったから、奥の方まで食べてみる。


「んっ……ぁッ」

 舌を絡めながら、手のひらで服の上から袋も刺激してやると、石田の手から本が落ちて、石田の口から湿った声が漏れてきた。

 石田のを食べてる俺の口が、卑猥な塗れた音を立てる。




「黒崎っ!」

 頭を捕まれて、ちょっとの抵抗を見せる石田を、とりあえず無視。

 もうちょっとでイクと思うから、何か用があるなら、そっからで良いだろ? このままじゃ可哀想だし、俺も今やめたくない。

 俺の口の中で石田が気持ちよくなってんのが嬉しくて、俺もちょっと今やめらんない。

 堅く、熱く張り詰める石田のを手で扱きながら、強く吸い込む……


「あっ……あぁぁっ!」


 石田が俺の頭を掴みながら、高くて切ない声を上げると当時に、口の中の石田のが跳ねて、特有の暖かい味が広がった。

 どうやら、ようやくイったらしい。


 口を離し、俺の中に吐き出された石田の精液を飲み込んでから石田を見ると、くたりと力が抜けて、身体中で呼吸をしていた。
 石田はこうなると、ほとんど抵抗できなくなる。から、そろそろ俺もちょっと自分のが苦しくなってきたから……優しくするし、大事にするから……いいですか? って、訊こうと思った。訊こうと思って、石田の顔を見た。



 石田は赤らんだ頬で、潤んだ瞳で……俺を睨んでる。



 ……あ、怒らせた。




「黒崎っ!」


「てえっ!」


 っガン、て、良い音がした。


「てえなっ! 殴ることねえだろ。今のグーだっただろ!?」
「待てって言っただろ!」

「別に急用ってわけじゃねえだろうが。少しぐらい我慢しろよ」
「だから、待てって。聞けよ、人の話」
「んだよ、一体」


 何だってんだ?


「黒崎、ここに座れ」
「何だよ」


 石田が、ちょっと横にずれて、今まで石田が座ってた場所を石田は二度ほど叩いた。




 もしかして、今から説教タイム?

 いや、そりゃ俺も了承も得ずに、意思の確認もせずに始めちゃったわけだから、多少の罪悪感もあったりはするけど。
 でも、石田だって気持ちよさそうにしてたじゃねえか。石田が気持ちよくなるために、俺も色々研究して、石田の気持ちいいところ覚えて、舐めるのも上手くなったと思うんだけど。









「だから……僕、も」




「は?」




 今、俺の耳が俺の欲望に忠実な幻聴を聞いた気がする。

 けど、幻聴だよな、これ?




「だから、僕も、する」

「……は?」

 僕もって、言ったよな? 幻聴じゃねえよな? 確かに言ったよな。言ったけど……。



「お前もって、何が?」

 頭がいいくせに時々、常識知らずな突拍子もないことをしでかしてくれるから、僕もの「も」の意図が俺には図りかねた。



「だから! 僕もするって!」
「は?」

 いや、何でこいつ突然キレ気味なの? 何した、俺?


「座れ」


 ……石田の機嫌がちょっと、マイナスに移行している。から、せっかくのお泊まりなんで、従っておいた方が無難だろうとは思うけど、

 とりあえず、言われたとおりに、ベッドに腰をかける。
 石田は俺がさっきまで居た位置に移動する……。

 俺の股の間。


 ってことは、つまり……。


 石田が、俺のベルトを外して、ファスナーを下ろして……。


 やっぱり、僕もって、そう言うことか?


「いや、石田、ちょっと待て」

「何だよ?」

 下着のゴムの間から、石田は俺のを掴み出す。って、石田が俺の触ってる……!!

 とか、感動してる場合じゃねえ。
 いや、握らせたことはあるけど、石田がもう半分くらい意識飛ばせてるときぐらいだから……。


「何で、もう黒崎の、こんなになってるんだ?」

「仕方ねえだろ!」

 てめえのイイ声聞いてたら、半勃ちどころじゃなく、フルで熱量と欲望がチャージされてる。から、俺のはいいんだって。勝手に準備万端になんだから。


 石田は俺のを握ったまま、至近距離で俺のを見つめる。いや、そんなに見つめんなよ。
 穴が開きそうな視線注がないでくれ。


「いいよ、石田、無理すんなよ」


 てか、恥ずかしいから。

 石田のを舐めるのには抵抗無いけど、いや、ちょっと俺のこんなに見られるのは恥ずかしいって。


「……っ!」


 石田は、意を決したようにして、そっと俺のに、唇を当てた。


「石田っ!」

 いや、本当にいいから。無理しなくても、石田が気持ち良くなりゃ、俺が勝手に興奮するようにできてんだから。



「……んっ」

 やべ……。

 石田が、俺のを口に含んで、裏筋を口の中で刺激する……やべ、きもちい……。

 石田ん中も果てし無く気持ちいいけど、口も気持ちいい。



「……ん…ふッぅ、ん」

 石田が、一心不乱に俺のを舐めてる……って、俺、今夢見ちゃってんのか? だって、あの石田が……。

 ぎこちない舌の使い方で、ぴちゃぴちゃと音を立てて俺のを猫みたいに舐めてるのって……やってもらってるのが気持ちいいのもあるけど……それ以上に石田が俺のをくわえてるって事実が……。

 やべえ……っ!

 慌てて、石田の肩を押した。

「っ……」


「……んっ!!」



 石田の顔に、俺の出したのがかかった。





 ……早すぎだろ、俺。




「悪いっ! ティッシュどこだ?」

 石田の顔を俺ので汚した背徳感は、見てるだけで、今出したばっかだってのに、さらに欲望を加速させるには十分だったが、それより、まずティッシュ。

 今の石田の顔は目に焼き付けておいたから、まずティッシュ、どこだ?


「いいのに、口に出しちゃっても」
「は?」

「いつも、君だって僕の飲むだろ?」
「いや、やめとけよ。マズいし、吐くぞ」

「………へえ。そうなんだ?」


 石田のだって解ってりゃ、飲めるけど、味自体はマズいし、石田のでなけりゃ、きっとバリウムも牛乳みたいに感じるだろう。石田以外の精液を飲むだなんて、死ぬのと同じレベルの拷問だと思う。


「つまり、それを君はいつも飲んでるんだろう?」
「……石田?」

 枕元にあったティッシュで石田の顔を拭いた。石田はされるままになってた。あーあ、ベトベトだ。悪いことした。
 眼鏡は外してたけど、髪にもつけたから、後で風呂に入らせねえと。



「いつも、君だけ……」

「石田、どうした?」



 らしく、ねえ。って思った。

 石田らしくねえような気がした。

 性欲って、見たまんまあんまり持ち合わせがないようで、いつも俺が我慢できなくなって、石田が諦めたようにやらしてくれるって感じだったから……。

 俺のを舐めてくれたりとか……。


「どうした?」


「僕だって……」


 石田が、下を向いた。



「僕だって……君が好きなんだよ?」

「……」

「黒崎ばっかり、いつも僕の事気持ち良くしてくれて、僕だって……黒崎を……だから」


「………」



 こいつ、そんなこと思ってたのか?


 いや、だから。俺は、許可さえ頂ければそれで十分に幸せなんだけど……。



「黒崎! 聞いてるのか!?」


 石田は、怒鳴った。
 けど……真っ赤。



 何だ、この可愛い生き物。


「……」


 何て、言えばいいんだ?


 俺達が両想いだって、石田と恋人だってそれだけでかなり限界だってのに。時々、石田が気分乗ってくれて、身体が繋がって、すげえ幸せ噛みしめてんのに……。


「黒崎。何か言ってくれよ……僕は、恥ずかしくて死にそうだ」




 石田の……耳まで赤い。



「ああ……いや、だから。石田……」


 何て、言えば、伝えられんだろう。
 どの言葉で、俺の気持ち、石田に伝えられんだろう。




「好きだ、石田」



 俺は、石田を抱きしめた。

 なんか、嬉しくて、石田も俺のこと想ってくれてんのが嬉しくて、俺のボキャブラリーじゃどうやっても伝えきれなくて。


「石田、すげえ、お前が好き」



 何度言っても、伝えきれねえ……ずっとこの言葉言い続けたって、死ぬまでに伝えきれんのかな。


「黒崎?」


 困惑気味な石田の声を聞きながら、俺は好きだって何度も繰り返した。


 きっと俺の顔も真っ赤になってんだろう。













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