私は常にトップで、常に一位をキープし、小学生の頃から学校開校以来の才媛と誉れも高かった。
勉強だけに打ち込んできたわけじゃなくて、スポーツも出来たし、外見だって悪くないし、スタイルを保つためにも色々やってるし、沈着冷静なこの性格は、他の同級生とは一戦を画している自負もあった。私は、完璧。
私は誰にも負けないし、常にトップだった。陸上でも中学の頃から全国大会制覇。インターハイ優勝。確かに違う土俵で……例えばたつきと空手勝負は負けるとは思うけど、年期が同じなら私の方が強かったと思う程度には、私は何でもできたし、その自信も常にあった。
私に勝てる奴なんか居ない。
って……そのプライドを打ち砕いてくれた奴……。
石田雨竜。
何なの?
何で私があんな奴に負けるの?
中学の頃だって、勉強以外取り柄も趣味も無いような奴等のプライドをへし折って来たって言うのに……。
今回こそは負けないと必死で勉強もしたし、時間ぎりぎりまで見直ししたし、凡ミスも防げたはずなのに。
張り出された中間考査の順位表を見て、泣きたくなった。
二位……!!
何で、この私が、あのモヤシに勝てないのっ!
「国枝さん?」
急に声をかけられて、私はつい怒鳴りそうになって、慌てて表情を取り繕う。けど、どうせなら、そんな事をしなくてもよかったかもしれない。どうせならそのまま当人に怒りをぶつけても良かったかもしれない。別に私があんたのこと嫌いだって主張しても問題なかったかもしれない。
「………何、石田」
「今日日直だよね? 先生が呼んでたよ」
石田は表情一つ変えずに、それだけ静かな声で伝達だけして、背を向けた。人込みをするすると交わしながら、教室に戻っていく。
……今張り出されたばっかりの順位表に、目もくれずに!
「………」
別に、怒るような事じゃないけどっ! 別に順位なんて石田は気にしてないのかもしれないけど!
何でこんなに気に入らないの?
性格は至って沈着冷静。
授業態度は真面目。
成績は私を抜かしてトップ。
顔は、お坊っちゃん顔。まあ、悪くはない程度には地味顔だけど、見た目で男と私が勝負しようとは思わないけど。
勝てる事と言ったら……。
スポーツ?
あのモヤシならスポーツ苦手そうに見える。体力もなさそうだし、きっと運動音痴に違いない!
体育の授業は男女別だけど、今日は幸いグラウンドで、男子は高跳びで、女子は短距離。
アイツが無様に落下する様子を目に焼き付けて、ほくそ笑んでやる。なんて、性格の悪いこと考えるけど、外に出さなければ私の評価点は変わらない。
だから、興味のない男子の授業もちらちらと覗き見る。
表面上はいつもどおりに取り繕って、石田の情けない姿を希望する。
犬みたいな浅野が人畜無害そうな小島に何かを言われたようで大げさなリアクションの後、黒崎に飛びついてそのまま殴られていた近くに石田は、いた。
相変わらずのモヤシ。
クラスの誰よりも白いんじゃない? 色白な織姫と変わらないくらい。
身体だって細っこくて、ジャージの中身なんて入ってなさそう。
石田の順番が回ってきたから、つまらない授業中になんとなく風景を見ているふりをして、石田を見る。
あんなモヤシにあの高さが飛べるはずが……
と、思ったのに……。
……あっさり、クリア。
その高さが飛べれば大丈夫って高さを、綺麗なフォームの背面飛びで一度でクリアした後、再挑戦する事もなく……。だって、どう見ても20センチ以上高く飛んでたし、………私だって授業で本気で走ることもないけど。
それからちょこちょこ男子の授業のぞくようになったけど、毎回そう。一度でクリアしたら、列から少し離れた場所で見てるだけ。やる気ないにも程がある。生意気にも受験に関係ないから通知表の評価点には興味ないって事?
結局石田の評価は、相変わらずよくわからないまま、嫌いな奴としての認識だった。
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20110816
いつ書いたものだか記録がない……
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