白亜の闇  番外編










「やだっ……や、ぁあっ」



 僕の声を誰かの譫言のように聞く。
 それと、くちゃくちゃと濡れた音と、腰が打ち付けられる肉がぶつかる音……と。


「もっ…ふっ、ぅあ…やめ…ぁ」


 僕の上にのしかかる身体を押し退けたくとも、僕の手にはもう力が入らない。
 苦しい。熱くて、熱膨張により僕が破裂してしまいそう。意識が単一で、繋がってる部分にしかないのに、そればかりが膨らんでいっぱいになる。

 情けなく声を上げて、泣きながら、それでも僕はこの状況を喜んでいる事を自覚していた。




「るせえよ。少し黙って感じてろ」

「やっ……あ…ぁ、あ」


 僕の中を擦られる度に発生する熱に、僕は内部から爛れてしまったのだろうか。

 もう、動くこともできない。考えることもできない。
 下半身は麻痺してしまっているのか、感覚もよく分からない。ただ、中に生まれる熱が……身体中を溶かされるように熱い。中から僕が溶解していく。




「なあ、雨竜……もっと声聞かせろよ。外歩いてる奴らにも聞こえるぐらいさ」

「やっ……ぁっ……ん、ん」


 外に、僕の声が聞かれるわけには行かなかった。一護の霊圧で、きっと誰もこの教室に入ってくることはないだろう。僕だってこんなに苦しいんだ、肌をピリピリと刺すような一護の霊圧は、普通の人間なら近づくこともできないはずだ。だから、この教室には誰も来ない。そんな事、僕にだってわかっている。

 でも、放課後……まだ、部活で残っている生徒もたくさん居るのに……。

 こんな、所で……。

 必至に声を抑えようとする。口を閉じても僕の喉は中で動く一護に反応して、悲鳴を上げる。喉が張り付いて痛い。



 もう……辛い……早く、早く、イきたい……



 それでも、一護は、僕の欲しいものをくれない……。


 浅い部分ばかりを擦るようにして動かれる。もっと、欲しいのに。もっと奥まで来てくれないと、イけない。




「ほら、鳴けよっ!」

「っああぁ――っ!」



 突然、深いところが抉られた。



 痛みにもよく似た熱に、僕は声を張り上げた。


「あっ! あっ、ああっ!」


 何度も突き動かされて……。

 こうして欲しかった。もっと痛くされたい。痛みでいい、恐怖でもいい。結局一護を感じることができるなら、それで僕はいいんだ。他に何もなくてもいい。



「雨竜……」



 一護が、僕の中で大きくなる。
 熱くなる。堅くなって、膨らんで……。



 奥に、一護の熱いのが、欲しいんだ。



 一護の腰が打ちつけられるスピードが徐々に速くなる。僕は、あの熱い迸りを受け入れる期待に、体温が上がる。熱いのに、鳥肌が立ったような気がした。僕の中で、一護を感じたい……一緒に……



 と、思ったのに……。


 あと、少しで……そう、思った時に……ずるりと抜かれた。


「……っ!」




 僕の腹に、一護の飛沫が飛び散った。

 熱い……精液は……たくさん僕の上に出た……。




「あ………」


 どうして、中にくれなかったんだろう……僕の中に欲しかった。



 あと、少しで僕も……もう、少しなのに……。中に一護を感じることができれば、僕もイくことができただろう。



 僕は、あと少しで、この状態で……熱は身体の中で暴れている。

 立ち上がった僕の先端から、透明な先走りが溢れ続ける……一護が今出した精液は僕のにもかかっていたけれど、僕は動けない。



 中に、欲しかったのに……僕は一護のが、欲しかったのに。





「一護……何、で」



 僕の腹の上に出した一護は、僕の上から退いて、下ろしていたズボンを履いて、ベルトを締めている……。


 もう、終わり? これで終わり?


 僕は……あと、少しなのに……我慢するの……は、もう無理なところまで来ていた。


 下肢に手を伸ばす。

 このままなんて、耐えられなかった。

 自分で、触ろうとした。このままなんて辛くて……。


「雨竜、触るなよ」


「……え?」


 僕の手が自分のに触れる直前で、止まる。だって、君が触ってくれないなら、自分でするしかないじゃないか。




「自分でイこうなんて思うなよ?」


 君は、一人でイって、僕はこのままなんて……

 身体中がおかしくなってしまいそうだ。
 ぎりぎりの所で止められて、身体中、全部が敏感になってるのに……あと、少しなのに……。




「やっ……無理」

「無理じゃねえよ。ほら、終わりだ。服着ろ」


「何、で……」


 続き、してよ。



 僕はもう、動くことすらできないのに……。せめて自分の手で、それでもイきたかった……そうしないと……。


 身体が、小刻みに震える……このまま、耐えるなんて……。

 何とか身体を起こすけれど、僕の限界はそこまでだった。

 熱くて、辛くて……一護のが、欲しかったのに……





「何で?」



 再びの問いかけに、一護は立ち上がって僕を見下ろした。冷たい目をしていた。






「雨竜、昨日、一護とヤっただろ?」


「………」





 だって、それは……。




 僕は、せめて君の側にいたいから……



「笑っただろ、一護に」

「……」


 一護の側に在りたいから、その為には黒崎の側にいるのが、一番いいんだ。黒崎よりも近い場所じゃなくても、せめてほかの誰よりも一護に近づきたくて……。


 だから……。





「会いたかったから」

「あ?」



「君に嫉妬して欲しかったから」

「……」




「そうでもしないと、僕は一護に会えない」



 黒崎の意識が強いと、一護は出てこれない。こうでもすれば、一護は僕に会いに、出てきてくれるんじゃないだろうかって思った。



 もっと、一護に僕を強く意識して欲しいから。そうしたら、僕は一護に会える……







「だから、会えた」


 だから、君の嫉妬は僕のただの我が儘なんだ。そのくらい、解っているだろ?








「……へえ」


 一護は、ぞっとするほど冷たい目で、僕を見下ろして笑った。




「雨竜……じゃあ……」





 これから、一護に何をされるのか、僕は期待に身体を震わせた。