自分が、おかしいのかなんて、知らない。どうするのが普通なのか解らない。こんな無駄なだけの行為がマイノリティである事を知る必要もない。どうせ、誰にも知られないはずだった。普通ならば、誰も知らないはずなんだ。
いつも僕はそうしていた。他人がどうするのかは知らない。知らない方がいい。こんな事で他人と比較などしたくもない。
知らないけど……。
何故か責められているような気分になる。自分でこうして慰めて、快楽を感じることすら罪悪と羞恥と悔恨を感じる行為なのに……。
「そうすんの、気持ちいいの?」
「………っ」
顔が、熱くなる。羞恥で耳まで熱くなる。身体中が、熱い。
僕が、徐々に暴かれる。
素の、僕。滅却師でもない、ただの僕。
自分の弱さを見せないために、自分を護るために、何重にも積み上げた保護膜の真ん中にいた、ただの自分が……。
無理矢理暴かれてしまう、そんな気がした。
隠して置きたかった。誰にも知られるはずは無かったんだ。厳重に隠せていたのに。
情けない自分なんか、弱くて、脆弱すぎて、そんな自分は誰にも見せたくないのに……。
「……雨竜」
黒崎の声で一護が僕の名を呼んだ。黒崎の手が一護によって、僕の頬に添えられた。
凍えそうな鋭利さで威圧する霊圧なのに、その手が暖かい温度をしていたのは、とても不思議だった。
虚と良く似た容の霊圧に、温度があるのが、不思議だった。
僕は、その手に、頬をすり寄せた。温かくて、その温度が心地好くて、もっとその手の体温が欲しくなって、その手に頬を押し付けるように、僕はその手の平に甘えていた。
僕の頬を触るその手は、今、優しい気がしたんだ。少しでも、僕を救ってくれるような、そんな気がした。突き落とす時に落下速度を増幅させる為に一度持ち上げただけなのかもしれないけれど、僕はそんな事は解らない。ただ、僕はその手が今とても嬉しかった。
指先で、僕の顔に触れる。
唇をなぞるように、指先が動く。
その指が……唇を押し入って、僕の口腔内に侵入してきた。
「噛むなよ」
ぐるりと歯列を確かめ、僕の舌を触られる。抑えつけるように、指先で僕の口の中で、一護の二本の指が暴れる。
僕は、何故か舌先で彼の指を追った。
指を吸う。舌で包むように、彼の指を舐める。爪や、指先の味を知りたくて、僕は舌を動かす。唾液と絡んで、口の中でだらしのない音を立てる。
変な、気分だ。
変な感じ。
唾液がどんどん溢れてくるのを、止められない。顎を伝い、喉を伝い、身体に流れる。
味なんてないのに、それでも彼の指を必死でしゃぶった。口から溢れるのも気にならない。
「……んぅ……ふっ」
喋れないから。言葉を、取られたから。舌を撫でられて、呻き声しか上げられない。
「お前は、続けてろよ」
「……ん…ぅ」
自身を握っていたた上から、僕の手を握られた。僕の手が手が先端に触れてしまった。
ぬるりと、した。
その感触。
先走りの液を、口の中を探られた事で、口を探られていることで感じて、僕は溢れさせていた。ぬるりと、手についた時に解った。
反射的に、自身から手を放そうとしたけれど、僕の手の上から押さえ込まれるように握られていたので、手を放すことさえできなかった。もう、自分のそんな場所を触りたくないのに。自分にそんな場所があることを自覚したくないのに。
「ちゃんとしてろよ。手伝ってやるから」
僕の手ごと、動かされる。促されるように、動かす。
変な感じだ。自分でしたことだってあるけど……自分の手なのに。自分で触って居るのに……何で……。
「……ふぅ……んっ、ぁ」
彼の指が、僕の口の中を刺激する。唾液が、どんどん溢れて、口から漏れてくる。
……いつもより、僕は感じていた。自分でした時より……もっと、ずっと……。触れているのは僕の手なのに。
触って、欲しいのに。
熱い。息が荒くなる。
身体の中心が、燻っていて、熱い。何で僕はこんなに……。
熱くて、苦しい。
一護が、見ているから?
彼の視線は、そこに注がれていた。僕の恥ずかしい場所を、見ていた……。
その、視線が………。
「……あっ…あ、あ」
熱い。
僕は、強く、握った。熱い。
強く握って、動かす。熱い。
手の動きを、早める。熱い。
一護が、見ているのに……見られているから……。
脳が収縮するような、意識が凝縮するような………。
燻っていた熱が、温度を高めていって……。
昇る。上る。登る。
「雨竜」
「……ぁ」
手を、止められた。
僕の手首を掴んで、一護は、僕の手をそこから外した。
あと、少しでイけそうだったのに………。
間際で、止められてしまい……身体が、そこが、切なく疼いた。身体中の神経が鋭敏になり、空気ですら皮膚に触れている気がした。
熱が……欲していた、のに。あと少しで……。
「……ん…」
あと、少しの刺激だけで、僕は解放されたのに……。
「自分だけ楽しむなよ」
一護は、僕の口から指を外した。
ずっと舐めていたから……唾液が粘度を持ち、口と指先に糸が引いて……切れた。
「一緒に楽しもうぜ」
一護が、僕の肩を軽く押した。
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20110414
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