スキマ3
注・性的表現が含まれます。苦手な方、16歳未満の方はこれ以下には進まないで下さい。 戻ってくると、マルフォイは壁に背をくっつけて膝を抱えて、膝に額をくっつけて、明かりもつけないで真っ暗の中、小さく座っていた。 マルフォイのことだから、何事もなかったように普通に片づけをはじめていると思ってたから、暗がりの中、扉付近にマルフォイを見つけたときはちょっとびっくりした。 別に僕達はお忍びで来ているわけじゃないから、明かりをつけたって何の問題もないのに。 「明かりつけるよ」 「………いやだ」 「何言ってるの?」 僕はマルフォイを無視して、部屋の隅っこにある蜀台に火をつけた。 ぼんやりと、柔らかい光で包まれる。 ただ、本当はこの部屋は物置用に使われているようで、蜀台が一個しかないから、部屋中がぱっと明るくなるわけではなかった。 どこかからもう一つ蜀台を調達してこないと、暗くてやってられない。 「いつまでそんなところにいるの? 早く片付けちゃおう」 「………ポッター、どうしよう」 すごく、小さな声だったけど。 マルフォイの口からこんなに弱々しい響きを持った言葉を、僕は今まで聴いたことがなかった。 マルフォイはいつも凛とした声で命令することに慣れた強い響きを持っているか、他人のことを見下している時は口をあまり開かずに気だるげに話すかのどちらかだったから。 「どうしたの?」 「………なんか、変」 くぐもった声。 自信のない響き。 僕は、とりあえずさっき殴りすぎたのかもしれないと思ったから、少しだけ心配になって、マルフォイの前に座って目線の高さを合わせた。マルフォイは顔を膝につけていたから、視線を合わせることはなかったけれど。 「変て?」 「だって………」 マルフォイが、顔を上げて僕を見た。 顔が、真っ赤になってる。 さっきから、泣いていたのだろうか。目が充血して涙が溢れている。 そのまま、また顔を伏せてしまった。 心配になったのも少しだけで、僕達にはやらなきゃいけないことがまだ山積みなんだから。 量が量だから終わらなくてもそれほど怒られないのかもしれないけれど、この惨状のまま明日を迎えたら、また減点になってしまう。それだけは、避けたかったから。 「いい加減、片付けるよ」 いい加減要領の得ないマルフォイに苛々してきた僕は、マルフォイの手を掴んで無理やり立たせると、一度は立ち上がったものの、マルフォイは一歩も歩かないうちにまたへたりと座り込んでしまった。 「何やってるんだよ」 「……だって」 そういって、マルフォイは顔を押さえて項垂れるように俯いてしまった。 今度は、膝を抱えるように座っているわけじゃないから、僕がさっき困っていたことと同じ理由が、見えてしまった。 今までそれに困っていたということですか。 僕達そういうお年頃だし、誇張したモノとか見られたら恥ずかしいけど、仕方がないんじゃない? まあ、あのマルフォイが……とか思わないこともなかったけど。生理的現象だから。 「……ああ、そういうこと」 僕の見下したような態度と、含み笑いが気に入らなかったのか、マルフォイは少しだけ僕を睨み付けたけれど、すぐにまたさっきの困ったような顔になった。 この顔は、初めて見る。 「どうすればいいんだ……?」 どうすればいい、って言われても……。 「抜いてくれば?」 「?? どうするんだ?」 …………どうするんだって? 「どうするんだ? って、何が?」 「だから……その」 「何? 猥談がしたいわけ? そんな暇ないんだけど」 「???」 マルフォイは、尚も困った顔をして首をかしげている。 まさかとは思うけど。 「自分でやったことないの?」 「何を?」 ああ、もう。 「子供の造り方ぐらいは知ってるよね」 「それは……」 マルフォイの顔が、瞬時に赤くなったから、それはさすがに知っているようだ。こんな所でこんな時に、オシベとメシベの話をしなければならないのかと思ってしまったから、少し安心した。 「だから、トイレにでも行って精子を出してくればそれですっきり解決だ。さっさと行っておいで」 「……だって、立てない……」 「じゃあ僕は後ろ向いてるから」 「……その、どうやって………」 だああああ。 もう、僕は頭痛がしてきた。 さっき殴られたって言うのもあるんだろうけど。 何なんだ一体。性教育の授業とかに興味を持つお年頃なんじゃないのか? 友達と女体の神秘とかについて熱く語ったりとかはしないんだろうか。とも思ったけど、あんまりマルフォイが雑談している姿とか見かけない。周りにいるのはでっかい二人組みか、後はスリザリンの不特定多数。誰かと特に仲がいい、ってわけじゃないんだろう。さすがにあんまり気心の知れない相手と語るような内容でもないから。 「自分のを出して、握って、こする。それだけだよ」 「うん………わかった」 なんで、僕がマルフォイにそんなことを教えなくちゃいけないんだ! チャックを下ろす音が、すごく生々しく聞こえた。 僕は、棚の方だけ向いて、後ろの空間は誰もいないんだ。 気にならないといえば、嘘だけど。だからと言って僕は女の子が好きなわけだし、野郎のしている姿なんかは見たくない。 マルフォイはそこらの男よりは遥かに綺麗で、あれだったらブスな女よりもよっぽどいいとかほざいている男の話をちらりと耳にしたことぐらいはあるけど、だけど僕は女の子が好きなんだし。さっきの顔を赤くして瞳を潤ませている顔は、その辺の女の子よりも……僕が見た中では誰よりも色っぽかったけど。ただ欲情していただけなんだろうし。 しかも僕の大嫌いなマルフォイだ。 僕の後ろには、何もないんだ。 何にもいない。 誰もいないし、マルフォイなんかもいない。 そう、思い込むことにした。 のだけれど!! 「……んっ……ぁ……」 男なんだから、声を出すなあ!! しかも、妙に艶っぽい鼻にかかったような声だったりして。 僕まで変な気分になってきちゃうじゃないか。無駄にフェロモンを振り撒かないでくれないか。 ああ、集中しないと。片づけが終わらない。 「……っ……は、ぁ」 後ろなんか、向きたくないけど、どんな格好していやってるんだろう。 さっき僕の方向いてたけど、僕が後ろを振り返らないって信用して向きも変えずに僕の方に足を広げてるんだろうか。 僕が後ろを振り返ったらどうするつもりだろう。 さっきのカップルみたいに、気づかずに続けるんだろうか。 肌……白いんだろうな。 ……集中しないと!! 「あ……ん………あっ」 声を出すぐらいだから、よっぽど気持ちがいいんだろう。今までやったことがないくらいだから。 恥ずかしげもなく声を上げちゃって。まったく、どんな顔をしてやってるんだろう。 綺麗な顔が快感に歪んで、いつも不機嫌そうに寄せられた眉根は、少し苦しそうに寄せられていたりするんだろう。 その顔を想像するだけで、たぶん僕が知ってるどの女の子よりも色っぽいんじゃないかとは思う。 気取った顔が、くしゃくしゃになっていたりするんだろう。 さっきの潤んだ大きな目とか、赤い唇とか、少し開いて、熱い息が唇から漏れて……。 集中しないと!!! 「ポッター」 「何だよっ!!」 つい、怒鳴ってしまっても、僕は悪くないと思う。 いい加減僕は苛々しているんだ。 「……できない……」 情けない、声だった。 ………僕に、どうしろと!? 「あのねえ……」 僕は、いい加減にげんなりして、ついマルフォイの方を向いてしまった。 ああ、見るんじゃなかった。 僕が、想像していたその通りで。 ズボンが腰まで下ろされて、白い足が見えて。 そこから覗いたマルフォイのは、ピンク色に充血していて、先端から透明な液体を出している。 あられもない格好。 僕が殴った痕が、青くなっているけど、それ以外真っ白な頬が上気して赤く染まっていて。 涙の通った痕が幾筋も見える。 潤んだ目は、縋るようにぼんやりと僕を見上げていた。 真っ赤に充血した唇から、さっきの声が漏れたんだ……。 さっきの声で半立ちになっていた僕の下腹部にあるものは、さっき抜いてきたばかりだというのに、マルフォイを見てしまって一気に膨らんだ。 「僕が、やってあげようか?」 何を、言っているんだろう、僕は。 「……ポッター?」 「うん、て言って」 「………ポッター」 「やってあげるから、うん、て言ってよ」 マルフォイが戸惑っているのもわかるけど。 僕が何より一番戸惑っている。 他人のものを触るなんて考えたこともなかったし、きっと気持ち悪いと思う……マルフォイじゃなかったら。 彼のを扱いて、彼がその綺麗な形の赤い唇から熱い息を吐き出して、眉根をきゅっと寄せて、濡れた目で僕を見ると思うと……。 僕は、マルフォイの目の前に座った。 彼は、相変わらずの視線を僕に送っていたから。 「……うん」 マルフォイは、小さな声だけど、確かに、言った。 淡い色合いで、反り返ったマルフォイのそれは、まだ幼くて、触ってしまっていいものかと少しためらったが、汚いとか、気持ち悪いとか、そういうことは思わなかった。 ただ、僕が彼に触れることで、彼が快感を掴むだろう事を想うだけで、僕も固くなる。 彼の履いていたズボンを下着ごと剥ぎ取ると、白く細い足が薄明かりにぼんやりと浮かび上がる。白い足。その内股に手を滑らせると、彼は身を捩った。 しばらく、中心には触れないようにして、マルフォイの表情を見ていた。 少し、恐怖を含んだ目を、していた。 そっと、触れると、マルフォイが小さく声を出す。 両手で、そっと包み込むように触れた。 「あっ……」 そのまま、ゆっくりと上下に扱くと、それにあわせてマルフォイの唇から、鼻にかかったような、甘えたような声が漏れる。 その声を、食べてしまったらどういう気分になるんだろう。 「キス、していい?」 「……ポッター?」 僕は、マルフォイをこちらに向かせようとして手を伸ばすと、マルフォイは身を竦ませた。さっきと同じ反応。頭の近くに手を持ってくると、殴られると思うのだろうか。 安心させるように、マルフォイの細い銀髪を手で何度も梳きながら、頭をあやすように撫でた。 彼の目がうっとりとしてきたから、僕は返事を待たずに、マルフォイの赤く濡れている唇にキスをした。 薄く開いた唇から、舌を侵入させて、マルフォイの唾液と僕のを混ぜあった。 苦しいようで、縋りつくものを探して手を彷徨わせていたから、僕は僕の背中へと導いた。マルフォイが、ぎゅっと僕を抱きしめている。陶器のような無機質な印象しか与えないマルフォイの身体は、火照っていて、熱くて、ちゃんと生きているのだと感じる。 なんだか、不思議な感じだ。 さっきまで、殴り合って、あんなに憎しみしか感じなかった相手に、こんなに………。 ………こんなに、何だろう。 嫌いといえば、嫌いだ。好きではない。 けれど……。 ああ、これは執着だ。 嫌いだと思うことも、いつもと違った表情を見せる君に対して今感じているこの気持ちも、ただの執着だ。 好きだとは思わないのだから、これは恋ではない。ただ、感情がマルフォイに流れていっているのは事実だから。 ぬるぬるとして、舌が絡み合う。マルフォイの口の奥の方まで僕の舌を差し込むと、マルフォイが目を開いて僕を見ようとしたのがわかった。 そのまま、マルフォイを強く、扱いた。 「んっ……はぅっ……ん」 空気を求めて、唇を離そうとマルフォイは首を左右に振ったけれど、僕はその顎をしっかりと押さえてしまっていたから、苦しそうに僕の口の中にくぐもった声を吐き出していた。 マルフォイの声は、甘かった。 「んーっ……!!」 マルフォイの、体中が強く強張ったのを感じた。 手の中に、勢いよく飛び出した熱い液体がかかる。 僕の手で、マルフォイが達った。 唇を離すと、ぐったりとマルフォイが僕の肩にもたれかかった。体重を僕に全部預けて、荒い息を吐き出して。吐き出す息がかかる、首筋が熱い。 初めてということは、達ったのも初めてなのではないだろうか。 ……僕の手で。 そう思うと、なんだか少し嬉しい。 「気持ちよかった?」 「……よく、わからない」 「へえ」 「少し、怖かった」 「……そうなんだ」 「お前がだぞ」 「……そっか」 肩に額を押し付けてきているマルフォイが、僕は嫌いだ。 嫌いなはずなんだけど……。 なんで、こんな優しい感情になるんだろう。 優しく抱きしめて、背中をさすってあげたくなるような。僕が守ってあげるって、そんな風に言いたくなるような。 不思議な気持ち。 きっと、明日になれば元に戻るんだろうけど。 「また、困ったら僕のところにおいで」 また、きっとマルフォイのあの顔を見たら、僕はすぐに今の感情を取り戻せるような、そんな気がした。 「…………うん」 マルフォイの顔を見たら、耳まで真っ赤だった。 とりあえず、僕はもう一度席をはずして、トイレに行って来なければならなくなったけど。 結局ほとんど整理は終わらなくて、終身時間ぎりぎりになって様子を見に来た教授に、僕達の顔の傷とか痣とかを見て、またひどくしかられて、また明日もここでマルフォイと過ごすことになってしまったけど。 まあ、それはそれで。 ぬるくてスミマセン 軽いノリのエッチが書きたかっただけです。 0610 |