アトガキという名の、恒例のアレ。
あまりにも、アレなので、ちょっと続きを書いてみましたが……。
より一層アレになったような気がしますが……救われたい。
これでも後で気に入らなかったら、また続き書きます。
とにかく「しあわせになりたかっただけなんだ」って台詞を言わせたいがために書いた話ですから……まあ、アレなんですよ。






あのまま終わりたい場合は閉じてください。
続いてても良い場合は(それでも救いようの無い話ですが)スクロールプリーズ。
ドラコ視点で。



























 僕は、魔法省で、尋問を受けている。


 一年前と同じ場所で、一年前と同じ質問……に、僕は苦笑すら覚えた。





 僕は、何も覚えていない。

 本当に、何も覚えて居ないんだ。



 闇の陣営は用意周到だから、僕が見たこと、記憶した事を……その部分だけ、綺麗に封じた。
 大して難しい呪いではないから、自分自身ですら解呪できる程だけれど……。





 その呪いが解けたら、僕は殺される。


 誰の事を忘れているのかすら、僕は覚えていない。何を忘れたのかも、僕は解らない。

 僕の記憶にかかる呪いを解いたとしても、かけた本人はもう捕まっていて、僕の身には何も起こらないかもしれない。何も無いかもしれない。


 それでも、あの時の恐怖を覚えている。僕が覚えているのは、記憶の一部を封じられた事と、この呪いを解けば、地の果てまでもお前を殺しに来る、と、誰かの言った低い声。死よりも更なる恐怖を与える。そう言った低い声。



 怖くて。


 怖かった。



 忘れた記憶の替わりに、恐怖が植え付けられた。
 そいつは、もう捕まっていて、僕がこの呪いを解いて、全てを話しても大丈夫かもしれない。僕は助かるのかもしれない僕は生きていても……。


 それでも……怖かった。喋ろうとなど、考えられないほど。そのことについて一言も口にすることなど出来ない。






 僕は、一年間の猶予期間を与えられた。


 断るつもりだった。早く恐怖から解放されたかった。どちらにせよ、死んでしまうなら、少しでも安らかに死ねる方がいい。早く終わらせてしまいたい。あの恐怖は、死すら憧れるほどのものだった。



 僕は……学生の頃からポッターが……ずっと彼に恋をしていた。


 彼は正義感を振りかざした偽善で構成されていて、見ているだけでも苛ついた。何も出来ないくせに、と。

 嫌いだったんだよ。本当に、嫌悪していた。
 決して、好きじゃない。今だって好きじゃない。


 でも、僕は彼に恋をしていた。ずっと見ていた。今だって、好きだなんて思えないけど、それでも……強い、執着は、昔からあった。恋と呼ぶには相応しいものではないかもしれない、それでも僕は彼へ送った視線を外すことが困難なほどに、ポッターに執着していた。


 だから、僕は、彼の申し出を受け入れた。僕の気持ちを、自分でも知りたかったのもある。


 少しでも、ポッターの目が僕を見ればいい。少しの間だけでも、僕のものになればいいのに。

 彼は、僕の身体に興味があると言って、僕を抱いた。僕と何度も繋がった。妙な性癖だとは思ったが、僕も、彼の身体に憧れていたから、受け入れた。
 それだけでは、無かったけれど。



 僕だって……抱かれたいと、思っていた。











 それだけだって、僕は幸せになれたんだ。

 ポッターの目が見ているのは、僕じゃなくて、可愛そうな僕を救う正義感だって……そう、思っていた。
 それ以上の感情は欲しくなかった。


 でも、僕は……。


 僕の頭の中に起爆剤が仕込まれている。




 助けて。



 そう、言ったら……真実を話したら、ポッターは僕を救ってくれただろう。


 あいつの正義感は、ヘドが出る。


 助けて。

 何度も口をつきそうになった。




 恋で人は死ねると思わないか?


 僕は、ずっと彼に恋をしていた。幸せになりたかった。僕を映さない彼の目に絶望していた事もあった。


 恋のために人は死ねると思わないか?



 僕が、頭の中にある情報の鍵を解けば……ポッターに、危害が及ぶ可能性があるんだよ。


 もし僕が魔法省にこの事を伝えて、僕が無罪になっても、保護は得られないだろう。
 僕は、恐怖に脅えながら、いつか殺されないかもしれない。


 ポッターとは一年間と言う契約なんだ。自己満足の正義感を満たすためだとは言え、これ以上、嫌悪する僕の事を保護したくないだろう?

 彼の迷惑になりたくない。
 重荷になるのは嫌だ。
 嫌われたくない。
 危険が及ぶかもしれない。











 本当は、お前の気持ちなんか、知っていたんだ。
 気付いたのは、僕がポッターの家で暮らすようになってからだけど。



 思いつめたような、切羽詰った視線で。

『マルフォイ……僕は』







 それ以上の、ことは聞きたくなかった。聞けなかった。聞いてはいけなかった。
 もし、ポッターが僕を好きだったら、僕は彼に甘えてしまいそうだった。



 助けて。

 って、言ってもいいような気がしてしまいそうだった。
 彼は、僕とは違うんだ。


 彼は僕を自分の正義感と偽善心を満たすためだけで僕を助けようとしたんだ。と、そう僕は信じていなければならなかった。だって……






「帰って来るよね?」





 最期に聞いた、ポッターの、声が、耳にこびりついて離れない。


 僕は…………お前の元に帰っても良いの?




「何か思い出したか?」





 帰りたい。
 僕は、あの場所に帰りたい。
 僕は、今、封じられた記憶の恐怖と同じぐらいの強さで、ポッターと離れる事を辛いと感じている。
 帰りたい。
 僕は彼のいるあの家に帰りたい。
 それでも……



「僕は……」