このお話は性的な描写が含まれます。苦手な方、16歳未満のお客様は以下はご覧頂けません。


















「約束、だよ?」



































 僕はマルフォイが好きだった。




 僕自身その感情に、好きだと気付いたのは彼の視線に重さを感じるようになってしばらく経った頃。彼の視線を浴びた時の高揚感は、嫌悪ではないと気付いたのはしばらく経ってからだったけれど。

 彼の中でもとりわけ僕は、視線が好きだった。気が付くといつも僕を見ているアイスブルーに、僕はいつしか錯覚をした。



 あの眼差しは僕のモノだと。

 誰に見られても駄目だ。
 誰の視線でも駄目だった。どんな可愛らしい女の子も、僕には足りなかった。あの眼差しでなければ、足りない。

 いつしか、僕は彼を全て僕のモノにしたいと、欲していた。
 僕を見つめる視線に、いつしか彼は僕のモノになると期待をしていた。






 僕は、彼に僕の心を伝えた。押し込めておけるほどに穏やかな感情ではなかった。伝えたのではなく、吐き出した。好きだと、君を手に入れたいと。
 ……それでも、彼は僕のモノにならなかった。




 マルフォイは僕の気持ちを知って、嘲笑った。
 彼は僕を嫌いだと言う。

 だからって、はいそうですかと、諦められる感情なら僕は伝えることすらしなかった。伝えたんじゃなくて、吐き出したのだから。諦められるくらいなら、僕はそのまま閉まっておいた。そのうち醒めることを期待して、僕だけの心のうちに留めておけばそれで良かった。

 嫌われていることなんか始めから理解していた。僕だってそうだったのだから。



 君は、僕のモノになればいいんだ。







 彼は僕を嫌いだと言った。




 そんなの、初めから知ってたよ。僕達は互いに嫌悪を表すことで成り立つ関係だった。
 受け入れてもらえないだなんて、解っていた。そんな事あるはずなんてないと思ってた。期待なんてしてなかった。君は僕のものだ。君の視線は僕以外誰にも向けちゃいけないんだ。期待なんてしていなかった。そんな仲じゃないことは僕が一番良くわかっているよ。君は僕を嫌いで、僕を嫌いな君を僕は好きじゃない。好きじゃない相手を好きになれるほどお人好しじゃない。そんな、風に僕は思っていた。隣人を愛せだなんて昔の偉い人は言っていたけれど、戦争していて、先に愛した方が損をするんだ。僕は君を嫌いだ。君だって僕を嫌いだ。それだけだった。だから、僕は僕の気持ちに気付いた時に、何よりも先に敗北感を覚えた。それでも僕は彼を見つめた。それ以外視線が向かなかった。気がつけば彼を目で追った。彼の眼差しを、他の誰かで紛らわそうとも思ったけれど、失敗した。誰もマルフォイの代わりになんてならなかったんだ。僕はマルフォイが欲しいんだ。そうしないと僕の空白が埋められない。僕は彼を見つめた。彼が僕に同じ質量を持った視線を返してくれることを期待して僕は彼を見つめた。そのうち、それだけじゃ足りなくなった。彼の視線だけでは足りなくなった。もっと欲しくなった。全部欲しくなった。
 だから、僕が彼に僕の好きだというこの気持ちを伝えたのは、ほとんど生理的な欲求と同じだった。




 僕だって君を嫌いだったんだから、君だって僕を好きになるはずなんだよ?







 僕は、彼を組み敷いた。乱暴に襲って無理矢理犯した。
 床に叩きつけるように押し倒して、頭を押さえつけてキスをして、手首を押さえつけて彼の身体に噛み付いた。
 細く折れてしまいそうな身体に強引に押し入って、何度も僕の腰を打ちつけた。
 マルフォイは、嬌声ではなく、苦痛の悲鳴を上げた。
 僕の大好きな色をした瞳から、幾筋もの涙が零れた。






 泣いているマルフォイにすら、僕は煽られた。







 ――本当は好きになって欲しいのに……








 それでも、僕は彼から離れられなかった。突き放されたって僕はマルフォイがいい。












 僕の感情を吐露してから、僕はもう何度も彼を抱いた。何度目になるのだろう。ここの所、毎日。
 だって、僕を止める手段は僕にはわからないんだ。


 ごめんねって思う。
 優しくしたいって思う。
 大切にして、大事にして、真綿で包むように、彼を抱き締めて。
 そうしたら、僕を好きになってくれるかもしれない。

 僕が自分じゃ、止められないんだ。




 それでも、僕を嫌いだと言うその口で彼は僕のキスを受けた。




 嫌だと言いながら、マルフォイは自分から腰を振ってきた。

 だって、君だって悪いんだよ。
 僕のこと嫌いなんでしょう?




 それでもこうするのは好きなんだ?






「淫乱だね」

 僕は、そう言って、侮蔑の言葉を彼に投げる。マルフォイはその言葉を受けると、身体を弛緩させる。







 僕は、一時的にでも、どうすればマルフォイが僕のモノになるのかを解っていた。それが卑怯な手段で、プライドの高い彼が、その度にきっと僕と自分を軽蔑していくだろうと……、それでも僕は君が欲しかった。



 首筋を舐め上げて、彼の耳に鼻先を埋める。
 シャツのボタンを外して彼の真っ白な肌を撫でるだけで、彼は拒絶の意思を失う。

 それからは、僕の思い通りだ。






 キスをして、君から僕にキスをして。
 触って欲しい?
 シャツのボタン外して君の綺麗な肌を見せて。そう、自分で脱いでよ。下着も全部。
 ねえどこに触れて欲しい? どこが気持ち良いのか言ってみて。
 君の可愛らしい声が聞きたいんだ。
 こんな目立つ場所に痕が残っちゃったね。ほら見てごらん、綺麗だよ、君の白い肌にこんなにつけちゃった。
 触って欲しい? どこに? 
 ああ、まだ触ってもないのに、そんなに大きくしちゃったんだ。
 僕のも舐めてくれるよね? 君のこの可愛い唇で僕のにキスをして。奥まで。そう、いい子だね。
 これ、挿れて欲しい? どこに?
 自分で解しておいてよ。僕が見ててあげるから。
 泣かないで。ほら、ご褒美あげるから。
 君が自分で挿れてみて。
 動いて欲しい?
 気持ちいい?
 好きなんだね?
 こうするのが好きなんだね、     君は………





 ………僕の事を嫌いなくせに。


 彼はとろけた目で、僕の言うなりだった。











 それでも僕は、彼の心が欲しかったんだ。


 制服の姿で会うマルフォイは、いつものように鋭利な美貌に冷笑的な無表情を張り付け、少し低い目線で僕を見下していた。
 僕も同じように彼を睨み付ける。ただ、僕の視線の持つ意味だけが違う。

 君が欲しいんだよ。



「ねえ、また今日もあの部屋で会おうよ」

 僕は周囲に誰もいないのを確認して彼を柱の影に引っ張り込んだ。目につきにくい場所だけれど、それでも人が通らない場所じゃない。

 抱き締めてマルフォイの香りを吸い込む。
 フレグランスはいつも同じものだった。首筋から薫り立つ。決して甘くない、透明度の高い薫りが、彼の存在感を引き立てた。


「僕はお前の指図は受けない」


 僕に抱き締められたマルフォイは、がちがちに身体を強張らせていた。怖いのかな、僕が。
 怖がらせたりしないよ。
 僕は君に尽くしてあげているんだ。

 それでも僕の腕を振りほどかないのは、君だって期待しているんでしょ?



「ねえおいでよ」

 僕は彼の耳朶の柔らかさを唇で確かめる。僕は彼の身体に回す腕に力を込める。
 彼の足膝を割って、僕の膝で刺激してあげた。


「んっ……」

 知ってるんだ、足を使って彼の股間を摩擦すると、ほら、君から僕に抱きついてくる。
 マルフォイの細い腕が僕の首に巻き付いた。彼の身体をどうやって触れれば、どういう反応をするのか、僕は誰よりも良くわかってる。



「……行か、ないっ!」

 まだ? まだ足りない?



「いっぱいしてあげるからさ」


 キスをして、彼の柔らかく小さな唇に僕の唇をくっつけて、何度もその感触を確かめて、充分味わってから、僕はマルフォイの口腔内に舌を侵入させ、蹂躙する。
 首を振ってきたから、頭を押さえて、柱に押さえつけるようにして、僕はマルフォイの口を楽しむ。
 この口が僕を嫌いだと言うのに、こうやって僕の舌で感じる彼の口内は僕を受け入れる。

「………やっ…」

 厭なの? まだ足りないんだ?

 きちんと着こなしたシャツをズボンの中から引っ張り出して、下から彼の素肌に触れる。
 脇腹を何度か撫で上げて、指が胸の突起に到達させた。


「あっ……ゃ」


 指先で押し潰すように何度かそこを触ると、マルフォイの腰が揺れて、彼は自分の股間を僕の足にこすりつけてきた。


 ほら、落ちちゃいなよ。



 君はこうするのが好きなんだろ?
 君の性癖を知ってる奴なんか僕しかいないんだから。君はプライドの塊なんだから、こんなことしてくれる奴を見付けることなんかできないだろう? 君はこうやって僕に女みたいに扱われるのが好きなんでしょう?




「ねえ、放課後あの空き教室においでよ」

「………や…」
 涙の滲んだ瞳はたいそう僕の嗜虐心を煽ってくれた。


 でも、ほら、もうそろそろタイムアウト。
 次の授業が始まっちゃうよ。
 君が頷いてくれなきゃ……




「このままここで、最後までされたいの?」


 僕は、手の動きを止めて彼の目を見た。
 涙があと少しで零れるほどに、瞳が潤んでいる。


「耳を澄ませてごらん? ほら、足音だ。誰か来るかもね」

「…………」

 マルフォイが、僕を見た。
 その瞳が好きなんだ。
 君の瞳が映すのは僕だけでいい。



 足音なんて、本当は僕には聞こえなかったけど。でもマルフォイが僕に預けていた身体を強張らせたから、きっとマルフォイには聞こえたんだね? こんな時間にこんな場所を通る人なんていやしないよ。


「君が来るって約束してくれるまで、やめないよ?」




 僕はマルフォイの視線が好きなんだ。

 その目で、その赤く潤んだ目で僕を睨み付けてくれない? 僕だけを見てくれない? 君は僕以外見ないでよ。ねえ、僕のものになっちゃいなよ。




 僕は彼の身体を離した。

 僕が足と腕を解放すると、彼は柱を伝ってズルズルと床に座り込んだ。

 赤く上気した目で、赤く濡れた唇で、ぼんやりと僕を見上げる。



「だから、放課後あの部屋で待ってるよ。あとでいっぱいしてあげるから、ね」



 意思のない瞳で僕を見つめたまま彼は頷いた。
 今、彼の瞳には、彼の中には僕だけしかいない。


 ああ……これだけで僕は達ってしまいそうだよ。






 僕はしゃがみこんでマルフォイのローブを正す。シャツはぐちゃぐちゃだったけど、隠すくらいはできた。



 僕は、彼の唇に触れるだけのキスをしてあげた。






「約束だよ」






















誤字
はいそうですかと→配送ですか………どこに?
嗜虐心→嗜虐神 ……何の神様だろう。

ジツはコレ、今書いてる話〜。で入れたいシーンがどうにも入らなかった。ので、一話にしてあぷ。
プロット練り直せば入れられそうだけどめんどいから。
そのうち載っけようと思ってる話のニュアンスこんなん。ドラコ視点だけどさ。まあ、違う話ですけれども。
エロ……書きたい気分なんでサァ。でもヌルめですみません。ヌルいよね? ハードエロ書きたーい!!

なんか、今日一日でこれだけ書いた私、偉くない? 普通にいつも通り9時半まで仕事だったしさ。明日は7時半に起きなけりゃ……


ってゆうか。「約束だよ?」って、タイトルじゃねえな……今更考えるの面倒だからいいやあ。

080602