【迷走台風】05







 ゆっくりと、阿散井の手が僕の胸を滑る。
 触られている。皮膚を触られているだけなんだ。そう思うのに……。

「あ……」

 くすぐったいような……皮膚が、じゃなくて、その下に身体の内部に熱が生まれる。

 変だ。
 変な感じ。

 口付けを受けながら、僕の意識は阿散井の手を追いかける。
 胸を触られている……僕は女じゃないから、柔らかくもなくて、つまらないだろうと思うけれど……

「……あっ……んっ、ぅ」

 阿散井の指先が、触れる度に、身体に熱が広がる。じんと痺れるような疼きが、僕の身体から力を抜いていく。


「石田……」
「……んっ……あ、なに?」
「気持ちいい?」

 気持ちいい?


「解らない……」

 解らない……ふわふわとして、僕の意識が拡散していくような酩酊感に溺れるのを僕は止められない。止めようという意思もどこかに行ってしまう。

「……そっか」


 解らない、で、阿散井は何か解ったんだろうか。でも、解らない。今僕がどうなっているのかもよくわからない。
 解らないけど……でも、嫌じゃない。


 身体中触られて、力が抜ける。

 僕ばっかり……僕だけこんなになって……。



「阿散井……」

「ん?」

「阿散井はいいの?」

 さっきも、僕だけ出したし……。


「俺ははこっちでさせて貰うから……」



 そう言って、阿散井が触ったのは………







 ……そう!


 お尻の穴っ!



 そうだ。
 そうだった、僕達は男同士だ。

 セックスするための穴は存在していないから、代用できる穴は一つしかないっ!


 ………いや、知ってたけどねっ!
 そりゃ、一生使うことの無いと思っていた無駄知識は、耳に届いたクラスメイト(女子)の雑談から知ってしまっていたけどね!


 ……無理、じゃないか、やっぱり……。
 どう考えたって、出すことを目的とした器官であって、進化の過程で入れることなんて想定して作られているはずがないんだし。



「少し気持ち悪いかもしんねえけど、我慢してくれ」


 そう言って阿散井は、僕の膝を抱え上げて、持ち上げた。


「やっ……!」

 何だこのポーズはっ! せめて明かりが消えてて良かったとか思う以上に!


 僕の両足は持ち上げられて、阿散井が僕の足の間に顔を埋めた。腰も浮いていて……。


 小学校低学年の頃、体育の授業で後転ができない子みたいな格好って、一体っ!
 このまま後ろに転がって逃げたいけど、そんな場所もないし、第一、阿散井ががっしり腰を掴んでいて動けないっ!



「っや……いや……ぁっ」

 びくともしない。
 足をばたつかせたり、手で布団を掻いてみたりして暴れたけど、全然動けないっ!

 なんて力だよ!

 いや、それはないだろ?
 僕だってそれなりに鍛えてるんだ。滅却師はスピードも重視するからそんなには筋肉はつけられないけど、だからと言っても少しは鍛えてるんだ。

 それなりに、びくともしない。なんだそれ。僕だって一応ちゃんと男なのに、全力で抵抗してもどうにもならないって、何だよそれ!



「ひっ……や、やだっ!」

 ぬるりとした感じがした。




 もしかして、舐められてる? 今の感触は、阿散井の、舌?

 そこ、舐めてるのっ!?



 だって!
 それは、ダメじゃないか?
 義骸だからどうだとか以前に、それはまずいだろっ!  衛生的にまずいだろ?



「やだっ……阿散井っ! 離して」



 ぴちゃぴちゃと音が耳に届く。
 濡れた感じが、皮膚を粟立てる。

「やっ……あ、ああっ」


 穴を舐められて、袋の方まで舐められてるのって……!




「あっ……あぁっ、んっ」


 なんとかしようと阿散井の頭に手を置いたけど、びくともしない。

 それに、力が入らない。


 力が抜ける。

 太ももで阿散井の頭を挟んで、なんとか止めようとしたけど、太ももの内側を舌が這う感覚が、耐えられない。


「あ……ぐっ……」




 指が、中に沈んだのが解った。
 僕の中に、ゆびが……。

「んっ……ゃあっ……やだっ!」



「悪い、我慢してくれ」

 我慢?


 我慢って何だよ!


 中を探られて。




 指が動いてる。中で。
 僕の中を指が動いてる。
 指が、増やされたのが解った。


 入り口を広げるようにして、僕の中で阿散井の指が動いてる。気持ち悪い、僕の中を、掻き回している……。



「あ…はぁっ……んっ……やっ」

 指が、中で動いて……


 一部分を指が掠めた時に身体が跳ねた……。

「ああっ!」


 ……なに、今の?

「ん、ここか?」


 阿散井がその場所をまた触った。


「やっ…ああっ……やあっ! あばら、い……そこ、嫌だっ」



 変だ。
 なんで?

 頭が真っ白になる。


 逃れようと暴れたけど、動けなくて……。

「ひっ……」


 ぺちゃりと音をさせながら舌が這う。

 中を触られて。




「………あぁああっ!」





 僕はまた……イってしまった………。






 腰を持ち上げられていたから、全部自分の顔にかかった。

 びくびくと身体が痙攣するたびに、溢れ出した精液は僕の顔に垂れてきた。







「……あ」











20120917