【加圧型ラバーズ】06
一護が石田を誘ってから、晴れてる日は、屋上でのランチタイムが俺と水色と茶渡と一護、それに石田で一緒に食べる何故か毎日の恒例行事。 勿論話したらいい奴だったけど、話してみないと石田がいい奴だなんて全然気付きもしなかったし、そもそも授業や学級活動の用事以外のネタで石田と喋る事を考えた事すらなかった。 なんで一護はアクの強い奴ばかり友達なんだろう……って、時々しみじみと実感する。 チャドといい、石田といい、一護が友達じゃなかったらきっと俺は話す事もないまま進級したら普通クラスと進学クラスと別れてそのまま卒業しちまうところだったんだろう。 てか俺は普通のちょっとイケメンの男子高校生なのに、そもそも何で一護と友達なんだ? 一護と友達になれたのは嬉しいけど、そもそもの馴れ初めが思い出せねえ。たぶん水色と一護の席が近かったとかだったと思う。たぶん。 本当、人生って何が起こるか解んねえとか、しみじみしながら購買で買ったパンを噛み締めつつ、一護や水色や石田の弁当をチェックする。 チャドはいつも通り、コンビニの惣菜パンとか。袋に「10円引」の赤いシールが付いてたから、昨日の夜スーパーで買ってきたんだろう。 水色は……どっかのお姉様に作って貰ったンだろう、海苔がハート型に細工されてたりして、羨ましい事この上ない。旨そうって以上に愛情が他人の羨望を注ぎそうな弁当を、当たり前のようにハートから食うんじゃねえ。俺にも分けろ! 内容じゃなくて愛情をお裾分けしてください。 で、 「一護は今日購買なんだ?」 珍しい。 いつも旨そうなオカズを詰め込んだ弁当を持って来てたのに。昨日の残りもんだって言うけど、毎日毎日味気ない購買の俺より何倍も恵まれてることに気付けって思うけど、今日は俺と同じ焼きそばパン食ってる。 「ああ。昨日は妹が具合悪くて夕飯が店屋物だったから、今日は弁当なし」 「大変だなあ」 一護にお母さん居ないっての聞いてるけど、妹さんてよっぽど出来た妹なんだろう。 双子の小学生らしいけど、あと5年くらいしたら紹介してくんないかな。可愛いかな。一護に似てたら怖いけど。 「あれ? 遊子ちゃん、風邪なの?」 へえユズっていうんだ? てかもしかして、黒崎さんちは果物シリーズか? もう一人はミカンとかだろうか。 てか石田は一護の妹のこと知ってんだ? 「ああ。熱で今日学校休んで寝てる。親父が居るから心配ねえけど、飯がな……。夏梨は料理一切できねえし」 あ、やっぱ果物なんだ。 「じゃあ明日休みだし、ご飯でも作りに行こうか?」 え? 高校生男子が他人ちの台所に立つの? なにその有難いけど微妙な構図。 「マジで? 助かる。親父も夏梨もお前の飯また食いたいって言ってるし」 またっ? って前科持ちか? 一護と石田の仲良しは家族公認なわけか? 「いいよ。じゃあ、遊子ちゃんは何食べてんの?」 「……レトルト、温めるくらいはできるけど」 「解った。お粥も作らなきゃね。一度帰ってからでいい? しばらく雨が降りそうもないから洗濯物出してきちゃった」 なんだその主婦みたいな話は。いや、でも一人暮らしって事は自分の事は自分でやらなきゃなんで、俺も一人暮らしとかしたら毎日の洗濯物の心配とかするようになるんだろう。 けど、やたらと似合うのが違和感って言うかなんつうか。 「あ、じゃあ、帰りに俺も一緒にお前んちに行くわ。置いてったの取りに行く」 「ああ。洗濯して僕のと一緒にアイロンかけてあるから」 「おう、サンキュー」 ……えと、今の部分、会話、イマイチ飲み込みきれない。また二人だけの会話しやがってたよな。 一護は一体何を忘れてったんだ? 最近、一護は石田んちによく行くみたいだけど……洗濯するったら服だろ? 服なんか忘れるか? 暑かったから、ニットとかパーカーとか脱いで、忘れたとかなんだろうけど……。 いやでも、アイロンって言ったよな? アイロン必要なもんったら学校指定のシャツくらいだろ? 一護の私服は何度か見たことあるけど、あんまりアイロンが必要そうなパリッとしたシャツとか着ねえよな? だったら、一護はやっぱシャツ忘れたのか? 学校指定のシャツなんかに俺はわざわざアイロンなんかかけねえけど……確かに石田はいつも襟とかビシッてしてるから、かけてんのか? そもそも何でシャツなんか忘れるんだよ? シャツを忘れる状況を俺が推測するとしたら、学校帰りに行って、汚した……だけなら、シャツくらい丸めて持って帰るよな? いや、忘れたって言ってねえか。置いてったって……言ったけど。 もしかして……泊まった? ああ、最近一護は石田んちに時々泊まりに行ってるみたいだし……。 遊びに行って、石田んちに泊まって、そのままシャツ置いてったとか……だろうけど。一護は着替えの服持ってったのか? 「僕が貸した奴はどうしようか」 「あ、そか」 あ、そうか。石田の服借りて帰ったのか。うわー、服の趣味とか違いそう。それに身長はそんなに違わないけど、石田の方がワンサイズ小さそうな気もする。 「じゃあ、洗濯したら持ってくる。月曜でいいか? アイロンは……」 「しなくていい」 いや、今日、一護のうちに行くんだろ? その時持って帰ればいいんじゃねえの? まだ洗ってないとか? 「指定のシャツはあんまり持ってないから、忘れるなよ」 って、もしかして、石田が一護に貸した服って、石田のシャツか? 指定シャツって、学校指定のシャツって事だろ? って事はもしかして泊まりに行ったのって平日かよ。 ちゃんと家に帰れよ不良息子! 「てかお前のシャツ、キツいな」 「そう? Sサイズだけど」 石田、S着てんのかよ……肉つけろよ。 「だからか。さっきから動きにくくて仕方ねえ」 って……今の話かよ! って、もしかして、石田んちにお泊まりしたのは、昨日の話ってことですか!? で今日は石田が一護んちに行くわけだろ? 毎日夜まで一緒? 何だか、いや、良いけど。 うん。友達が仲が良いことは良いことだ! などと、無理矢理納得してみる俺。 → 20120530 |