【Full Moon 2】 22
「黒崎……何笑ってんだよ」 「いや、なんか。お前の事、初めて抱くみたいだって思って」 何度もやったけど、でもなんか……石田って確かにこういう奴だし、石田だったら、こういう反応するんだと思う。だから、何か……初めてじゃねえのにはじめてな感じがした。 それに、俺も男なんで、やっぱりされるよりもしたい方だから。 血を飲んで積極的な石田も良いけど……こうやって俺が主導権持たせてもらうのも、なかなか……というか、むしろ。 「何だよ、それ?」 「うん。お前の事、やっぱり好きだなって思った」 「………」 好きだって、想いが届いてない時はあんなに重たい一言だったのに、石田が受け取ってくれるってわかったら、何の抵抗もなく口から出てきた。いや、やっぱちょっとは恥ずかしいような気がするけど、それでも伝えたい気持ちと天秤にかけたら言いたい方が、はるかにでかい。 それに……こうやって、見る間に赤くなる石田が愛しくてさ。 気持ちを態度で表現するなら、抱き締めて、キスして、何度もキスして、それでやっぱりもっと深いところで繋がりたい。 二人で、同じ体温共有したい。 「いい?」 「…………うん」 石田の事優しくして、すげえ大事にして、俺が居るってそれを全身で解らせてやりたくなった。俺はそれをどうしても石田に伝えたい。 お前には俺がそばに居るからって、身体にも刻み付けてやりたくなった。面と向かって言ってやってもいいけど、きっと言葉なんかよりももっと確実だと思う。 時間かけて中を解してから、中に入って、繋がって。 苦しそうだけど、俺が心配になって訊くと、それでも大丈夫だって、そう言って石田が笑ってくれた。 「石田……大丈夫か?」 ちょっと、辛そうにしてたから、顔にかかる髪を払い、石田の顔をのぞいた。 「うん……大丈夫。気持ちいい」 好きだって、思う。 「好きだ」 「うん」 「本当に好きだからな!」 「解ってるよ」 「お前は?」 言いたくないのか、石田の手が背中に回って。 まあ、コイツらしいやって。 腰を押し付けるように動かして、自分の欲求で壊しそうだから、優しく、時々焦らしたりしながら、石田の反応見て。 俺の下で、耳まで真っ赤にして、シーツ握って、鼻にかかったような湿度の高い吐息の混じる声を、頑張って押さえながら……。 「石田……」 「……黒崎」 こっち見た濡れた黒い瞳に吸い込まれちまうかと思った。 なんか、くすぐったくて、目が覚めた。 いや、まだ半分以上寝てるけど、なんとなく意識が浮上してくる。 まだ寝てたいけど、そろそろ起きた方がいいかなって、どっち付かずな微睡みで、そんなんがけっこう気持ちいい。 目蓋とか。 頬とか。くすぐったい。 ふわりと柔らかくて、くすぐったくて…… この感触って、なんか……キスされてないか? 俺にキスしてんのって、隣に寝てるはずの石田、だよな? 他に誰も居ないし。居ても困るけど。 だから、今俺にキスしてんのって、石田……だよな? 目開くと、やめられそうだから、そのままにしといたけど、石田はずっと俺の顔にキスしてる。 頬にも、鼻先にも、額にも、唇にも優しく降らすようなキスを何度もしてくれる。 「黒崎……好きだよ」 静かな声……。 聞き取れなくて空耳に似た声だったけど……ちゃんと、今、石田が俺の事好きだって言った。 聞き間違えたかと思ったけど、もう一度長いキスが唇に降ったから……。 ……やっぱり顔が、緩んだ……のは、仕方ないと思う。 そんなんやられて我慢できねえって。 好きだってさ。ちゃんと、今石田の口が言った、確かに言った! 「黒崎、起きて……」 頬がにやけちまったから、仕方ねえ。 起きてたのバレたなら仕方ねえ。 だから腕回して抱き締めた。逃げようとする身体を引き寄せて、俺の腕の中に閉じ込めた。 「黒崎っ!」 「いや、寝てるから、俺」 実際、寝てたし、うんまだ寝てる。 「今の、まさか……」 「いや、寝てるから。続けてていいぜ」 「………起きてんだろ!」 「いや、寝てるって」 だからさ、聞こえてねえから、言うなら今だぞ。 って……意味で。 抱き締めた。 これもただの寝相だから気にすんなよ。 しばらく石田は俺の腕から逃れようとして暴れてたけど、俺が離さないってのが解ったのか、小さく溜息を吐いた。 「じゃあ、ちゃんと寝ていてくれよ?」 「おう」 「黒崎……僕は………」 そっと、俺の頭の中に、注ぎ込むように石田の声が入ってくる…… 了 20120119 |