【Full Moon 2】 06
俺が、石田にこんな風に血をあげなくても、苦しいだけで、飢えて死ぬわけじゃない、満月終わるまで我慢してりゃいいって言ってたけど。確かにそうなんだろう。今まで俺が血液提供する前までは、石田が誰か飲んだりなんかしてなかったはずだ。 石田の他に吸血鬼の知り合いなんか居ねえから、満月になるとどうなるかなんて、俺にはわかんねえけど、俺が血をやる時の石田、目の色も変わってるくらいなんだ。いつもは漆みたいな深い黒なのに、満月の時だけ、血の色みたいに赤くなる。遠い昔の先祖が吸血鬼だったって言ってたけど、満月の時だけは、石田が本当に吸血鬼だって、そう思う。 血を飲まない時は、普段から白い肌が今にも倒れそうなくらいに青くなって、真っ直ぐ歩けないくらいにふらふらしてて、すげえ辛そうなの、わかる。 血を飲んでる時、本当に旨そうに飲んでる。俺なんかの血が旨いのかわかんねえけど、すげえ嬉しそうな顔する。 最初の頃より血を吸う量も増えたし、前よりもっと貪欲になってきてる気がする。きっと気のせいじゃない。 もし、俺が血をあげなかったら? そしたら、石田は我慢できなくなったら他の奴の血を飲むんだろうか。 そしたら、そんなの許せるんだろうか。 「黒崎っ……も」 「ん?」 「も、指いやだ……」 ずっと、指入れて中を解してた。石田の声に煽られて、ずっと触ってたけど。石田のは赤く立ち上がって、腹につきそうなくらい反り返って、先端から透明な滴を垂らして、腹を濡らしてた。 「なあ、どうしたい?」 「あ………」 指を抜くと、石田は不安げな声をだした。 「何が欲しい?」 解ってる事を、訊いてる。 顔を覗き込むと、石田の潤んだ瞳とぶつかった。いつもなんかは、こっち見る時は真っ直ぐな眼光で射抜くように見るくせに。じんわりと滲んだ涙が、こぼれそう。 別に、卑怯だって解ってるから、俺が酷い事してんの解ってるから。 俺以外の他の奴でもいい血液とかじゃなくて、俺の事欲しいって、言って。 お前に必要なのどうせ俺の血だけだろうけどさ。 そんなの、解ってるから。 解ってるけど。 俺、お前の事、好きなんだ。 「なあ……何が欲しい?」 石田の顔を覗き込んで、頬に手を添えて俺の視線と合わせる。宥めるように微笑むと、石田顔が泣きそうな表情を作る。 でも、目を逸らさせない。 今だけは俺だけ見てろ。今だけでいいから、この時だけでいいから。 石田は嘘吐く事に罪悪感があるから、目を合わせたまま嘘吐けないって弱点があるのにはこの前気付いた。 だから逸らさせてやんねえ。 今だけでいいって。 今だけでいいから……俺が欲しいって、言って。 「黒崎が……欲しい」 消え入りそうな声だったけど。 「……いいぜ」 今解した後ろの入り口に俺の先端あてがって…… 「ぁあ…あ…」 ゆっくり、少しずつ押し込んで行く。 ゆっくり石田の中に埋まっていく。 熱い熱に包まれて、狭い中に押し込んで擦れる感覚に理性が吹っ飛びそうになる。 「石田、大丈夫か?」 「……ん」 「辛かったら、言えよ」 言ったって止めらんねえかもしれねえけど、それでも我慢できるところは我慢するから。 出来る限り辛い思いはさせたくない。出来る限り優しくしたい。俺の全部押し付けたりしたら、こいつ、潰れないか心配だ。 優しくしたいんだ。 無茶、させてる事ぐらい解ってる。 男の身体はこんな事するように出来てないんだ。 俺が惚れたから。 惚れたから、俺の血やる代わりに、こんな事で繋がろうとしてる。 血を飲むと石田は酔っ払いみたいに理性無くなるから、だから俺にこんな事強要してんだ。 俺はただ、石田に好きになって欲しいだけなんだ。 → 20111213 |