【Full Moon 2】 03
限界……なんて、もうとっくに過ぎたと思う。 もし、石田に惚れて無かったとしても、普通に別の女に惚れてたとしても、この石田目の前にして、何にも反応しない奴なんて絶対居ないって思えるくらいには、エロい。 石田がまだ満足して、まだ俺の血舐めていたいようだったけど、俺は手を伸ばした。 「っ……黒崎……まだ……」 「ん、いいぜ? お前は満足するまで飲んでろよ」 意地悪言ってんだけどさ。 残念ながら、もう我慢できねえ。 こうやって石田が俺の首舐めてんの気持ちいいし、エロくてクるし、でかい猫みたいで可愛いし、好きにさせといてやりたいけど。 俺も男なんで、されるよりしたい派。 服の上から、固さ確かめるように触ってたけど、それじゃ俺が満足できなくて、ファスナー下ろして、下着の間から引きずり出して、指先で触る。 固く、熱く勃ち上がるそれは、石田が感じてる証拠だった。 石田でもこうなるって事だけでも、俺は興奮する。 「ん…やっ……」 高い声を漏らしながら、それでも石田は腕にますます力で入れて、俺の首筋から唇離そうとしない……頑張るな。別に飲んでてもいいけど……でも、そうなると俺もなんか勝負に出たくなる。 石田が着てる服、ベルト外して、ズボン下げて、剥き出しになった部分を握った。 「あっ……あ、ぁ……黒崎っ」 「ん?」 「まだ、だっ……まだ、足りないよ」 「だから、お前は飲んでりゃいいって。俺は勝手に触るから」 血で唇真っ赤にしながら、俺を睨み付ける視線には、普段の冷たい眼光なんか無くて、少し充血して潤んでいた。燃えるような赤い瞳の色が俺を見てた。 怒ったふりしながら、甘えた声出すんじゃねえよ。 「卑怯、だよ、黒崎」 まあ、な。 確かに卑怯だって思う。 だって吸血鬼だなんて、石田の事だから俺にだって秘密にしときたかっただろう。隠せるなら隠しておくつもりだっただろう。どんなに辛くても隠し通したかっただろう。俺だって同じ立場だったら、そうそう口に出せない。 満月になったら襲うかもしんないって宣言して、それでも近くに居てくれるくらい信頼出来る奴なんてなかなか居ない。 俺の事、信頼してくれてんだ……つまり同じ意味で俺は石田の弱味握ってるって事になるんだ。 好き好んで趣味で献血したいって奴じゃない限り、血を吸われたい奴なんて居ないと思う。俺だって石田じゃなけりゃ出来ればお断りしたい。石田だから、喜んで血くらい差し出す。 俺は、石田が吸血鬼で血が好きなんだろうと、満月になると狼に変身しようと、別に何でも良かったんだ。 石田の秘密、俺が知って、石田と俺と、何でもいいから共通点があればそれだけで良かったんだ。 そんで、他の奴に、この石田を見せたくないだけ。 こんな石田を見せたら、誰だって興奮する。 頼むから俺の血ならやるから、いくらでもお前が好きなだけやるから、だから俺だけにしとけよ。 他の奴の血なんか飲むなよ。 他の奴の首に唇押し付けて、猫みたいに舐めてる姿とか、想像しただけで、嫉妬。 俺に、惚れてくれ。 好きになって。 そう言えなくて、ヤらしてって、交換条件持ち出すなんて……我ながら情けないって、思う。 情けないけど、こんな事でもなけりゃ、触る事なんか出来なかった。 好きだなんて伝える手段すら無かった。結局、今でも伝えてもいない。 交換条件が俺が出来た唯一の石田への道のりだった。今だって間違えてないと思ってる。 だからさ。 俺が卑怯だって解ってるから。 触って、いいよな? 「あ……あ、黒崎っ……!」 鼻にかかったような、石田の甘い声聞いてるだけで血が騒ぐ。 石田が俺の手で気持ち良くなってるだけで、俺がイきそうになる。 指先で先端の割れ目広げるように刺激してやると、石田が俺の身体にしがみついて、腰を揺らした。 「もう、ぬるぬるしてんぞ」 「黒崎……や、あぁ」 必死に俺の首に腕回して、首筋に頬を押し付けて……なんか。 目眩がしそう。勿論、貧血じゃなくて。 石田の胃袋くらいの容積の血液なくなったって大したことねえ。もともと血の気は多い方だから、大したことない。 「なあ、石田………」 俺のオネガイ、聞いてくれる? 少しだけ離れて、顔見えるだけの距離まで離れて、石田の真っ黒の瞳を覗き込んだ。 まだ、満足してねえかなって思ったけど、俺もだいぶ我慢したし……。 そろそろ…… 石田は、唇を舐めて笑った。 「交換条件、だろ?」 「ああ。そう。交換条件」 そこに、厄介な感情が介在してるなんて、コイツ解ってねえだろうな。 欲求よりも感情が先行してるなんて、想像もしてねえだろうな。 でも、それでもいいや。 今、お前は俺のもんになってくれるって、それが交換条件。 → 20111206 |