20131010 01
「ごめんくださいー、銀時君いますかー」 昼間っからのんきにな声が玄関から響いた。新八が、玄関まで出ていってる。急ぎだったりすると、ちゃっかり玄関の鍵まで開けて上がり込んでることもあるくせに、傍若無人なの知ってんのに、妙に常識やら礼儀やらにうるさい。 玄関開くの待って、そっからようやく入ってくる。鍵開いてる時は勝手に入って来いってんのに。んで鍵閉まってるときは勝手に開けんじゃねえっても言ってんだけど……。 「銀時、息災か?」 そっか。来たのか。そっかそっか。 「よう、ヅラ。何?」 ここ一ヶ月くらい、姿見なかったけど、別に俺に黙ってどこ行ってたのか知らねえしわざわざ訊いてやる義理もねえし心配してやるつもりもねえけど、今日は帰って俺んちに来たって事は、つまりそういう意味ですね? ヅラのくせに、ちょっと見直したぜ。 「別にこれと言った事はないが……ああ、そうだ! この前途中まで読んだ『マイルド・アサシン』の続きを貸してくれ。あれから小弥太が満月見て大猿になってないか気になる」 「ならねえよ! 何読んだんだよ! 貸してやってもいいけど、その前にスラム街のダンク返せ」 いや、まあ、ヅラだもんな。 もういい加減に腐りきった仲だもんな。素直に俺の誕生日を祝いに来たとか、新八も居るし、素直には言いにくいよな……な? いや……でもヅラだ。 ヅラは羞恥心てのをどっかに置き忘れて生まれてきたような奴だ。こいつらの前でいちいちそんな事、物怖じするような奴じゃねえ……かもしんないけど、どうだろう。ただの杞憂だとは思うが。 「銀さん、桂さんがお土産に大福くれましたが、お茶入れましょうか」 何でケーキじゃないの? ここは定番のショートケーキだろうが。ホールで買ってこいとまでは贅沢言わねえけどさ。いや、ま、大福好きだけど。 「おー、頼む」 「所で銀時。リーダーは? 定春殿も見えんが、散歩か?」 「一時間ぐらいしたら帰ってくんじゃねえの?」 「残念だ。リーダーがこの前話していた映画、俺も見たんだが。サダコが満月見て大猿になって街を破壊するやつ」 「……たぶんそれじゃない」 「そうか。つまらん」 「何? 神楽に用だったの?」 ったく、素直じゃねえなあ。 わざわざ俺に会って俺の誕生日お祝いしに来たって、たまには素直に言ってみたっていいと思うんだけどな。悪いがてめえの事なんかお見通しなんだぞって気分になって、さっさと素直に白状しろ……って、思ってやってる……のは、たぶん俺が正しくていいはずだ。が、何しろ相手はヅラだから、気が抜けねえ。 「んで、なんの用?」 遠回しに訊いてみる。と言うか、ヅラの口からその言葉出すために促してやる。 「だから、特に用事はない……が、どうしたんだ?」 「何が?」 「なんだか顔が気持ち悪い」 ……気持ち悪いって言われた。 「…………別に」 俺、相当今、顔面の筋肉が緩んでいるようだ……一応、自覚ある。 いやさ、こんな年食っちまって、なんだかんだで祝いたいような年齢じゃねえけど、また一年年食ったことが俺の年輪刻んだってことが、誕生日に限って、今日に限って目出度いって不思議な気分だけど……誕生日って、俺が今日で何年生きてきたんだって実感する日じゃなくてさ、 誰かが、俺の事認めてくれるって。 俺にとって、そういう日。 だから、お前が誕生日覚えててくれたんだなって、思うと嬉しい。 g-bun63-02.htmへのリンク→ 20131010 |