たとえ、世界中のすべてを敵に回しても、僕は君を守る 02
布団が山の形にもそもそと動くけど……いい加減にしろって言って布団引っぺがそうって思ったけど……そう言えば、ヅラは布団被ったまま、顔すら見せようとしねえ……。 暑苦しくて傍若無人で傍迷惑な馬鹿でトンマで間抜けで天然記念物な天災的災厄が服着て歩いてるような奴だけど……言ったことないけど、ヅラの髪と顔だけは認めてやってんのに……顔すら見せねえって、何様のつもりだ? 布団被ったまま、俺に顔すら見せようとしないって……何? お前、本当もう長所がどこにもないぞ。もうただの布団の塊だぞ? とりあえず、何があったかは聞きたくもないけど、一応お友達に会ってご挨拶もないってのは、失礼じゃねえの? そっと布団の端持ち上げて、ご機嫌伺いをしようとした…… 時に、血の匂い。 「てめ……」 「頼むから、かくまってくれって! 今、大事な時なんだ! 今捕まるわけにはいかない! せめてあと一週間、いや三日必要なんだ!」 「そうじゃねえ! 別にてめえをわざわざ突き出したりするほど、こっちも暇じゃねえ!」 そんな事しねえよ! そうじゃなくて! お前、怪我してんじゃねえのか? 俺が血の匂いを間違えるはずなんかねえ。 「ヅラ、てめえ……」 なおも布団を頭から被って出てこようとしないヅラに、腹を立てて、流石に力任せに布団ひっぺがしてヅラの手首掴んだ。 両手首を握って、布団に押し付けた。 ちゃんと、顔を見ないと煙に巻かれそうな気がしたから。 馬鹿正直で嘘も吐けない奴だけど。嘘を吐かない代りに、隠そうとしたら、誰よりも上手く隠蔽しやがる。 どんな深手負ったって、笑顔を曇らせたりしなかった事だってあった。俺が気付いて無理矢理寝かし付けて手当てしなけりゃ、その怪我負ったまま生活する奴だった、そう言えば……忘れてたわけじゃないけど、そんな事は普段の俺の安定した生活に埋没してた。 ヅラの髪が顔にかかってる……。 誤魔化されたく無かった。 ちゃんと、事実言わせたくて、ちゃんと俺の目見て話してもらいたかったから、ヅラの細い手首握って、布団に押し付けて、逃げられないようにした。 ようやく見たヅラの顔。 ……そう言えば久しぶりだった。 ヅラのアジトはコロコロ変わるし、常時何ヵ所もあるから、俺から会いに行くことは無いから、外でばったり会うか、ヅラがうちに遊びに来る以外じゃ、会えない。 久しぶりだ。 ヅラの顔見たの。 暇な時は毎日来るくせに、そう言えば、ここ一ヶ月以上……三か月ぐらいか、俺はヅラに会ってなかった。 綺麗な顔してんのは相変わらずだけど。 もしかして、お前少し、痩せた? 電気付けてねえから、暗がりであんまわかんねえけど、顔色悪くねえか? 何が、あった? 至近距離で、少しの誤魔化しも許さねえって視線を強めてヅラを睨み付けた。 俺が言いたいことは視線で全部伝えてある。俺の意図を汲み取れない程度に、俺達もいい加減短い付き合いじゃない。解ってんだろ、俺が言いたい事。 俺の視線に負けたのか、ヅラはふう、と溜め息を吐いた。 「銀時、今はそんな気分にはならないな」 ……違うっ!! いや、まあね。確かに、布団の中でヅラの手首掴んで布団に押し付けてるこの状況って、アレだけど。 昔ふざけてヤった強姦ごっことか、したことあるけど! 俺もそう言うプレイ好きだし、ヅラもヤる時はMっ気強かったから、興奮したし、こんな感じだったかもしんねえけど! 「てめえ、怪我してんだろうが!」 わざわざわざとらしく誤魔化すんじゃねえよ。てめえが演技力皆無なの俺は見抜いてるんだって。それとも、俺の目が節穴だとか思ってんのか? 怪我、してんだろ、てめえ。 「そうか、銀時。そんなに俺の心配をしてくれているのか。嬉しいぞ」 嬉しそうに頬を緩ませるヅラのその笑顔は、悔しいが大輪の花が咲くように艶やかだけど。 わざと、作ってんじゃねえよ。 どんだけ長い付き合いだと思ってんだ。そんなんで誤魔化されるかよ、馬ァ鹿。 いや、心配してんだけど……だけど、んな事をわざわざ主張してやる義理なんか無いからな! 「違うって! 布団汚れるだろうが。クリーニング代請求するぞ」 「………」 ヅラは、俺に押さえつけられたまま、すごい顔して横を向いた。 何その顔。 いや、顔をしかめた所で、コイツは昔からワケわかんねえくらい綺麗なツラしてんだけど、並大抵の女じゃ太刀打ち出来ないくらいの美貌は初めて会った時からだけど、表情が……なんつーか。 忌々しげってか、吐き捨てる感じってか、こっちの神経全力で逆撫でてくれるような表情で……。 → 20111225 誤字 逆撫でて→魚出て |