03(※ここから先は性的な表現が含まれます。18歳未満のお客様は閲覧いただけません)






















 俺の鉄壁の理性が、がらがらと崩れる音がしたのを聞いた。



 理性が、落ちた。陥落した。
 片手で背中を抱き込んで、片手で顔を固定さして、赤い唇に喰らいつくようにして吸い込む。

 柔らかい感触は、崩れそうでそれでも耐えきれずにもっと荒々しく噛みついた。
 深く吸い込んで、桂の舌を引っ張り出して、吸い込む。強く吸い込む。このままこいつの舌飲みこんじまいそうな勢いで、吸う。

「…ん…、んっ」

 苦しげな声が上がり、桂の手が俺の胸を叩いた。
 頭が……ぐらぐらする。熱いものが、駆け上がる。背筋を登って後頭部で弾ける。
 俺のだか桂のだかわかんねえけど、唾液が溢れ出す。
 何だこれ……とまんねえ……。
 顔を振って逃げようとしやがったから……

「んーっ……ん……ん」

 両手で桂の顔固定して、逃げらんねえように………して。
 俺の胸を、叩くが……それは、抵抗なのか? 力なんかまるでない。邪魔にすらなんねえ。

 舌を絡めて、噛みつく。その度に桂が上げるくぐもった声に興奮した。

 斬られたってうめき声の一つ上げなかった奴が……こんな場所で俺にこんな事されて、苦しそうな声出してるのって……すげえ、くる。






 どんくらいかして………。

 ようやく顔を離すと、桂の顔は赤く染まり、瞳は涙で潤み、唇は唾液でベトベトに塗らして……。


 熱い、吐息を漏らした。


「……確かめられたか?」
 不機嫌そうにしかめられた顔。
 俺の手がまだ桂の腰に回ってたから、距離はそんなに離れてない。
 口の周りの唾液を拭おうともせずに、その顔で俺を睨み付けた。


「……いいや」
 まだ。


 俺の、笑顔に桂は顔をひきつらせた。
 まだ、こんなもんで根を上げてちゃ、拷問なんざ耐えらんねえって。


 首筋を噛みつく。
 白い、薫り立つような肌に目眩がする。


「っ………!」

 筋に沿って舐め上げる。
「ふ……ぁ」

 鼻にかかった声が、上がる……。
 抱き込んだ下半身から、確かな質量が触れた……。


 ああ……何だ、やっぱてめえ男じゃねえか。
 てのは、わかった。そんな事、元から知ってる。

 けど、今更、止めようとも思わねえ。



 鎖骨を辿るようにして、舌を這わせる。
 舐め上げる度に桂から鼻にかかったような甘い声が上がる……。
 聞く度に、俺のが膨張してくのがわかった。

 服が邪魔だったから、併せ目を掴んで、左右に割り開こうとした、その手を桂が掴んだ。


「……もう、良いだろ?」

 俺の手首握った手は……今まで以上に強いもので………。
 一応、それは抵抗らしい抵抗だった。それが必死なのが解った。さっきよりも強く押し返されたから。

 俺の手を必死に抑えてた。
 余力、残してたのか?

 つまり、………何か、隠してんのか?


「まだ、確かめきれてねえな」

 誘ってきたの、そっちだろう?
 今更、俺を止めるつもりか? そんな事、もう無理だって解らせてやんなきゃなんねえ。


 袷を握り、左右に割り開く。桂の手は、俺を制止しようと強く握ったが……それだって、たいしたもんじゃなかった。

 まずは、白い肌が覗く。
 赤く屹立した、小さい突起が………そして。


 やっぱり持ってやがったか。


 短刀。
 懐刀を、隠してやがった。


 隙を突くつもりだったかも知れねえが………。
 俺の、視線に、桂が強張った。

「っ……」

 桂が、抜き取ろうと動く。


 その前に、俺が桂の短刀を抜き取った。

「させねえっ!」

 抜き取って投げる。

 短刀は、軽い音を立てて、近くの柱に刺さった。
 それを追いかけようと、桂が俺の腕から逃げようとした。


 二の腕を掴んで後ろ手に拘束し、再び壁に叩きつけた。

「ぐっ……」

 どんっ……と派手な音がしたから、だいぶ強い力で叩きつけたようだ。そんな事ぐらいで壊れるようなタマじゃねえ事ぐらいは、いやって程承知してる。


「ったく、手間取らせやがって」
「………さっさと連れていけばいいだろうっ!」


 肩越しに睨み付ける桂の瞳は、先程とは違って、攻撃的なものだった……。


 とすると、さっきまでの蕩けたような表情は演技ってわけか。

 何か、癪に障る。俺のキスでそうなったってわけじゃなくて、演技だったって事に腹が立つ。



 もっと、こいつが余裕無くした顔が見てえ……。
 演技じゃなくて、本気で喘がせてみてえ。

 だなんて……俺は思った。そんな事、仕事の範疇外で、何の役にも立たねえ事ぐらいは、俺が一番よく知ってんだ。




 白い、肩。その肩越しに睨み付ける、瞳は……今まで俺が見たどんな表情よりも強い眼光を持っていたが……。


「この状態で強がってるつもりかよ」
「もう、良いだろう! さっさと連れて行け!」
「まだ、確かめてねえよ」

「………貴様……」

 開いた胸元には、確かに乳房なんかなかったけど。
 てめえが男だなんて、はなから解ってたさ。


 後ろ手に抱き込んだまま、桂の胸を触る。
 手の平で、滑るようにまさぐる。

「……っ」

 時々、胸の突起した部分に触れると、桂が息を飲んだ。


 さっきまでは、ちゃんと声上げてくれてたのに。
 指先で摘まんで、押し潰す。


「………っ………ん」

 捏ねるように、執拗にそこばっかり触る。その度に身体を強張らせるから……反応は、ある。その部分で感じてるって手応えは、ある。


「声出せよ」

 後ろから桂の口に指を突っ込む。きっちり結んでた口を無理矢理こじ開けて、俺の指を中に突っ込む。
 桂の右腕を後ろ手に拘束してたが……仕方ねえ。
 桂の口の中に指を突っ込んでぐちゃぐちゃにかき混ぜる。
 指先から、温かい唾液が俺の手首を伝う。


 片手で、桂の胸を触る。摘まんで、爪先で、弾く。

「ふ……ぅあ……ぁ」

 四本の指で、桂の舌を弄る度に、唾液が伝う。
 両手が自由になった桂が、俺の両手首を握っていたが……そんなの、何の抵抗になるんだ?

 握ってるだけで……そんなの何の意味も持たねえ。

「……って!」

 俺の、指を噛みやがった!
 血が出るかもしんねえぐらいの力で、噛みやがったっ!

「てめ……」
「いい加減にしろっ!」
「誘ってきたのそっちだろ?」
「貴様………」

 涙で濡れた瞳は、それでも強い眼光を放っていた。

 まだ……余裕あんじゃねえか。
 てめえが、もっと余裕なくしてる顔が見たいんだよ。

 腰を、桂のケツに押し付ける。

「……ぁ…」

 てめえも男だったら、何がぶつかってんのか解るだろ?
 服の裾から腰まで捲り上げて……下着は色気の無い男もんなのは、この際目を瞑る。下着を引きずり下ろして、なだらかな素肌を外気に触れさせた。

「やめろ……こんな場所で……」
「誰も来やしねえよ」

 こんな場所、誰も、来るはずがねえ。
 こんな奥まった場所。物陰にもなってる。誰も気付きゃしねえ、

 誰も来ねえから、てめえが居るんだろ?


「嫌だ!」
「遅ぇって」

 まだ桂の唾液で濡れた指を、中に沈ませる。

「あぁ……っ!」

 中指が、呆気なく中に沈んだ……もしかして、慣れてんじゃねえの、こうゆう事。


 入り口を広げるようにして、中をかき混ぜる。
 内壁を擦るように指先でこすると、桂の入り口は俺の指を飲み込むように動いた。


「あっ……あ……」

 中に、もう一本………。
 ばらばらに、動かすと、腰が揺れる。 


「今、二本入ってんだけど、何本までいける?」
「……や」

 三本目………。

「っ! 嫌だ……、やめ……」
「止めねえよ」

 三本の指で、中を探るように動かす。内壁を刺激する。


「あ、やあっ……や、そこ………やぁ、あ…」

 急に、桂の反応が変わった。抑えてたはずの声が、急に大きくなって。


 腰が揺れる。
 抑えていたはずの声は、高くなり………。



 ここ、か?
 もう一度、同じ場所を、触る。

「はっ……あ……や……やぁっ」

 指に肉が絡み付くような、感触……に指先が一緒に溶けるような錯覚がした。

 指先ですら、こんなに………。
 中に、入ったらどんなに……。



「も……あ……、っ……!」

 急に、桂の身体が強張った。


 中に突っ込んだ指が、飲み込まれそうだった………。



 びくびくと、痙攣して………。




「イったのか?」


 桂の身体から、力が抜けていく。
 ずるずると、押し付けていた壁を伝い、身体が崩れ落ちる。


 地面に踞るようにして……。

 壁に、体重を預けるようにして、肩で息をついている。大きな呼吸を繰り返す、剥き出しの白い肩……。
 後ろから見りゃ、まだ女に見えた。














090307