「………………」
ヅラが、さっきから動こうとしない。
荒い呼吸はしてるから、意識飛ばしたわけでもねえし、死んでるわけじゃねえことが解るけど、さっきから何度声をかけても返事すらしやがらねえ。
さすがに、やり過ぎたかなーって、ヅラを見て反省する……顔中汗とか涎とかでどろどろになってるし、ヅラの足の間からは、俺のと高杉のとが混ざり合ったのが垂れ流れて敷布を濡らしてる……。
「……ヅラ?」
「おい、無事か?」
ヅラがようやく目蓋を持ち上げた………んで、ヅラに、睨まれた……どうやらこれが狂乱の貴公子様の視線だって、思わずこっちの背筋が伸びるような冷たい視線を浴びて、俺と高杉は思わず座り直した……正座に。
しかも俺達が寝てるヅラ見てる構図なのに、何で俺達が見下されてるような気分になるんだろう。
「好き勝手しおって……俺は風呂に行く。気持ち悪くてこのままでは寝られんだろうが。貴様らは敷布を変えておけ!」
「あ……おう」
「解った」
別に、離れでもない部屋だから、ヅラの声外に聞こえてたみたいで、さっきから外に人の気配があるけど、まあ風呂の外で見張ってりゃ誰も入って来ねえだろう。
ここで、俺と高杉が居んのにヅラに手を出せるほどの気概がある奴も居ねえだろうし、居たとしてもヅラがその辺の奴に簡単に手を出されるような真似はしないだろうし、万が一に誰かに襲われたって、ヅラだったら返り討ちが関の山だ。
「一人で行けるか?」
「貴様らの手は借りん」
「……申し訳ありません」
………ヅラは、ヅラのままだった。
いや、最初の時もそうだった。最初からだ。きっと最後までヅラはヅラのままなんだろう。
最初の時は、欲求不満が高じたんだと思うけど、ヅラ見てたら我慢ができなくて襲っちまった。その時も、終わった後に哀愁とか少しでも漂わせる余裕もなく、まず怒鳴られた。しかもヤった事じゃなくて、ヤった場所が気に入らなかったらしい。どうやら背中が痛かったらしく、気を使えって、気が利かない、これだからお前はモテないって後々まで言われて、本当にヅラなんかに手を出さなきゃよかったって後悔するぐらい怒られた。
高杉がヅラとヤった時の事なんか聞きたくもねえから知らないが、相手はヅラなんだからどうせ変わんねえだろう。
起き上がろうとしてたヅラに手を貸そうとしたら、触るなって睨まれた……はい、やりすぎました。反省してます。
「銀時」
「………何でしょうか」
「お前は三十点だ」
「は?」
今、なんつった? 三十点ってなに?
「貴様は面倒がりおって。貴様も少しは動け! 問題外だが、耐久力だけは認めてやる。三十点!」
高杉が横で吹き出した。
へ? なにそれ?
「そして、高杉、貴様も同じだ。35点! お前は自分が上手いなどと勘違いしていないか? 悪いが、決して上手くもないぞ。勝手に相手が感じてるなどと判断するな! よくもない場所をガツガツ突きおって、ちゃんと相手の反応を見るべきだ! しかもしつこいのは、何とかした方がいい」
「……は? え?」
そっか、高杉はねちっこい上に勘違いですかっ!
って思ったら今度は俺が吹き出した。
「ちなみに百点評価で合格は七十点以上だからな。不合格だ」
「………」
「………………」
不合格って………。
「まあ、おかげで、俺も学ばせてもらっているがな。お前らも互いに練習したらどうだ?」
……てか、三十点って何だよ!
そりゃ、二回目からはヅラを上に乗っけてやったけど、下から見んの好きだし、ヅラだって散々喘いで、俺の腹の上にだいぶ飛ばしてたじゃねえか!
そもそも、てめえ! 俺達に中突っ込まれて何回出した!
そもそも、まだてめえ、童貞だろうが! 女と寝た事ねえだろうが! 何だかんだで、黙ってりゃ、ってか、口を開きさえしなけりゃその面構えで老若男女垂らし込むくせに、いざって時にはガチガチの堅物で最後まで出来たことねえだろうが! 知ってんだからな、こっちは、そんくらい!
「敷布、変えておけ。俺が風呂に居る間は入ってくるな」
そう言いおいてヅラは立ち上がって、寝巻に袖を通すと、手慣れたしぐさで帯を締めて部屋を出て行った………。
やりすぎたかって、思ったんだけど、いや、けっこうやりすぎたけど、確かにもう十分馴れたくらいたくさんやった事あるけど、あんま身体にダメージは響いてないっぽくて、どうやら疲れてただけらしい……。
俺は、何も言い返すこともできなくて、ただヅラが行った後にしまった襖を見てる………。
「おい、30点」
「なんだ35点」
さすがに目糞鼻糞な点数つけられて、大してかわんねえだろうが、五点だけ高杉のが気持ち良かったのかよって思うとムカつく。五店程度で浮かれてんじゃねえよ!
高杉と喧嘩することは昔から頻繁にあったけど、さらにヅラはその事に言及して、俺達を不機嫌にさせる天才だと思う。
俺と高杉が仲悪いのは、ガキの頃からずっと、理由がそもそも、だいたいにおいててめえが原因なんだよ!
「いや、悪い30点。ヅラに練習しろって言われたけど、俺、お前じゃ勃たねえわ」
思わず、高杉を殴り付けた拳は、本当はヅラに向かうべきところだったんだろう。
了
9300
20131110
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