※この話には性的な表現が含まれます。18歳未満のお客様は閲覧いただけません













意図





 





「ちょっ、銀時! あッ……待て!」
「待てねえ!」
 ふざけんじゃねえ、待てねるわけねえだろうが!
 お前一体どんだけマテをし続ける気ですか? 腹空かせた犬が餌を目の前にヨダレだらだら垂らしながら、ご主人様の顔色窺ってる時の気分とか、体験したくねえよ。

 ここんところ攘夷やバイトやらでヅラが忙しかったり、俺は俺で結構でかい仕事引き受けちまったりで、せっかくヅラが来てくれても俺がいなかったり、俺が家にいてもヅラが来なかったりとか、延々と俺達の時間が合わなくて、ようやく久しぶりに時間見つけてデートだって意気込んで二人で酒飲むって言って出てきて、ようやくホテルにしけこんだ。
 朝帰りしてあいつらにニヤニヤされるのは勘弁だから、夜には帰んなきゃなんねえってのに、突然マテですか? 何それ?

 さっきヅラが腹減ったって言うから、居酒屋で酒飲みながら俺はずっと待ってたんだよ!
 んなのに、こっちの下半身事情なんかどこ吹く風でヅラは楽しそうに酒飲みやがって。日本酒なんか飲んでないで俺の飲めよって、言いたかった気持ちはぐっとこらえて、ようやくって所なのに

 神楽は夜に見たいアニメがあるとかで夜更かししやがって、新八も風呂場の掃除に目の色変えてたから夜まで帰らないつもりなんだろう。つまり、どうやったって家じゃできねえから、仕事で今日の俺の懐は多少暖かかったから、それ専用のそれ目的で使う宿に入って

 鍵閉めたから。

 ヅラをベッドに投げ飛ばして、帯も外さないで着物を剥いて、ヅラの胸に噛みついた。
 舌先で円を書くように刺激すると固くなってきたから、今度は転がすように舐めてみる。

「っ、待てっ……銀時! 待てって、や……ぁ」
「るせえ、黙れ」

「だから、風呂…まだ…んっ銀時! ああッ」
 いくら止めても止まってやんねえ。
 舐めながら、下に手を伸ばして、下着の中に手を滑り込ませて、まだ半勃ちのヅラのを手の中で揉む。

「やッ……は、ぁッ…っ待て、だから、まだ風呂に……っ」
 てめえだって俺の手で一気に固くなってんじゃねえか。今更何を待てって?
 悪いけど、俺にそんなこと訊いてる余裕ない。そんな紳士的な譲歩してやる義理もねえし。

 足の間から手を滑り込ませて、後ろに指入れようとしたけど、力入れてんのか、第一間接も入ろうとしない。

「ほら、指入んねえだろう! 力抜けって!」
「できるかっ!」

 何今更ぶってやがるんだ? 今まで何回やったか、数えきれないくらいヤってきただろうが、俺達! てめえが淫乱なのはこっち解ってんだって!

「くっ、は…んんッ……やだッ……!」
 指をぐりぐり押し込もうとしても……入ろうとしない。

「やっ、やだ、銀時、いやだ!」
 やだ、じゃねえだろうが!
 とっとと力抜けよ! 早くぶちこみてえんだよ、こっちは!

 って、思ったけど……。


 ヅラの上から退いた。

 わざと冷たい目で見下ろしてやった。

「……銀時?」
「……」
 服も脱がないで、俺がきつく吸ったせいで胸が充血して赤くなって、髪を布団に散らせて、乱れた着物の併せから白くて細い足を剥き出して、上気した顔で俺を見るヅラに、やっぱり襲いかかりそうにはなるけど。

 ぐっと堪える。

「銀時……?」

 俺はベッドから降りて、冷蔵庫を開けた。
 んで、ポケットに突っ込んでた小銭で缶ビールと……。

 ヅラはベッドの上で、乱れた着物を直してたのを視界の端で確認する……何考えてんだ? そっちだってそのつもりだったんだろ? なのになんのつもりだよ? って胸ぐら掴んで問い質したい程度にはムカついてはいるけど……我慢する。

 俺は近くにあったソファに座って、缶ビールを開けた。

「銀時?」
「あ?」
「……その、」

 何か俺ばっかがヤりたがってて、ヅラが拒否すんのが気に入らねえ。
 そりゃ、どっちかっていや、俺の趣味としちゃ積極的すぎるより多少の恥じらいとかあった方が燃えるし、どっちかっていや無理矢理系すんのも興奮するけど。そう言う感じで致しましょうって事なら燃えるけど、今はなんか全力で嫌がられてたような気がする……のは、なんでだ?

 数分顔合わせる程度にはちょこちょこ会っては居たけど、一ヶ月ぶりにヤれるってのに俺ばっかが求めてる構図が気に食わねえ。
 だから、俺はビール飲んで、やる気失せましたーって態度を大げさにアピールした。

「ん? したくねえんだろ?」
「……そう言うわけでは……まだ、風呂に入ってないし……」
 俺もだって、今日はまだ風呂にも入ってない。そこそこ暑い時期だし、それなりに汗ぐらいかいてると思うけど……
 そもそも俺達、何日も風呂なんかには入れず汗どころじゃなく、血まみれで戦ってた頃もヤることやってただろうが。今更気にする事じゃねえだろ?
 それに、ヅラはどっちかって言うと体臭が薄い方だから、匂いがあっても興奮する。風呂なんて終わったあとにすりゃいいだろうが。

「んじゃ、てめえもヤル気だって、見せてみろよ」
「……」
 俺を睨む目は、何か言いたげだったけど、無視する。

「…………」
 睨み合ったまま膠着状態。時間もったいないんですけどー。とっとと落ちてくんないかな。

 ヅラが忌々しげに顔をしかめてから、大袈裟に溜息をついた……なんかムカつく。溜め息付きたいのは俺の方じゃねえの?
「……解った。何をすればいい?」
 まあ、ムカつくにはムカツクが、とりあえず、ギリギリ合格点。

「なに? 教えなきゃできないっての?」
「……具体的には? 俺に媚びろと?」
 一応、そのつもり。

「やる気あんだったら、見せてみろよ。とりあえず、服脱いだりすれば?」

「……」
 すげえ目で睨まれた。いや、まあ流石は狂乱の貴公子とか呼ばれちゃうだけあるぐらいの視線だったけど、別に今更、恥ずかしがることもねえだろうが。どこもかしこも隅々まで見たことありますって。
 ヅラは俺を睨みながら、帯をほどく。
 俺は、その様子をニヤニヤしながら観察する気だった。

 んだが!
 なんで、コイツこんなに色気のない脱ぎ方ができるんだろう……もう、いっそ豪快だ。シャッと音をさせて帯をといたと思ったら、なんか、もう一気にバーンって脱ぎやがった。

 んで、俺が指示する前に下着までちゃんと脱ぎ捨てて全裸になるところとか、面白くねえ。が……まあ……一応俺が脱げって言ったら脱いだわけだから、いいって事にしよう。こんなことでいちいち文句言ってる時間が惜しい。

「んで、こっち来て」
 俺が両手差し出すと、ヅラが俺の手に捕まった。

「で?」
「元気にしてくんない?」
 俺は自分の視線を落として、ヅラに意味を理解させる。

「……解った。手を離せ」
「口があんだろうが」
 さっき手を出したのは、優しさじゃなくて、拘束の意味でね。両手を俺から抜き取ろうとしたけど、しっかり握って離してやんなかった。

「口で、んな器用にできるか!」
 だよなー、お前不器用だもんなー。いや、でもほら、やってみたいじゃん。いや、俺がじゃないけど。ヅラが俺のファスナー口でおろしたりとか、絶対普通じゃするわけねえんだから、そんなのされてみたいじゃねえか。

「やるだけやってみろよ」
 不満そうな顔はしてたが、ヅラが俺の腹に顔を落として、ズボンのボタンを口で外した。んで、歯でくわえて、ファスナーを下ろす……できんじゃん。
 しかも、あまりにも思った以上の器用さだったせいで、一瞬で終わった。
 余韻を楽しむ暇が無かった。


 ファスナーが下ろされると、正直、ズボンの中でキツかったから、すげー解放された気分。元気にしてくれって言っても、さっきからビンビンでしたから。カッコつけてみてるけど、実際はけっこー限界近いから。

 んで、嫌がる口元に押し付けてほらさっさと咥えろよ、とか俺のデカくなったので、白い頬ぺちぺちしてやるつもりだったんだけど……

 俺、まだ何も言ってねえのに、口でパンツの間を探して、俺のをなんの躊躇もせず口に含む……いや、ここの場合、俺のでかくなったの見せつけて、口元にすりつけて、おら、とっとと舐めろよってとこじゃねえの? いや、まあ、結局、舐めてもらうつもりでしたから、結果オーライっていうか、じゃなくて、いや、なんつうの、この微妙な気分。

「んっ……ふっ…んん…」
 にしても、相変わらず、こいつの舌の構造どうなってんだか。気持ち良すぎるって。長年のお付き合いですから、俺のウィークポイント把握されてるわけだけど……昔からの付き合いだから、コイツがうまくなったのは俺のせいだって思うのはまあ、そりゃ嬉しいは嬉しいが……。

 もっとヨダレ出せ、奥まで咥えろよ、舌絡めろ、とか俺が指示したい以上のご奉仕で……。

 じゅるじゅるっと音を立てながら、頭を降るヅラの口の中があまりに気持ち良すぎて……

 ちょ、そろそろ限界ッ……!



「っ……!」


 うわぁ……目の前チカチカする……。
 ヅラの口の中に思いきり吐き出した。
 家じゃ一人だってろくにできねえから、久しぶりにだったにしても、ちょっと情けない早さじゃねえか、俺?


「早かったな」

 ……るせえ。
 顔を上げたヅラのドヤ顔が……すげえムカつく。

「てか、まさか……てめ、飲んだのか?」
「ん? ああ。貴様が気を利かせてちり紙でも用意していれば吐き出したが」
 俺が飲めって言う前に飲むんじゃねえよ! 何飲んでんだよ! いや、飲めって言ってから飲めよ!
「もしかして、自分が出したもの見たかったのか? お前、鼻水をかんだちり紙を見る方だったか?」
 や、遠慮します。別に自分の見たくねえです。

「ほら、いい加減に俺の手を離せ。おかげでバランスが取れなくて俺の超ウルトラスパートラディショナルストロングレロレロスペシャルを試せなかっただろうが」
 何その横文字並べてりゃすげえようなスペシャルは……。

「銀時?」
 いや、まあ、うん。飲んでくれたりすんのも、まあちょっと愛情感じちゃうわけで、嫌いじゃないけど……。俺だってヅラの飲んだことあるけど、ぶっちゃけこいつのじゃなけりゃ絶対に口にしたくねえもんだけど、うん、まあ、だから、俺のなんか飲みやがってコイツぅって、一ミリぐらいは思ってじんわりしちゃったりしたけど、一瞬……。

 でも、そうじゃねえんだよ!
 今日はヅラの顔に飛ばしてやろうって思ってたのに、なに飲んでんの? 顔射は男のロマンだろうが! 綺麗な顔を俺ので汚してやったって、そうゆうロマンが……。



「銀時? 機嫌は治ったか?」

 下から覗き込むヅラの顔。
 少しだけ笑ってる。

「………」
 ……俺は、降参した。
 俺が色々ムカついたついでにしたかった事はまあ、全部やってくれたんだけど、なんかこっちの思惑ぶっ飛ばしてくれやがって……。

 本当に……昔っから、こいつ、顔はいいんだよな。女みたいな綺麗な顔で、真っ直ぐに伸びた黒い髪が肌に映える。長い睫毛は頬に影を落として……見た目だけは、申し分ない。が、本当に見た目だけだって部分は絶対に譲ってやんねえ!

「銀時?」
 ……どうせ、機嫌なんかとっくに治ってんだ。


 俺も男としてのプライドみたいなもんがあるんで、わざとらしく溜息をついて、仕方がねえから言うこと聞いてやるよって態度を見せつけてから、ヅラの手を離してやると、ヅラはヨダレでベトベトだった口の回りを自分の腕で豪快に拭って立ち上がった。
 良く見りゃ、俺の舐めてて興奮したのか、ヅラのもだいぶデカくなって上を向いてた。

 そっか。
 お前だってしたかったんだ。


「で、銀時。続きはするだろう?」

「……ったりめえだ」
 もともとそのつもりだったって。
 俺も立ち上がって、ヅラの背中に腕を回して、片手でヅラの顎を持ち上げて、キスをした。キスをしながら、ベッドの方に促したんだけど……。

 しばらく俺からのキスを受けていたヅラが、突然思い出したかのように俺の胸を突っぱねた。

「銀時、待て!」
 だから、一体なんなんだよ! 何がしたいんだよ! 俺を待たせてなんか得にあるようなことがあんの?

「何? すんじゃねえのかよ?」
 これ以上待つとか、俺が可哀想でしょうが! お前だってさっさと俺のを味わいたいって顔してんだろ?

「いや、だから! ちょっと待てと言っているだろうが。いいから、風呂に入らせろ」
 さっきから、そう言えば風呂だって言ってたな……。そんなに風呂に入りたかったのか、こいつ? 別に、もういいけど。これ以上もめたら、今度はこいつの機嫌損ねそうだ。そしたら本格的なお預けを喰らうことは目に見えてる。長年の付き合いだ、俺にも引き際ぐらい解ってるつもりだ。

「なに? 風呂入ったら、なんでも好きにしていいって?」
「もとよりそのつもりだが?」

 男なんで、即物的な生き物なんで、そんなこと言われちゃ、俺の機嫌、一気に治った。


「へいへい、勝手にしろ」
 好きにしろって。もうお前はお前の自由に生きりゃいいじゃねえか。俺はいい子でビールでも飲んで待ってますよ。少しでも良心があるなら、一刻も早く出てきて欲しいもんですがね。
 さっき、ビールと一緒にヅラを苛めてやろうって冷蔵庫に一緒に冷えてたオモチャ買ったけど、使うのはまた今度になりそ……。

 せっかくなら俺の素敵なモノがあんだし、自分で楽しみたいし……。


「なんだ? 一緒に入らんのか?」

 一瞬、俺の想像以上の展開に、ビールを吹きかけた。

「あー、はいはい」

「銀時、見てみろ! 風呂釜がでかいぞ! 湯を張るぞ!」

 楽しそうに弾む声に、どうにも頬がだらしなく緩んで下がってくる。


 今日は、風呂でやんのも悪くないかな。



 2ラウンドめからはベッドに移って、3ラウンドめまで終わって、もっかい風呂入って、ヅラがようやく洗面台で髪を乾かし終えて出てきた。名残惜しいけど、そろそろ帰らなきゃなんねえし、延長してる金も余裕ねえ。

「そういや、何でそんなに風呂だったんだ?」
 着替えを終えたヅラがベッドに座った俺の横に腰を下ろした。
 いつも別に風呂に入る入らないってのは気にしたことがなかった。先に入る時もあったし、流れでそのままやっちまう時もあった。が、なんで今回に限ってそんなに風呂に入りたかったのか、よく解んねえ。

「俺が汗臭いだろ?」
 いや、ほとんど無臭。強いて言うなら、今は備え付けのシャンプーの匂い。

「別に、気になんねえけど? なんで今さら?」
 昔考えりゃ、多少の汗の匂いぐらい、なんも気になんねえけど。
 まさか、俺が汗臭かったから、とか、ねえよな? 風呂に入らないでくわえさせた俺のが臭かったとか、暗に言ってる? 俺汗臭くて、だから風呂に行こうって誘ってたってわけ? 自分の匂いなんかわかんねえけど、もしかして、俺、なんか臭かった? 加齢臭とかしてねえよな? まだそんな年じゃねえし。

「おい、ヅラ?」
「……」
 ヅラは、口を尖らせて横を向いた。何その態度。

「ヅラ?」


「………高杉に、昔から俺の臭いが変わらないと言われた」

 ヅラは憮然とした表情で、すげえ不満そうにそう言った。

「いや、高杉の嗅覚、犬レベルだから。あんな野生の鼻で関知できる匂い、俺わかんねえから」
 昔から鼻の利くやつだった。耳も良かったし。昔、花街に行って帰ってきたら、バレた。浮かれた顔でもしてんのかと思ったら、化粧臭いって言われたから、ヅラに俺の匂いを聞いてみたら、不思議そうな顔をされた……から、たぶん俺とヅラの鼻の方が正常な人間なんだと思う。


「そうか? なら、いいが……」

 俺の胸に頬を擦り寄せてくるヅラの髪に顔を埋める。

 匂い……ヅラの匂いって、どんな匂いなんだろう。あんま、解んねえや。 









「……てか、俺に黙って高杉に会ってんじゃねえッ!」