UNOやってんじゃねえ!





「貴様っ! 何故そういつもいつも好き勝手な行動をして」
「こっちの使える手札使わねえでどうすんだって。戦は全力でぶつかるもんだろうが」
「そういう問題ではない! 貴様の勝手な行動はこっちの行動が乱れる」
「へいへいスンマセンね」
「お前は、なんでそういい加減に……。貴様が一人で強くても、一人でやっているわけではないんだ。周りも見ろ! こちらの負けにも繋がるんだ、肝に銘じて行動しろ!」

 ああ、まただ。通りがかったら、近くの部屋から怒鳴り声が聞こえてきて、気分が滅入った。
 勝手にやらしときゃいい。どうせ、いつもの事だ。

 俺と銀時が衝突するのはいつもだが、最近じゃヅラと銀時とも頻繁にぶつかるようになった。俺はヅラが作戦を立てる場合、それを遂行しながらも好き勝手やらしてもらってるが、銀時はそれすらも無視するから、ヅラが怒るのは理解できる。

 戦況が切迫しているのは、戦いに身を投じていれば解る。俺だってヅラの気持ちは分からないでもない。銀時の勝手な行動でこっちの動きが大幅に変わることだってある。
 きっと今回は綿密に立てたヅラの戦略が銀時の部隊が大幅に遅れたせいで、乱れた。前から突っ込んでた俺達は、そのせいで作戦の変更を余儀なくされた。一応、勝利を収めたが、危なかった。
 ヅラが怒ってる理由もよく解る。
 ただ、俺は銀時があの時なんで遅れたのか、知らねえ。銀時は話そうともしねえし、わざわざ訊きたいとも思えない。何らかの理由があっただなんて、ヅラにだって解ってるだろうが……わかっているからこそ、この状況と銀時の勝手な行動に苛立ちが抑えらんないんだろう。
 多分ヅラが怒ってんのは一番自分の力不足だと思う。
 俺もそうだ。
 きっと、銀時もそうだ。
(……ほっとくか)
 ここんところ、いつもの事だ。しばらくやらしときゃお互い冷静になるだろう。面倒ごとに首を突っ込む気にもなれなくて、

 部屋の前を通り過ぎようとした時……ダン、と、激しい、音がした。

(いや、まずいか?)

「こっちの使える手札使わねえで、負けるとか解ってても、って? 勝ち望んで何が悪いんだ」
「……貴様、何を!」
「てめえだって、こっちと同じ状況だったらどうすんだよ!」
「痛っ……やっめ、銀時!」

 仕方ねえって、麩を開けたら……ヅラの長い髪が畳に広がってた。


 俺は、自分の目を疑いそうになった。

(何、してやがる……!)

「おい! 銀時何してんだ!」

 銀時が馬乗りになって、ヅラのヅラの服はほとんどひん剥かれていて見た目だけじゃ貧弱そうなヅラの白い身体が……ヅラが銀時の手首を掴んで抵抗しちゃいるが……

(何……やってんだ、てめえら!)

「銀時! ヅラを離せ、てめえ何やってんだ!」
「るっせえ!」
 俺でさえ、ヅラの細い身体なんて簡単に押さえ込めそうだと思うことはあったが、実際に行動に移すはずはなかった。見た目だけなら女みたいな線の細い面立ちをしちゃいるが、こいつが女であるはずなんてないし、ヅラがそう扱われてヅラに半殺しの目に遭ってる奴らを俺でさえ多く目にしてきた。

「てめえ、いい加減にしやがれ!」
 ほとんど走り寄って、俺はその勢いのまま銀時に蹴りを食らわせた。そのまま銀時は畳に転がった。

「……ってえな! 高杉、いきなり何しやがる」
「おい、ヅラ、無事か?」
 慌ててヅラを抱き起こすと、ヅラは服を正す余裕もなく俺にしがみついてきた。俺の方を掴む力が、骨が軋みそうなくらいで、その手が震えていたのは解った。
「……ヅラ」
 こんな外見してこんな場所にいるんだ。ヅラが男だって理解してたとしてもトチ狂った輩がヅラに手を出しかけてるのは一度や二度じゃねえ。俺や銀時が睨みを効かせたり、ヅラが直々に制裁を加えたりはしてたが……。だからその鬱陶しい髪切れって言ってんのに、バスケもできねえ。
 他のやつら程度ならほっといたってヅラに敵う奴なんざ居ねえだろうが、相手が銀時ならヅラも分が悪い。銀時とヅラで力の程度はほとんど変わらねえだろうが、何しろ体格差もある。

「てめえが、何やってんのか解ってんのかよ銀時!」

 俺はヅラの震えてる身体に落ち着かせるように、腕をそっと回した。
「ヅラ? んで? もう掘られたか?」
「ふざけるな」
 まだヅラの身体は震えちゃいたが。
(……良かった、無事か)

「おい、銀時、何やってんのか解ってんのかって訊いてんだ、俺は!」
「……知るか」

「てめ……」
 殴りてえって、本気で殴りたかった。が、今は腕の中にあったヅラを離せなかった。ヅラの背を摩りながら
(……血?)

 ……ヅラの懐に付いた血が、目に入った。


「ヅラ……これ」
「んじゃ、あとよろしく」

「おい、待てよ、銀時!」
 銀時が垂れてきた鼻血を手の甲で拭って立ち上がった……って、もしかして、先に手を出したのはヅラか? それともこうなった時に、殴りつけたのか、どっちかは解んねえが……俺が殴る前に既に殴ってんのかよ。良く見りゃ、銀時の唇の端も切れて血が滲んでいた。
(まあ、ヅラが素直にヤられるようなタマじゃねえか)

 知りたくもねえが、銀時の部隊の下っぱに遅れた理由を問い只してみたら、敵の斥候部隊を見つかる前に見つけたらしい。銀時の部隊は奇襲仕掛けるために裏から回ってたんだが、そこを叩いて通信乗っ取りゃって、言いだしたのが銀時なのかは解らねえが。万が一に見つかって通信使われてたりしたら、あの戦で、俺達は終わりだった。銀時も馬鹿だが無能じゃねえ。銀時が何もなく俺達を危険に晒すような真似はしない事は、たぶんヅラが一番解ってたからだろう。
 銀時はなんも言わなかった。それが余計にヅラを怒らせた、たぶんそんな所だろうが……。


「ったく、水持ってきてやろうか?」
「いや、構わん」
 俺の腕の中に素直に収まるヅラに、いつもよりは優しい声音になった気がした。しばらく俺に体重を預けた姿勢でヅラの背を撫でているうちに、ヅラの呼吸も落ち着いてきた。もう、大丈夫かとは思ったが、離せと言われるまでは離さなくてもいいような気がしたから、そのままにした。
(顔、見られたくねえだろ、どうせ)

 銀時があんな行動をした理由も解る。この長い戦だ、色々と抑えが効かなくなってきてんだろう。銀時見てりゃわかる、あいつがあんなことをしたのは、今俺がヅラを離したくない理由と同じなんだろう。


「だいたい、てめえらどうしたんだよ。最近顔会わせりゃ喧嘩して」
「……銀時に訊け」
 何が原因かは特に無いんだろう。ヅラもヅラで常にぴりぴりとしていて、銀時も調子が悪かった。

「どうせ喧嘩すんなら、なんで一緒に居たんだって」
「貴様と銀時ほどではない」
「俺はいいんだよ」
 俺と銀時が反りが合わねえのは昔からだ。今更喧嘩の一つ二つでどうこうなる仲じゃない。これ以上互いに嫌いになることもないだろう。
 銀時とヅラだって俺と同じかそれ以上に喧嘩はしちゃいるが、もともとのヅラの性格だ、寝て次の朝になりゃ喧嘩したことすらも忘れてる。それを見て銀時も毎回忘れたことにしてるのは見て解ってる。


 それでも、これは、銀時もやりすぎだった。
 こんなことをして、こんなことしたら、さすがにヅラだって……。

 そう、思って、ふと畳を見たらウノが散らばってんのが目に入った……。
(……ウノ?)

 いや、何やってんの? ってか、何やってたの、こいつら?

「何でお前ら顔合わせりゃ喧嘩すんのにウノなんかやってたんだ?」
 そもそもウノやっててなんでそこまでの喧嘩になったんだよ。
「仕方がないから高杉でもいいや」
「いいやじゃねえよ! やらねえよ!」
「ついでに坂本も呼んで来い、銀時をハブにしてやる」
「だからやらねえって言ってんだろうがっ!」

 どうせ、いつもの事なら、明日になりゃ忘れて一緒に飯でも食ってんだろうって思った。ヅラは俺の胸に顔を埋めたままで顔を上げようとはしなかったが、それでも口調はしっかりしていたから……。

「くそ……うまく行かんな」
 溜息と一緒に漏れたヅラの心が、痛かった。

 うまく行かねえ……俺だってだ。俺だって、もっと自分に力がありゃ、そう思う。同じだ。銀時も、ヅラも、俺も。坂本は何考えてんのか解んねえし、そもそも考えてんのかどうかも分かんねえが。


「……仕方ねえよ」
「お前、俺がウノ弱いからって、仕方ないとはないだろうが! 特訓あるのみだ。付き合え、高杉」
「って、ウノのことかよ! だからやんねえって言ってんだろうが!」








「坂本の部隊は負傷者の救出に当たれ。次回は要として使うので、お前の隊からはこの戦では決して死傷者を出すな。俺と銀時は、前方から強襲をかける。俺達を囮とし、本陣が手薄になった隙を突く、高杉は背後の崖の上から強襲をかけろ」
「あぁ? 崖の上って、けっこうな高さじゃねえか」
「できんのか?」
「ふざけんな、できねえわけねえだろ!」
「ならば本陣を落とし。武器庫からは奪えたら奪え。妙な武器があれば必ず持ち帰ってこい。対策が必要かもしれん。戦が終わり次第坂本に分析させる」
「わしがか?」
「やれ」
 坂本が情けない声を上げた事に対し、ヅラがキツい一瞥を投げたから、坂本は素直に黙り込んだ。
「現在、備蓄は足りているが兵糧は奪えるだけは奪え。余力があれば武器庫は爆破しろ。火薬ぐらいはその場でどうとでもなるだろう。武器庫の爆破、それが俺達の撤退の合図とする」
「てめ……余力がって。爆破しなけりゃ終わらねえってか?」
「お前ら鬼兵隊よりも俺達が先に敵軍勢を壊滅させれば駆けつけてやると言う意味だ」
「……人使い荒いぞ」
「できんのか? 鬼兵隊総督」
「……苦情はぜんぶてめえが被ってもらうからな」

 相変わらず、無茶苦茶だ。無茶苦茶な作戦を立て、皮一枚で首が繋がるような作戦で、俺達はそれでもギリギリで勝利を続けている。こんな作戦で、またどんだけでかい戦になるんだろうか。

 ヅラは俺や銀時を鬼扱いしやがるが、
(どっちが鬼だって?)


 あれから、銀時とヅラが話をしている所は見たことがない。あれから一週間ほど経つが、顔を会わせないように飯の時間もずらしてやがる。ヅラのクセに珍しく根に持ってるようだ。
 銀時もヅラを女々しく目で追っかけちゃいるが、もともと自分から話しかけたりするような奴じゃない。

 俺としちゃ、邪魔者が居ない方が安心なんだけど、こいつらが仲違いしてるのは、全体の士気に影響する。



「で? 俺は」
「銀時は、俺と共に前から突っ込む」
「作戦は?」
「無い。好きなだけ暴れろ」
「……足ひっぱんじゃねえぞ」
「ほざけ。貴様の暴走を食い止める作戦だ」
「へえ、信用ねえんだ?」
「当たり前だ。前回の失態は今回の功績で挽回できることを肝に命じろ」
「へいへい。ま、好きにやるわ」

 結局、ヅラと銀時は顔を見合わせようともしなかった。

(大丈夫なのかよ、こいつら……)








 陣は整えた。
 俺は崖の上から、これから奇襲をかける敵陣を見る。幕営が張られているものの、本陣は、奥のでかい奴だろう。武器庫、兵糧はどっちかはわかんねえが……見張りがくっついてるのが兵舎じゃねえとすりゃ……まずは本陣か。

 眼下には砂埃が立ち上る。だいぶ混線してるようだ。斥候から届いていた情報よりも敵の数は多いように思う。



 先陣に、やたらと大立ち回りしている奴等が目に入る。それほど遠い場所じゃねえから、見える。銀時とヅラだ。
 銀時に向かって走るヅラが見えた。この戦場で、黒を纏うヅラと、白夜叉のコントラストはよく目立った。

 さっきまで、目も合わせなかったくせに……。
(相変わらず、仲のいいことで)

 ヅラの動きと銀時の動きは歯車で固定されたかのように連動し、噛み合っていた。いつもの事だが……。

 銀時とヅラが居る辺りに、やたらとでかい天人が棍棒みたいな武器で、仲間を凪ぎ払ってた。
 虫けらのように人の体が宙に吹っ飛んで、地に叩きつけられていた。銀時は、アレをどうにかしようとしてんのは解るが、さすがに銀時とヅラへの攻撃は厚い。手を出すどころか近寄ることもできねえような状況だ。

 銀時を狙う敵をヅラが背後から斬り、ヅラがそのまま銀時に向かって走る。

 銀時が、ヅラに気づいた。

 ようやく、視線を合わせたのを見た。

 ヅラが走る。真っ正面にはヒトの三倍はありそうな体躯の天人だ。力押しじゃヅラは分が悪いってのに。ヅラは走り、銀時は少しだけ身体を屈めた。そのままヅラは銀時に向かって走って、そのまま、銀時の背をに乗り上げ……跳ぶ!

 刀を大きく振りかぶり、天人の眼前へ届いた。が、案の定払い除けられて、すっ飛ばされた。そりゃ、そんな直線的な攻撃、通用するはずはない。
 棍棒のような鈍くでかい武器で払い除けられて普通だったらそのまま地面に叩きつけられ骨を砕くだろう勢いも、何しろヅラだ。心配はしてない。ヅラもそのつもりで攻撃を剣を犠牲にして防ぎ、地面に叩きつけられる前に身体を捻り、両足で着地してた。

 銀時もヅラが飛んだ時にそのまま走り、銀時は腹を目掛けて突っ込んでいった。

 ヅラは不安定なバランスで着地したのを隙と見た敵が後ろから攻撃を仕掛けてきた。気づいていたのは当然のようで、相手を後ろ蹴りに喉元を当て、そのまま握っていた刀を持つ手に第二発を当て、刀を奪う。

 今ヅラを弾き飛ばした天人を、銀時が心臓に刀を突き立てて地面に倒れた。
 ここからでも土煙が巻き起こったのが見えた。きっと派手な音を立てて倒れたのだろう、それに、ヅラは一瞥すら加えなかった……。

 作戦?

 あの、一瞬で、ヅラが劣りになり注意を逸らすって?

 会話なんかしたような時間も距離もなかったが、視線だけで?



(本当に、誰が鬼だか)


 銀時は相変わらずの白夜叉をやってた、ヅラだってその動きを助長させる、十分化け物と呼んで相応しい動きをしていた。

 信用ないって、どんな冗談だ。

 あいつらは、二人で組むことにより、互いの目を共有し、互いの身体を共感してやがるんだろう。つまりあいつらが揃ってりゃ、何倍にも能力を発揮する……。


 軽く嫉妬。
 俺も、てめえらと一緒に居りゃ……って。

 そんな仮定はすぐに実践で証明してやりゃいいか。



「ったく。やってらんねえな」


 敵の数が多い。斥候からの報告が誤りだったか、報告以降に投入された兵か、それとも、白夜叉と狂乱の貴公子を畏れた敵陣営が総力戦で、本陣は裳抜けの殻か……。



「頃合いだ、出るぞ!」


 悔しいから俺も今からそこに行ってやる!









 怒鳴り声が聞こえた。

 ……またか。また、あいつらか。


「貴様、何故、そうやって。相手の事を慮る余裕はないのか!」
「てめえとは付き合ってらんねえって」

 また、喧嘩してんのかよって。この前は上手く行ったが、あんまりてめえらが仲違いしてると俺達の士気に関わるってのに……。

 さすがに前のような事になってたら、止めなけりゃって、二人が居る部屋の扉を開けた。

 ………案の定、真っ最中だった。
 前に見たときとほとんど同じ状況で、ただ、逆にヅラが銀時の上に馬乗りになって、銀時に大きく振りかぶって拳を打ち下ろそうとしてた。

「何やってんだよ!」

 さすがにそのまま銀時を殴り殺しかねない勢いだったから、慌てて止めた。ヅラに殴られる銀時を見なくないわけじゃないが、近いうちにまた戦がある。さすがにいくら銀時だって貴重な戦力だ。

「てめえら、いい加減にしろ!」

 だいたい俺と銀時が喧嘩して仲裁にヅラが入るのがセオリーだろうが、なんで俺がこいつらの喧嘩止めないといけねえんだよ。そもそも俺としちゃ、銀時とヅラが仲いい方が都合が悪いってのに……。

 ヅラの細い手首捻りあげると、ヅラは射殺さんばかりの視線を俺に向けた。てめえが睨む相手は俺じゃねえだろうが!

 それにこの前の戦は上手く行ったんだ。ヅラと銀時が派手に暴れたお陰で主力部隊はもぬけの殻で、奇襲も成功した。兵糧も確保したし、こちら側の損傷は少ない。
 それだってのに、一体何が気に入らねえんだよ。

「離せ、高杉!」
「銀時を殴るのは賛成だが、落ち着け。何があった?」

 ヅラは悔しそうに、舌打ちすると俺の手から自分の手首を奪い返した。強い力で握ったから、少し痕が残る可能性もあるが、その程度は怪我のうちにも入んねえだろう。

 ったく。ヅラもヅラだ。
 この前、てめえがこの男にどんな目に遭わされたのか、何で忘れてんだよ! 何で二人でいんだよ、てめえらは!


「で? 何があった?」
「銀時が、空気を読まん」
「ふざけんじゃねえ! 何で俺が!」

 再び銀時に掴みかかろうとしてたヅラを背後から羽交い絞めにして止める。何やってんだ、本当にこいつら……。

 さすがにこうも戦が長引いていりゃ、神経も人あたりも鋭角になってるのは俺だけじゃねえし、ここに居る誰もがそうだし、それはこいつらも同じだろう。
 仲間だった奴らが減り、友だった奴がいなくなり、昨日話した相手も、昔からいた奴も……こんな戦だ。誰もがピリピリしてんのは解る。それでも、てめえらはここの部隊の要だ。喧嘩してる場合じゃねえだろう? それを解らないヅラだとも思えないが……何が、あったんだ、こいつらに。





「だとしたら、銀時! 何故あそこでワイルドドロー4のカードなどを出した!」




 ……へ?

 何? ワイルド……って?
 意味が解らないが、とにかくこの状況は、前回の時と、状況はほとんど同じだ……。


 同じだ、

 こいつらの回りに、ウノが散らばってんのも……!




「ふざけんな! こっちの使える手札使わねえで、戦は全力でぶつかるもんだろうが」
「貴様が好き勝手ばかりして、貴様の勝手な行動はこっちの行動が乱れる」
「てめえ、なんで俺がてめえを気にしてなきゃなんねえんだ!」


 そんで、前と、同じ台詞……てめえら、まさか……もしかして、だが、前の時も? だって、


 まさか、と、思いたい。まさかであってくれ。



「何故解っていて、貴様はおとなしく俺に負けないのだ」
「ふざけんな! 俺が十回連続で勝ったらヤらせるって、約束したのはてめえだろうが!」

 は? ヤらせる? 何をだ?

「だからだ! ムキになって勝ちを奪うことはないだろうが! 10回もやれば1度ぐらいは俺に勝たせろ」
「てめ、だいたいいつもいつも9回目でカード投げてきやがって! 前なんか、俺が上がる直前で……約束は約束だろうが!」
「嫌なもんは嫌なんだから仕方ないだろうが!」
「嫌だってったって、てめ、いつもは自分から腰振ってくるくせに」
 は? ちょ、お前ら、そういう関係だった? いつからだ!? 俺、知らないんだけど! てか、銀時いつの間に抜け駆けしやがった!
「それとこれとは話が違う!」
 ヅラも否定しないってことは……マジでか!?
「十回も立て続けに勝とうという優しくない根性が気に食わん」
「なんでわざわざ負けなきゃなんねえんだよ! ウノやんねえぞ」
「ウノはやろう! ウノが強いと奥方からの人気を集められるのだろう?」
「おう、奥さん達にモッテモテ」
「ならば特訓あるのみだ。もう一度勝負するぞ、銀時」
「だから、十回連続で俺が勝てたらヤらせろって、条件ならな」
「それは嫌だ。九回勝ったら一度貴様が負けろ!」
「ふざけんな! これでもかなり譲歩してやってんだぞ」
「貴様……人の足元見おって……」



 何、やってたの、こいつら……ってか、ヅラ、何丸め込まれてんの?




「いいか、銀時、これは遊びじゃないんだ!」

 ヅラが立ち上がって、銀時を今にも踏みかねない勢いで怒鳴りつけた。


 ……ウノ、やってたの? こいつら?




「これは遊びじゃない、真剣勝負なんだぞ!」







「……………遊びだろうがっ!」

 てめえら!
 ウノやってんじゃねえ!!







「あ、高杉もやる?」








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