この話には若干の性的な描写が含まれます。苦手な方、18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。

























鑑賞会    



 









「なあ、ヅラ。一緒に鑑賞会しませんかー?」

 ある筋から入手したAVをヅラの目の前にちらつかせてみると、ヅラは、俺の手の中にあるパッケージを見て硬直していた。

 『団地妻 昼下がりの情事』ってベタベタ行き過ぎて見てて抜くのに使えそうな感じじゃなくて、どっちかっていったら笑えそうな内容だけども、まあ、女優は、美女だったから、そこそこだろうとは思うが、これはオカズじゃなくて、餌に使える。
 ヅラを、釣る餌だ。



 ヅラの趣味は把握してる。こんな訳分かんねえ電波であろうと、長年の付き合いってのは恐ろしいもんで、ちょっと年上の既婚者が好きだって絶妙にピンポイントな長馴染みの知りたくもない性癖は理解している。

「ぎ……銀時、これをどこで……」

 中学生並の赤面で、ごくりと生唾飲みやがったヅラが、人妻好きなのは昔からだ。ガキの頃から。ヅラの見た目に騙されて、数多の老若男女がヅラに挑んでヅラが砕け散らせてんのは知ってるが、そのヅラが何回か良家の奥様とお付きあいしてんのは知ってる。

「何? 興味ある?」

「……いや、どうだろう。見てみない事にはな。面白いと言うならば借りてやらんでもないが」

「いや、さ。これはちょっと借りたんだけど、明日返さなけりゃなんねえから、悪いけど貸せなねえんだよ」
「そうか、残念だ」

 とか言いながら、もの欲しげにDVDを見つめるのはやめてもらいたいんだが、何なんだか、こいつは。結局見たいんだろうが。

「だからさ、見たいなら一緒に見る?」

「………………〜っ!」

 悩んでる悩んでる。
 どうやら、すごくそそられてるらしい。パッケージを穴を開ける勢いで見たまま偉そうに腕を組んだ姿勢のくせに、顔赤いし、硬直している。
 あと、一押しか?

「今日は、神楽もお妙んとこ泊まるって言ってたから、酒でも飲みながら、ど?」

「だが……」

 最近、いい後援者が着いたんだかで、バイトもしてねえようだし、どうせ暇だろ?

「こんなん、どうせ、男付き合いのたしなみじゃねえか」

「……だが」

 だが、何だよ!
 いいから来い!

「どうなの? 見ねえの? 見たくねえの?」

「ただ、一緒に見るだけなら……」


 ……ぅしゃっ!

 内心のガッツポーズは、たぶんバッチリ見られた。一瞬ヅラの顔がひきつったのを見た。

「一緒に見るだけだぞ?」
「ああ、二言はねえよ」

 ってのは、嘘だけどな、
 俺が、ただ見るだけのはずねえだろ?



 以前、俺が一人でエロビ観賞してる夜中に、突如襲来した堅物と、呑気にエロビ見るわけにゃ行かないと思って、消してたんだけど、なかなか帰る雰囲気無かったから、ちょっとした悪戯心と、こいつがどんな反応すんのか見てみたいって好奇心から、一緒に見た事がある。

 白衣の天使モノのDVDはどうやらお気に召さなかったらしく、初めはぶつぶつ文句垂れてたくせに、一旦見始めると、俺より集中してるし、赤くなって、足を抱えてもじもじしてるし……。

 エロビなんかよりも、実際、ヅラがそんなんなってる方が、キた。

 堅物で、ムッツリなこいつが、エロビ見てて興奮してる方がよっぽどオカズになった。そこらの女よりも見た目美女だし、興味があるくせにいつも済ましてるこいつが……って思ったら、どんなになってるか、興味持った。

 ヅラも、男なんだし、ガキの頃からの付き合いで、夏場は川で全裸で遊んだこともあるし、一緒に風呂に入った事もあるし、背中の怪我の手当てしてやった事もある。ヅラの性別がムッツリなオスだって当然知ってる。


 から、本当に勃ってんのか……気になっちまって。

『俺がやってやるよ』

 って、うっかり勇気振り絞って言ってみちまったのは、今思えば、なかなか英断だったと思う。
 男のなんか見て、萎えるって常識的な現実は起こらず……驚いて抵抗するヅラを力業で押さえつけて、手で、やってみた。
 初めは本気で殴られそうだったけど、急所握ってんのは、俺だった。
 俺もおんなじもんぶら下がってるから、どこ触れば気持ちいいかとかたぶん女よりもよっぽど心得てるから、想像通り、ちょっと追いたててやりゃ、ヅラのくせに切ない声だしながら、情けない可愛い声なんか出しちゃって、俺の手の中で呆気なくイッた。


 見てたお気に入りの女優が出てるAVなんかよりも、ヅラのが、よっぽどエロかった……のは、新たな発見だった。


 そっから俺の欲求解消方法は、エロビ観賞するヅラの観賞。
















「何なんだ、一体お前は!?」
「何なんだと申されましても」

 いや、まあ。なんか……うん。
 俺も、ここまでやるとは自分でも思わなかったけど、なんかノリと勢いで……。
 画面の中でうっかりアナルセックスとか始めちゃったから……なんとなく?
 真似してヅラにもやってみたとか……したりしたら、予想以上に気持ちよくて、結構自分でも焦ってるんだけど……ついうっかり一線超えちまいましたが……どうなるの? って焦ったけど、いや、なんか、うん……まあ。

 ソファの上で服を整えながら、本格的に怒ってるヅラはいつものヅラだった。
 さっきまであんなに顔を赤くして口からだらしなくヨダレ垂らしてたってのに、まあ喉もの過ぎたらしく……やべえって思いながら、も止まんなくてついうっかりやっちまいましたが……ここに居るのはいつものヅラだった。

 まあ、予想通り。


「何なんだ、お前は一体。こういう事は嫌いだったはずではないのか?」
「は? そうなの?」
 嫌いっていうか、むしろ好きな方だけど……。

「昔は俺を慕う男どもを、俺ごと鬼のような形相で睨みつけていたではないか!」

 え? 何それ?
 なんで今昔の話持ち出しちゃうわけ?

「人の恋路を邪魔しおって」
「へ? なにそれ? お前誰か好きな人いたの?」
「馬鹿を言うな! ただ、男からだろうと真摯な好意は嬉しいものだ」

「………そりゃ、余計なことして悪かったな」

「まあ、俺に触ろうとした場合は、お前に邪魔されずとも俺が直々に制裁してやったが」
「……さいですか」

「だから、お前は男同士で性行為をする事が許せないような男だと思っていたんだがな」

 あー……まあ。
 いや、普通に考えたら気持ち悪いけどさ。

 そうじゃなくて。
 だって、お前のこと汚そうとする奴、許せなかったし。
 だから、ヅラのこと好きな奴ら、みんな叩き潰してた。俺と高杉と、坂本はよくわかんねえけど、俺達がそばにいて、ヅラに手を出されないように結構気を張って睨み効かせてたた……頃もある。
 まあ、だからこそ、あの頃、男しか居なかったあの場所で、ヅラの純潔は守られていたわけだけど。
 俺たちの苦労も少しはわかってもらえていたようで。

 ヅラのこと汚すやつ、俺は絶対許せないって思ってた。今だって許せえねえけど……

 でも、お前は汚れねえから。

 俺が何したって、俺がどうなったって、どうせお前は汚れないだろ?
 触っても話しても、離れても俺達がどこにいても、隣に居たって……

 俺がどうしようと、お前はお前のままだって、ようやく思い知った。

 ここまでかかんのに、だいぶ長い道のりだったわけだけど……。


「いいんだよ、俺は」

 それを解ってる俺だけはいいの。


「何だ、それは」

「なんか文句あっか?」

 文句なんて、どうせあるだろうから、聞く耳くらいは持ってやろうっていう優しさぐらいの持ち合わせはある。

 いや、まあ普通にすげえ怒られるような気もするけど……でも俺が何したってヅラはヅラのままだった。だから、怒られる事ぐらいは、覚悟してやる。





「いや、それが不思議と悪くない気分だ」











20130202
2,800

ジャンプ読んで頭パーンとして、今週はNTRの事しか頭にないのですが、NTRは流石にレベルが高杉たし、エロの神様が降臨してくれなくてエロシーンはかけませんでしたが、とにかく今週のジャンプがねっ! って、興奮のままに書き散らしたものです。