まちぼうけ










「あ? ちょっと待ってろって。そろそろジャンプ読み終わるから! てめえがごちゃごちゃ横で言うからその分時間がかかんだよ!」

 って言ったのが多分3回目。

 ようやく大人しく向かいのソファに座ってくれた。構ってくれ攻撃で引っ張られて着崩れた服を正して、座り直して、てめえよか今はこっちのが大事なんだって、暗に匂わせる。

 俺の魅惑のジャンプタイム邪魔しないで下さいませんかァ?

 つっても、まあこいつが来た時点でもうジャンプに集中できるわきゃないんだけど。

 まあ、なんつうか……昨日の仕返しってゆーか。

 昨日、来るってたのに、待てど暮らせど来やがらねえし。んで翌日に何事もなかったかのように来られたってさ……。

 まあそちらも色々忙しいんでしょうけどね!

 こっちは、意外にもお前来るってから、楽しみに待ってたんですけどね。柄にも無くそわそわしちゃったりしてましたが。いや、仕方ねえよ。別に会いに来てくれだなんざ頼んでねえよ。別に待ってませんでしたけどね。
 とか、ムカツクから言わない。

 でも少しぐらい仕返ししたってバチは当たんねえだろ。


 そんで、俺はジャンプ読んでる。




 てめえが来るって言ってた時間から俺は24時間は待ってると思うぜ。てめえは30分も待てねえの?

 いや、ガキ臭いとは思うけど……でも、本気でムカついたから。連絡ぐらいよこせよ!


 んで、睨み付けようとしたら、目があった。



 うわっ、滅茶苦茶不機嫌そうな顔………いい気味だ。

 んで、そのまま睨まれたから睨み返した。そんなガン見されたら、集中できねえっつの! いや、もともと内容なんかほとんど頭に入ってねえけど。


「終ったか?」
「三分置きに訊くんじゃねえ! まだだ! まだ! 静かにしてろ」

 腕組みして、じっと俺の事凝視しやがって。
 ……いい気味だ。少しぐらいは待たされる気分味わえよ。


 んで、しばらく勝手に茶を入れて啜ったり、部屋の中歩き回ったりしてた。んで、ずっと俺の事を観察、むしろ監視。





 ………ずっとそうやって俺を見てりゃいいよ。



 そんな事、想いながら……。



 見られてる気配感じながら……。



 しばらく静かで………。



 そろそろ、可哀想かなって、思って。

 まあ俺が二十四時間待たされたのに対して、二十分程度だけど。


 こっちも、そこにいんのに触れないの、そろそろ限界だし。俺だって、会いたかったし。


 ジャンプ閉じた。

 んで、顔上げたら………。






「………マジかよ」


 寝てやがった。
 なに人んち来て昼寝してんの? お客様図々しいですって!


 んで、一発蹴り入れたろうかって思って近づいて………。



 んでも、滅多にお目にかかれない寝顔だし。
 最近じゃ朝まで一緒って事ほとんどねえし、俺も別に朝が苦手な方じゃねえけど、こいつ朝は決まった時間にいきなり目覚ますし。ヅラも寝つき悪くないけど俺もいいほうだから、あんまり寝顔観察ってしたことねえわ。

 だから、寝顔って……わりかし、レア。


 こいつの寝顔って無防備だと思う。だから、けっこう好き。
 いつもピンって神経張り詰めさせて、気張ってるから……実際は穴だらけだけど。でも、そんな顔ばっか見てるから。そんな顔も好きだけど、間抜けにも口半開きで、だらしねえ寝顔見せてくれんのも、けっこう好き。

 だって、俺だからだろ?
 俺が横に居るから気が抜けてんだろ?


 しばらく見てたけど。



 少し、汗の臭いがした。
 コイツにしちゃ珍しい。

 何だかんだ言って意外と潔癖で、毎日朝熱めの湯をかぶってるのに。

 もしかして、一日、寝てねえのかな。

 暇そうにしてても、そんな風に見えて、ちゃんとやることやってて忙しくしてる事は知ってるから。
 過激派から、穏健派に鞍替えして、表立っての行動は目に付かなくなったけど、かなり裏では手広くやってるみたいだから、こいつ。
 一応俺も仕事柄、裏の関係には詳しいから、色々と情報入ってくるけど……昨日結局なんかあったみたいだし。



 寝てねえのかな……疲れてんのかな。


 とか、起こすのもなんだか可哀想になってきたから毛布掛けてやったんだけど。










 でもさ、俺丸一日待たされて、しかも起きるまでまた待つわけ?
















20110725
すごく昔に土銀友達に献上したものを銀桂に修正してアップ